13話
「ふ~、食べた食べた」
ぽんぽんと腹を軽くたたき、お冷を飲み干す。非常に満足した……のだが、千代田さんはそんな俺を見て表情を曇らせた。
「どうしました?」
「『食べ終わったー』みたいな顔をしてたからよ」
「いやでも、食べきりましたけど」
「何言ってるのよ。これからがクライマックスじゃない。店員さーん! 追い飯お願いします!」
千代田さんが声を上げると、待ってましたと言わんばかりに千代田さんのどんぶり、そして何も言っていない俺のどんぶりまで回収し、米をよそう。
「へいお待ちぃ!」
———汁がからんだ白米も、むちゃくちゃ美味かった。だがそれ以上に腹がきつい。ニンニク臭も凄い。
「じゃあ、また今度ね!」
満腹になった千代田さんは機嫌がすっかり良くなって、ブレスケアを手渡されて帰路を分かつ。
美味い店に連れてってくれるのは嬉しいのだが、少し太ったかもしれない。これが幸せ太りかぁ、自転車のペダルが重いぜ。
1Kの自宅に帰り風呂へ直行、ドライヤーで髪を乾かしながらニンニクの匂いを部屋の壁紙に沁みつけていると、携帯の画面が光っているのに気付く。
「美雪ちゃんか」
先ほど交換した連絡先からメッセージが届いている。先ほどの件のお礼と、除霊について今度お願いします、といった内容だ。
千代田さんともメッセージのやり取りをしているが、美雪ちゃんも加わってくるとなると……。はぁ、困っちゃうよな? 困っちゃうよホント、柳生がひた隠しにしていた理由も分からなくもないよ。あぁ明日、柳生にどんな顔して合えばいいんだろ、あと橋本も。
なんて考えていると、丁度柳生からもメッセージが届く。お呼びじゃないよ?
仕方ないから開いてやると、『この動画見とるか~?』という文字と動画サイトのURLが添付されている。サムネには、以前に唾を飛ばして語っていた女性Vtuberのゲーム実況動画が載っているが……。
あのな? 今はリアルの話で困ってるわけ。この期に及んでバーチャルの話に構ってる場合じゃないわけ。
やれやれ、柳生なんて無視して美雪ちゃんとのチャットへ戻ろう。
しかし、そこにも同じURLとサムネが載っている。
……なんで?
開き間違えたかと思ったがそういうわけではない。ラジオじゃあるまいし、チャットが混線してるのか?
しかしよくよく見てみると、美雪ちゃんの添付URLの前に、一つ見落としているメッセージがあった。
『実は私、趣味でVtuberをやっていて……。良かったら見てください(>_<)』
なんだこれは、たまげ……ている場合ではない。え、どゆこと? 理解が追いつかない。
思考が停止していたが、取り合えずでそのリンクを踏むと、そこには。
少し声色を変えてはいるが、確かに美雪ちゃんの声・語り口調でゲーム実況をしている動画が再生された。
チャンネル名は『❆miyuuu❆』で、登録者数は1000人弱、動画投稿は1週間前で数百くらい……。
たまげたなぁ。
いやしかし、だからといって美雪ちゃんは美雪ちゃんなわけで、何も変わらないじゃないか。Vtuberをやっていようとなかろうと、認識が変わるわけではない。ゲーム実況とはいってもジャンルは色々あって、俺が好んでみるようなゲームのプレイは少ないみたいだし。
平常心を保ちながら、過去の動画一覧を漁っていると。
『耳かきASMR』の文字が飛び込んでくる。
どうしたらいいんだよ、ずるいじゃんこんなん。
まぁとにかく、イヤフォンを取り出して。美雪ちゃんのチャンネル登録者数は一人増えたようで、良いことなんじゃなかろうか。




