268、ベゼル家の団結
はあぁ……燃えたなぁ。
至福のひと時だった。やっぱアレクって最高の女の子だわ。
このまま寝てしまおうかと思ったら……やけに腹がへってるな。そりゃそうか。朝から何も食べてない上にもうすぐ夕方なんだし。何か食べてもいいけど、このまま夕食まで我慢かな。そうなると、ひとっ風呂浴びるとしようかな。空腹を紛らわすためにも。
コーちゃん、アレクを頼むね。よく寝てるからさ。
「ピュイピュイ」
ふう。いい湯だった。やっぱ風呂ってのはいいもんだね。さて、アレクはまだ起きてないのかな? それならそれでいいや。寝顔をじっくりと見ていよう。アレクの顔って見てて飽きないんだよなぁ。ほっぺを突いてみよう。ふふ、ぷにぷにしててかわいいなぁ。しっとりしつつも撫でるとすべすべ。絹どころじゃないね。ヒイズルで仕立てた天鵞絨をも余裕で上回るよね。
「う……うぅん……カースぅ……」
おっ、寝言か? 夢の中で何してるんだろうね。
「そっちは……違う入り口……」
違う入り口? ダンジョンの夢かな?
「だめよぉ……でもぉ……カースがそん……」
私が?
「ああっ! あら……カース?」
「おはよ。何か夢見てたみたいだね。すっごくかわいかったよ。」
「え……私もしかして寝言とか言ってた?」
「うん。入り口が違うとか言ってたかな。ダンジョンの夢でも見てたの?」
「入り口……あっ、そ、そうよ! ヒイズルみたいな所のダンジョンみたいな場所だったわ! 入り口がたくさんあって正解を選ばないと奥まで行けないの! それなのにカースは間違った入り口でも平気で入っていこうとして! そこから先は覚えてないわ! 本当に覚えてないんだから!」
えらくムキになるなぁ。夢を覚えてないなんて大して珍しいことでもないのに。私なんか今生では一つも覚えてないぞ? それはそれで不思議だけどさ。
「あ、今ちょうどお風呂に湯が溜まってるよ。夕食までまだ時間あると思うし入ってきたら?」
「カースはもう入っちゃったの?」
「そうなんだよ。ごめんごめん。さっき目が覚めたもんでさ。」
「いいのよ。じゃあちょっと入ってくるわね。」
そう言ってアレクはベッドから出て、肌を隠すことなく歩いていった。後ろ姿も絵になるなぁ。背中からお尻へのラインもたまらんね。あれは芸術だわ。
「ガウガウ」
どうしたカムイ。さっきまで姿が見えなかったと思えば。今帰ってきたのか。閂しておいたはずなのに……
「ガウガウ」
手洗いしろだと? タイミング悪いなぁ。でもまあいっか。アレクが入っている風呂に突入するのも悪くない。
「アレクー、入るよー。」
「えっ? あ、う、うん! いいわよ!」
もう入ったけど。アレクにしては声に焦りが含まれているな。普通に湯船に浸かっているだけにしか見えないが。
「カムイが手洗いしろってうるさくてさ。邪魔するね。」
「うふふ、カムイらしいわね。」
今度はいつものアレクだなぁ。
よし、手洗いと乾燥とブラッシング終わり。うーむ、やっぱカムイって贅沢だよな? 絶対もう野生の誇りとか失ってるよな? でもこの毛並みは貴重だよな。カムイが手洗いにこだわるのも分かる気がする。
「お疲れ様。カムイは喜んでるみたいね。」
「ありがと。カムイったらどんどん贅沢になってない? 別にいいけどさ。」
「うふふ。そうかも知れないわね。それより、今日中に出発するはずだったのに予定変更ね?」
「あはは、そうだね。まあ別に明日でもいいよね。慌てる旅でもないし。」
スケジュールのない旅ってのはいいもんだね。こんな贅沢なことはないだろうよ。それにいくら泊まってもタダってのもなかなか贅沢だ。
「そうね。じゃあ明日は王都へ?」
「うん。王都である程度過ごしたら南の大陸に行こう。」
「ついに南の大陸なのね。ドキドキしてくるわ。きっとヒイズルとも山岳地帯とも違うんだわ。楽しみね。」
「だよね。楽しみだね。」
魔力が回復しないってのが気になるけど、まあ行けば分かるよね。
ふう。この短期間で二回も風呂に入ったせいか何となく怠くなってきたな。それとも腹がへりすぎてるからか?
風呂から出ると、ちょうどノックの音が。担当メイドが呼びに来たのかな。ようやく夕食だ。待ち遠しかったぜ。
「よおし! 全員揃ったなあ! 一応今回何があったか改めて説明しておくからなあ!」
私達が席に着いてから五分もしないうちに全員が揃い、じいちゃんが話を始めた。
「というわけだあ! アレクサンドル公爵家との仲はやべえことになっちまったがなあ! だが、多分あっちはそれどころじゃねえ! 気にせずいつも通りいくぞお! ワシらあセーラムの民らしく大地とともに生きていくんだあ! 分かったなあ!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
全員が力強く返事をする。アレクサンドル家との仲が最悪になったってのに誰も怯んだ様子がない。じいちゃんへの信頼か各々の自信か、それとも虚勢か。いずれにしてもこうやって一家がまとまってるのはいいことだよな。
今思えばアレクサンドリアではアレクサンドル家の者とは一人も会ってない。当主も二男もいないってんなら長男か公爵夫人ぐらいには会ってもよかったな。もちろんプレッシャーかけるためにさ。
ダミアンの兄貴が贋金に関わってる証拠も出てこなかったしガストン一人にかき回された感があるよな。だいたい金が欲しいだけの盗賊のくせに贋金にまで手を出すって何考えてんだろうな? 効率はいいのかも知れないが盗賊上がりごときの手に負える犯罪じゃないだろ。仲間を切り捨てまくって逃げまくってさ。それで大金手に入れて何が残るんだって話だわ。理解できんなぁ。
それとも金が目的なのではなくスリル目当てだったりしてね。いかなる騎士にも捕まらない、公爵家すらも手玉にとる俺ってカッコいーとか思ってんだろうか。禁術や契約魔法も使えるみたいだし、あの分だと他にもたくさん魔法使えるんだろうな。生意気な野郎だわ。




