274、旅は道連れ
この際だし少しぐらい相手してやるか。
「この先はベルグ領ってとこなのか?」
なんせ街道を見つけたから適当に南下してるだけなんだもん。さすがにアレクサンドリアは領都だけあって全方位に街道が出てるし。
「ああ? そんなことも知らねーで歩いてんのかあ?」
「そんならどこ行こうってんだあ?」
「大丈夫なんかお前ら? 護衛してやろっか? 帰りだからちっとは安くしてやんぞ?」
あれ? 何だか予定と違う。
「行き先はボルドラだな。適当に南下してどこかで西に曲がる予定だぞ。」
「あぁん? ボルドラ領だぁ? それちいっとばかり遠回りだぜ?」
「わざわざベルグなんぞ回らんでもミュシダル領を経由した方がよっぽど近いだろうによ?」
「あんま遠回りしてっと盗賊に狙われちまうぞお?」
えらく親切だな。いつものナンパ冒険者かと思えば。
「盗賊で思い出したが、ガストンのことは知ってるか? アレクサンドリアのギルドじゃいい顔してたくせにちょっと状況が悪くなったらすぐ逃げ出したらしいな。お前らも冒険者だろ? 関わりはあったのか?」
「ああ、話にゃあ聞いてんぞお。関わりなんぞねえけどよ。元々は王都の五等星だったそうじゃねえか。それなりの腕利きだとかよ」
「アレクサンドリアのギルドじゃあ筆頭格じゃなかったか?」
「逃げたってのはどういうことよ? さすがに初耳だぜおい?」
あら、そこまでは知らないのか。というかそこそこ名前が売れてんのね。よくもまあ元盗賊だと知られてるくせに平気でギルドに出入りするよなぁ。あ、それってスパラッシュさんもだったか……スパラッシュさんは元殺し屋だけどさ。
「知らないんならいいさ。アレクサンドリアで魔王が暴れたって話は聞いてるか? それ関連だわ。」
「あー、聞いてんぞ……かなりぶち壊されたらしいじゃねーか……」
「俺らあ領都に行ったんが今日でよかったよなあ」
「んでえ? その件とガストンがどう関係あるってんだあ?」
今日? あぁそういえば帰りだから安くするとか言ってたな。
それにしてもこいつら第一印象は悪かったけど意外とまともに会話できるもんだな。
「魔王が現れたと知って大急ぎで逃げたんだとよ。情けねぇのか判断がいいのか分からんけどな。」
判断の良さを褒めるべきだろうなぁ……私と顔を合わせることを嫌ったんじゃないだろうか。目視できたなら逃がさない自信はあるし。そう考えると、やっぱ英断だったんだろうなぁ。ちっ、生意気な。
「やるじゃねえの。あの野郎って一度も捕まったことねえんだろ? 元盗賊ってのも噂程度の話で証拠なんぞ全然出ねえって話だったか」
「おお、だから賞金もかかってねえんだったか? でも噂が本当ならどんだけ貯めこんでやがんだろうなあ?」
「狙ってみんのも面白そうだがよお? ちいと割に合わねえ気がすんだよなあ」
これまた意外……こいつら状況判断が的確じゃん……
逃げたってことを笑う様子が全然ない。おまけに噂でしか知らないであろうガストンとの実力差をだいたい見極めてやがる。びっくり。
「お前らって五等星か六等星だったりするのか?」
「おっ? 分かるかあ? かあー! バレちまっちゃあ仕方ねえなあ!」
「やっぱ滲み出る格ってもんは隠し切れねえよなあ!」
「ぎゃはははあ! まったくだあ! その割にこーんなガキに対等な口きかれちまってんけどなあ!」
ガストンに警戒してるところを見ると六等星かな。
「で、何等星なんだ? おっと、俺は七等星な。この子は八等星だ。」
さて、態度は変わるかな? ガキとか言ってやがるし。
「ああん? お前七等星かあ? まあその歳じゃあマシな方かあ? 俺らあアジャーニ領はサンセバギルドの六等星シンファリオンってんだあ」
「知らねえってんなら教えてやんぞお? 風より速くって意味があんだぜえ!」
「まっ、古い言葉だけどなあ!」
サンセバ? 確かアジャーニ領の中心サンセバスティアーノのことだっけ?
それよりまたまた意外。私が七等星と知っても態度がほとんど変わらないじゃん。どうなってんの? 珍しく真っ当な冒険者なのか? 意外すぎる……
「そうか。六等星とは恐れ入ったわ。今からアジャーニ領まで帰るってことか?」
「おうよ。本当ならアレクサンドリアで適当な依頼を見つけるつもりだったんだけどよお? あの調子じゃどうにもならねーからよ」
「アレクサンドリア内の依頼ならあったんだけどなあ? あんなゴタゴタしてんとこに居れるかってんだよなあ?」
「こんな時はさっさと退散するに限るってもんだあ。だから格安で送ってやろうかってワケよお? どうよ? 俺らあサンセバじゃあちったあ知れてんだぜえ?」
あー、なるほどね。やはり判断がまともすぎる……
ここらにもこんな冒険者がいたとはね。声をかけてきたのはこいつらなりの営業だったってわけか。
「護衛は必要ないが行く道が同じなら仲良くお喋りでもしようぜ。俺らは途中で西に向かうけど、お前らはずっと南に行くんだろ?」
「まぁ、そーだな。この先の村とかベルグ領で適当な依頼でもあれば別だけどよ。基本的にあサンセバに帰るつもりだからよ」
「お喋りは構わねえけどお前ただ乗りすっ気かあ、おお? 俺らと一緒に歩いてりゃあそれだけで安全だからよお?」
「ぎゃははははあ! 目端の利くガキじゃねえかあ! たまにゃあいいんじゃねえのかあ?」
あー、その考えもあるな。有力商人のキャラバンの後ろを歩いてると盗賊も襲いにくいっていうあれな。多少ならお目溢ししてもらえるけど、あまり頻繁にやると嫌われるやつね。
「悪いな。そんなつもりはないぞ。じゃあ俺らは先に行くとするわ。ここらでしばらく休んでたらどうだ?」
「言うじゃねえか。気に入ったぜガキい。お前らが道い逸れるまで同行してやんよ。なあ?」
「おお、構わんぜえ。たまには若いもんとお喋りも悪かあねえからよお」
「ボルドラに行くってこたあベルグ領の手前、ノントロ村あたりで街道を西に折れるってとこかあ? それまでご一緒してやっかあ?」
あらら。私は別にどっちでもいいんだけどな。こいつらってこの感じなのに道中で豹変したらそれはそれで面白いな。
さて、どうしよう?




