284、懲りない三人組
三人合わせて金貨四十二枚か。七等星にしては持ってる方だな。明日からの暮らしが大変だろうが借金生活よりましだろ。
「おい、もう行っていいぞ。」
「おら! 魔王さんがこう言ってんだろおが! さっさと消えろ!」
納得のいかない顔をして立ち上がる三人。
「がおっ!」
「ぎえっ!」
「ぐふぅ!」
また殴られてる。
「どこまでボケてやがんだおらあ! 魔王さんによおく礼を言うのが先だろおが!」
真っ当だ。真っ当すぎる。
「あ、ありがとござ、ました」
「ありが、とご、した」
「……したっ……」
それに比べてこいつらときたら。有り金だけで勘弁してやったのは甘かったかな。
「お前ら、もし文句があるなら魔法なしの素手で相手してやってもいいぞ? 場合によっちゃあ金だって返してやるし。」
「ほっ! ほんとか!?」
「素手だあ!?」
「魔法なし……そんでも魔王をぶっちめたとなりゃあ……よっしゃあやってやんぞお!」
ぷぷっ。いきなり元気になりやがった。
「お、おい魔王さんマジかよ?」
「おう。素手の魔法なしで模擬戦といこうか。ほれ、訓練場行こうぜ?」
「へへっ……もう遅えからなあ……」
「俺だ! 俺からやるからなあ!」
「くっくっく……俺らがあの魔王を……ひひっ」
素手なら勝てるとか思ってんだろ? 残念だったな。素手とは言ったが素足とは言ってない。そして私の装備は反則だからな。
大抵のギルドに併設されている訓練場に到着。
「そんじゃあ誰からだ?」
「俺からだって言っただろおが!」
おっと、危ない危ない。いきなり来るんじゃねぇよ。大振りのパンチ、しかもいきなり顔狙いだから避けやすかったけど。
「ちっとはやるじゃね、っがあっ!」
バカだなこいつ。せっかく先制したくせに。余裕かまして手を止めるんじゃねぇよ。だからぶん殴ってやった。
「ちっ、とは、やるっ、じゃねっ……か……」
バカだろこいつ。喋る暇があったら反撃なり防御なりしろよ。殴り放題じゃん。
おっと、倒れたから頭を蹴飛ばしておく。これでしばらく起きないだろ。
「ほら次ぃ。」
「舐めんじゃねえぞおらあああーー!」
だから大振りすんなって。そんないかにも右手で殴ります、みたいな動きされて避けないわけないだろ。避けつつ足払い。ほら転けた。終わりだ。頭をサッカーボールのように蹴り飛ば、ちっ、寸前で防御しやがったか。でもその腕折れたろ? 私の靴はドラゴンブーツだからな。
「ぐっ……うう……」
痛そうだね。でも待たないぜ? さっさと起き上がらないお前が悪いんだからな。後頭部をシュート。いくらドラゴンブーツでも、さすがに頭だけが飛んでいくなんてことはない。
「て、てめえ……倒れた相手に何てことしやがる……それが魔王のやり方かあ!」
「知らねーよ。嫌なら倒れるな。で、お前はどうするんだ? 今なら逃げてもいいぞ?」
「だ、誰が逃げるかあ! リスコリアスバンディッツ舐めんじゃねえぞ!」
小さな子栗鼠の盗賊達? 顔に似合わず可愛らしいパーティー名じゃないの。
「なら来い。一対一で素手喧嘩といこうか。」
まあ最初から素手の一対一だけどさ。
「古臭え言葉あ使ってんじゃねえぞ! おらあ!」
ぶっ……この野郎……待ってる間に砂を掴んでやがったな?
「おらおらおっらあ! 魔王だあ? 金貸しだあ? ステゴロあ何でもアリだろおが! 油断してんじゃねえぞ!」
してねぇよ。
「痛えっ!? この野郎おお……よくもやりやがったなあ!」
何もしてないよ。お前が勝手に私の籠手を殴っただけだ。砂は少ししか目に入ってないがそれでも防御を固めておいた。顔をしっかりと腕で覆ってな。もう少しだけ我慢。
「ほれ、どうした? もっと殴ってこいよ。」
「舐めんじゃねえぞガキがあ!」
舐める以前の問題だよな。借金地獄を勘弁してやったってのに。感謝の気持ちが少しもないとはね。有り金だけで勘弁してやったのは間違いだったか。よーし、いいこと思いついたぞ。
「くそが! 閉じこもってんじゃねえよ! 殴ってこいやあ!」
「こうか?」
右手で殴ると見せかけて右のローキック。軌道は足払いに近いかな。こいつフェイントに弱いな。
ちっ、今度は転けなかったか。だが痛かったろ?
「くそがあ! なんだそのブーツはよお!」
「いいブーツだろ。もっとよく見ろよ。」
股間を狙って前蹴り。こんなバレバレなの当たるわけないが……
「ぐっ、てめえ!」
下ばかり見てるから普通に殴った。胴体には革鎧を装備してるから顔を二発ほど。
「そんぐらいで勝ったと思うんじゃねえ!」
思ってねーよ。いや、終わりか。
「ごぼぅぶっ……がっ……」
キレたのか両手を伸ばして掴みかかろうとしてきやがったから普通にミドルキック。胴体がガラ空きなんだもん。革鎧を着てるからって油断したな。肋骨折れたんじゃないか?
「まだやるか?」
「がっ、まっ、ふざけ……」
はい、どーん。倒れて無防備な顔を蹴る。私は決着がつくまで油断しないからね。
「ま、魔王さんは素手でも強えんかよ……」
「あいつらが弱かっただけだろ。もうちょっと待っといてくれよ。」
クタナツでは無尽流、領都では破極流の道場で素手の稽古だってしたもんなぁ。剣や槍に比べると費やした時間はだいぶ少ないが。
さて、では仕上げといこうか。
「アレク、こいつら起こしてくれる?」
「ええ、いいわよ。」
『覚醒』
ふふふ、きっちり型に嵌めてやるよ。




