287、南瓜の復讐者?
「おらよ。待たせたな。パンプキン・ヴェンジェラーだ。超うめえぞ?」
南瓜の復讐者? 物騒なネーミングだなぁ。でも、きれいなオレンジ皮のカボチャが一口サイズに切り揃えられている。どれどれ……
「素敵な味わいだわ。パンプキンをバターと蜂蜜で炒めたのね。おまけに振りかけられた粉チーズがまた憎いわね。適度な塩気がパンプキンの甘さを際立ててるわ。これは後を引くじゃない。あなたいい腕してるわね。」
アレクが何だかすごい。確かにこのカボチャ美味しいよな。デザートのようでもありツマミのようでもある。もう結構腹いっぱいなんだけど、それでも止まらない。ついついもう一個もう一個って食べてしまうじゃないか。旨いなぁ。
「ピュイピュイ」
コーちゃんもご満悦だ。美味しいよね。あら、もうなくなってしまった……
そんじゃ、そろそろ帰るとしようかね。あっ! しまった……
「お前らって宿はどうするんだ?」
宿を取るのを忘れてた。おまけにどれがいい宿なのか分からない。だからこいつらを参考にしよう。
「俺らあは馴染みの宿があるからなあ。魔王さん達の宿もちゃんと用意してあんぜえ? さすがに奢りじゃねえけどよ?」
「それは助かる。ありがとよ。」
「なぁに。本当なら朝まで飲みてえところだがよお。魔王さん達とこうやって楽しく騒げただけでいい土産話になったってなもんよお。ありがとなあ?」
「ああ。こちらも楽しかった。ありがとな。」
アジャーニ領はサンセバスティアーノの六等星シンファリオンだったな。しばらく忘れないと思う。本当に楽しかったしね。
「いいってことよお! 冒険者はみんな仲間なんだろお?」
「ぎゃはははあ! 甘っちょろいのがうつっちまったかあ?」
「魔王さんは全然甘くねえじゃねえか! 敵味方の判定がしっかりしてんだけだろお?」
敵味方の判定? そこまで深く考えたことはないが……
「お前らのことは忘れないだろうよ。またな。」
「いい夜だったわ。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
「うぉーい待て待て! 宿の場所知らねえだろおが! 俺が案内してやるってえ!」
そりゃそうだ。
「じゃーなあ魔王さん! 俺らはこっちだからよお!」
「またなあ! お互い生きて再会してえもんだぜえ!」
「おう。またいつかな。」
面白い奴らだったなぁ。わざわざ一人残って案内までしてくれるとは。
「おうこっちだあ! 魔王さんが泊まる宿だからよお。ベルグラックで一番いい宿に話い通しといたぜえ」
「そっか。わざわざありがとな。」
さすがにフランティア一の宿である辺境の一番亭ほどの高級感も大きさもないが、それなりの清潔感はある。意外と清潔感のある宿って少ないんだよなぁ。大抵ノミだらけだったりしてさ。薄汚れてるだけならマシな方だよな。
それに比べるとベルグラック一の宿というのも間違いないんだろうね。こいつらいい奴だわぁ。
「そんじゃあな! もしアジャーニ領に来ることがあったら絶対連絡してくれよなあ!」
「ああ。またな。お前らも元気でな。」
「楽しかったわ。またね。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
アレクどころかコーちゃんやカムイまでこいつらが気に入ったらしい。妙な縁ができるもんだねぇ。でもアジャーニ領だしなぁ。近いのは近いんだけど、たぶん行かない気がするね。
「いらっしゃいませ魔王様。ご予約は承ってございます」
すっかり魔王の名前が定着しちゃったよなぁ。悪いことじゃないんだけど変な気分だわ。
「世話になるよ。ところでこの宿には風呂はあるかい?」
「ございます。ですが今の時間は貸し切りとなっておりますので、だいたい二時間後でしたらお使いいただけます」
あらま……浴室が一つしかないのかよ。ならば無理は言うまい。
「それならいいさ。部屋はどこだい?」
「ご案内いたします」
ほうほう。それなりに広いじゃないの。悪くないね。うおっと、客室係がいなくなった途端にアレクが襲いかかってきた。まだ体を洗ってもないってのに、悪い子だぜ。だが、可愛い。どこまでも愛おしいね。さあ来いアレク! 私だって負けないんだからな!
「はあっ……はぁ……んんっ……カースぅ……」
「何だい?」
「すっごくよかった……」
はは。それは嬉しいね。今日はいつもと少しばかり趣向を変えてみたからね。やはり激しくするだけが能じゃないよね。緩急って大事だよね。
ふふ、今夜もぐっすり眠れそうだ。




