283、ギルドあるある
「たかだか金貨の十枚や二十枚で盗賊探しなんて面倒なことしてられるかよ。」
これは本当にそう思う。目の前に現れたなら捕まえるのもやぶさかではないが、わざわざ探しに行くなんて冗談じゃないぞ? 面倒くさい。
「げははははあ! たかだか金貨の十や二十だってよお! 金持ちはいいねぇ! ええ? お坊ちゃんよお?」
「はいはいつよいつよい! かっこいいねえ!」
「そんだけ強くて金持ってんなら俺らにも回して欲しいよなあ!?」
おっ、これはもしや……久々の金貸しチャンス?
「いらっしゃいませお客様。いかほどご入り用でしょうか?」
「げははははあ! お客様だってよお! そんなにビビらんでもぶち殺したりしねえってんだよなあ?」
「そーそー! 大口叩いてごめんなさいって言いながら金出せば許してやるってんなもんよお!」
「とりあえず有り金全部出せやあ。たんまり持ってんだろお?」
有り金かぁ。白金貨で八十枚ぐらいか。銀貨は何十枚かあるけど銅貨と金貨は数枚しかないんだよね。
「トイチの複利でよければどっさりお貸ししますよ? 例えばほら。」
白金貨を三枚。こいつらは三人組だからね。
「あんだこりゃあ?」
「金貨にしちゃあ色が白えなあ?」
「おいガキい? こんなもんでゴマかそおってんかあ?」
あらまあ。白金貨見たことないのかよ。まあ、それが普通だけどさ。
「要らないんですか? それならしまっとくだけですよ? まあトイチの複利ですしね。やめておいた方がいいですよ? 危ないですもんね。」
「なんだあこらあ! 誰がビビってんだよ! そんなもんの何が危ねえってんだあ!」
「トイチだあ? 複利だあ? あんまいっぱしの金貸しヅラしてんじゃねえぞ?」
「ぎゃっははははあ! 俺らから取り立てられるもんならやってみろってんだあ!」
うーん、こいつら着々と墓穴を掘っていくなぁ……
「では約束です。これをトイチの複利で貸します。十日以内に返済すれば一割増しで済みます。また、月に最低金貨一枚でも返済している間は催促には来ません。いいですか?」
さて、この機会を生かすも殺すもこいつら次第だが……
「げはははははあ! もったいぶったこと言ってんじゃねえよ! さっさと寄越しやがっれれれれっれらあえええ……!?」
「何言ってんだお前っええっえええおおええっ……がはっ……」
「ぎゃはっははあ! 最初から素直にそうやって金出せばいいっきいいあっんんがっあ……い、今のって……!?」
いやー久しぶりに金を貸し付けちゃったな。こいつら払えるのかな? 利子だけでも十日で金貨百枚だぞ? 地獄すぎるだろ。
でも元手はたっぷり手に入ったんだし、どんな商売だってできるぜ? 例えばヒイズルで畳を大量に仕入れてくるとかね。あの良さが知れたらローランドでもかなり売れると見たね。
「おーう待たせたな魔王さん。ん? こいつらどうしたんだ?」
「なぁに、金に困ってるそうでな。貸してやったんだよ。白金貨を一人一枚ほどな。」
「はあっ!? は、は、白金貨だあ!? そんなん何回かしか見たことねえぞ!? うおっ、マジじゃねえか! お前らどんだけ金に困ってんだよ!」
おおーー。さすが真っ当な冒険者は違うな。何回かは見たことあるのね。
「ま、魔王……?」
「え、これ、は、白金貨って……」
「あ、あんたは確かサンセバの六等星……シンファリオン……?」
「おうよ。お前ら確かベルグラックの七等星だったか。それにしても白金貨が必要なほど金に困ってるとはよお……何やらかしたんだあ?」
あ、こいつ本気にしてる……
「冗談だ。本当はこいつらに絡まれてタカリをかけられたんだよ。だから大人しく白金貨を一枚ずつ貸してやっただけだぞ。ただし利息はトイチの複利だけどな。」
「はああああああーー!? そんじゃあ何か? こいつらは十日ごとに最低でも金貨百枚払わねえと元金がちっとも減らねえってことかあ!?」
おっ、元金だなんて。難しい言葉をよく知ってるじゃないの。計算も早いしね。
「もちろん。俺が貸す金はいつもトイチの複利だからな。」
ダミアンには倍返しで貸したけど。
「お、おい! お前ら! この人が誰か知らねえで絡んだんかよお! 分かってんのかあ!? この人マジで魔王さんなんだぞお!? どうすんだよ! 返せねえとぶち殺されんだぞお!?」
それにしてもこいつ……面倒見がいいな。同じ領内とはいえ違うギルドの者だろうにさ。
「ま、魔王……さん……?」
「は、白金貨……?」
「たっ、助けてくれええええええ!」
おっ、理解が早いのが一人いる。
「今手元にある白金貨を返せば残り元金は金貨百枚だ。そうなると十日ごとに金貨十枚以上払えば元金が減るぞ? 無理なく返済できるよな。」
私が貸す金は、受け取った瞬間に利息が発生するからな。だから今返そうが十日後に返そうが利息は変わらない。十一日目に返したら次の利子が発生するけどさ。
「そりゃあんまりだろ……魔王さんマジかよ……」
「知らなかったじゃ済まないのが冒険者だろ? ゴブリンかと思ったらドラゴンだったなんて魔境じゃよくあることだからな。」
さすがにないよな……?
「てめえらあ! 何ぼさっとしてやがる! 魔王さんに頭あ下げて謝らねえかあ! 今ならまだ間に合うだろおがあ!」
「ぶむぁっ!」
「いぎっ!」
「びっ」
こいつすごいな。一瞬で三人ともぶん殴って私の前に座らせやがった。
「こうだあ! こうすんだよお!」
そして片膝突いて、体を小さく折りたたんで頭を下げる。きれいな見本だねぇ。
「分かったかあ! そんで心から詫び入れろやあ! いくら魔王さんは心が広いので有名だからってお前らごときに舐めた真似されて簡単に許すわけねえだろがあ!」
「いや、いい。お前が下げた頭で充分だ。関係ないくせにお節介しやがって。そっちのお前らは有り金全部出せ。それで許してやるよ。」
こいつらの軽い頭なんかに価値ないしね。さて、いくら持ってるかな?




