【どんなことにも限度はある】
再び異世界に舞い戻る。
今度は二人で。
「おぉ、ここが私の作った世界かー、まぁまぁ良いんじゃないか?」
「まだ数えるほどしか歩いてないんだから良し悪しは分かんないだろ」
「あんた文句ばっかだね、あーやだやだ」
「いいから、ほらちゃんと着いて来いって」
暫く歩いていると、横から女神の姿が消える。
振り返り見ると数歩分後ろでうずくまっている。
「…あのさ、何してんの?」
「疲れた、足痛い」
「いや、まだ全然歩いてないんだけど?」
「しょうがないでしょ、普段歩くことなんてないんだから!」
「そうかも知れないけど…そもそもの原因はそれじゃない?」と女神の足元を指差す。
「何でそんな高いヒールの靴履いてるんだよ、それにこっち来たら服装も変わってるし。というか俺のいた世界の服っぽいな」
「そりゃあんたの記憶の中にあったやつだからね」
「タバコは持ってこれないのに、服は大丈夫とかおかしいだろ」
「それはだね、この服や靴は『交換』した物だから」
「交換?」
「そう。この服とかはさっきまで私が着てたのと交換した物。でもタバコは私が具現化させただけで、あの世界でしか存在できないものだから」
「あれ?じゃあさ俺の服をタバコと交換できるんじゃ」
「あんたどれだけタバコ吸いたいのよ!それに服なくなったらどうするのさ」
「いや上は無くても何とかなるっしょ」
「イ・ヤ・だ!何が楽しくて上半身裸のやつと旅しなきゃいけないわけ!?」
「…確かにそれは嫌だな」
「ほら、余計なこと言ってないで、これ何とかしてよ」
靴を指差し見上げてくる。
「いや、とりあえず靴脱げばいいじゃん?」
「えっ!?」
「え、じゃねーよ、どのみちその靴じゃ旅なんて出来るわけないって」
「う~……そうだ!あんたに特別名誉なことを与えよう」
「あー遠慮しておく、絶対にめんどくさいやつでしょ」
「まだ話してもいないのに、めんどくさいって決めつけないでほしいんですけど!」
「うるさいなぁ…わかったよ、聞くだけ聞く」
「…お、おんぶ」
「はい無し」
「早いって!よーく考えてみて?女神をおんぶできるとか普通じゃ、ぜーったいに有り得ないことなんだよ!」
「よーく考えてもやっぱ無理」
「・・・」
「あんた男でしょ!女が、神が、助けを求めているのに、プライドとかないわけ?!」
「神が助けを求めるってどうなのよ…」
「あーっうるさいうるさい!あーあっ、ホントに最悪だー」
とうとう地面に座りこみ足をバタつかせはじめる。
「あのさ、もう一回聞くんだけど、本当に女神?」
「はいー?ケンカか?ケンカがしたいのか?」
「・・・」
「な、何よ」
「いやクソガキだなぁって…」
「ンンンーーッ!うるっさいわね!あんまり私を怒らせ…」
「ほら」
「何背中向けてんのよ?」
「おんぶ、すればいいんだろ?はよしろ」
「…あ、あんたね、少しは恥ずかしがるとか照れるとかないわけ?」
「何で俺が照れる立場になるんだよ、意味わからん」
「あーなるほど、これが鈍感というやつか」
「誰が鈍感だ、いいから早くしろって」
「…お、おじゃまします?」の言葉に、
「なにそれ」と思わず吹き出す。
「笑ってんじゃねーよ!」
「よしっ、いくぞー。ちゃんと大人しくしてろよ、でも寝るなよ」
「子供じゃないんだから寝たり暴れたりなんかするわけないでしょ!」
「…スゥスゥ…」
「ウソだろ…まだ10分も経ってないぞ…」
「さてと、これからどうしようかなぁ」
立ち止まり考える。
「旅と言った手前、ホイホイとあの世界には戻れないしなぁ」
「とりあえず金がないと何もできないから、やっぱ仕事するしかないか…異世界にきてまで仕事とか流石に笑えてくるわ」
「まっ、ブラブラしながら色々観て回っておくかな」
しばらく歩いていると背中で動きがある。
「…スゥスゥ…スゥ…ン~なんかいい匂いがするぅ」
「お、起きたか?」
「うん…い、いや寝てませんでしたが!?」
「普通に寝てたぞー。ま、それより確かにいい匂いするな」
「うん、どこからだろーね」
「少し探すか」
そのまま歩こうとしていたところに声がかかる。
「え、あ…そろそろ降り」
「そのまま乗ってていいよ、こっちの方が歩く速度落とさなくていいし」
「遠回しに足が遅いって聞こえるんだけども」
「…」
「おい、何とか言えよ!」
「んー…このへん…あ、ここか」
「クンクン、ほんとだ」
「メガちゃん、看板に何て書いてある?」
「あ、そうか読めないのか」
「そ」
「えーっとね、ここは宿屋だね」
「あ、料理屋じゃないのか…でも宿屋か…」
「どーする?一旦戻れば」
「さっきさ考えてたんだ」
「ん?」
「一緒に旅しようって話したのに、簡単にあの世界に戻ってたら、もうそれは旅じゃないなって」
「…うん、確かに…そうだね」
「クックック」
「な、なに急に笑いだして」
「あーいや、結局もらったスキルさ、意味なくなったなって」
「あ…フフそうだね、でも、きっとあんたにはこれが正解だったんだと思う」
「そうかもね…それに良いスキル貰ってたら、こうして一緒に旅に出るなんてなかっただろうし。
一人で見る景色と二人で見る景色。どちらかしか選べないなら、やっぱり一緒に見る方がいいもんな」
「本当にあんたは前向きだね…でもそうだね。あんたに連れ出されなかったら今も私は、何も知らないままのつまらない存在だったから」
「よし、決めた」
「え?」
「俺を宿屋で働かせてもらえるよう交渉頼む!」
「…はぁ、いいけどさ…あんまり無理しないでよ?」
女神の交渉によって、食事つきで2泊出来ることになったんだが…。
「何で同じ部屋なんだよ!」
「へ?何でって何で?」
「こっちが聞いてんの!」
「シッ!宿屋なんだからもっと小さな声で喋りなさいよ」
しばらく言い合って…諦める。
「あー…もういいや…半分よりこっちくるなよ?」
「それはこっちのセリフなんですが!?」
女神はベッドで肩肘を着きながら、俺はイスに座りながらグダグダと下らないバカ話をしているうちに、女神は瞼を落とした。
「ホント、急に寝るよな…」
腕を体の横に動かし布団をかける。
「まだ眠くないし、あれやっとくかな」
-数時間の後-
「ん…、あれ…?まだ寝てなかったの?」
「あぁ悪い、灯り眩しかった?」
「そんなことはないから気にしないでいいよ」
「はいよ」
「というか何してるの?」
「あぁ、さっきさ宿屋の人から書くものと、子供向けの本借りたから、文字の勉強をね」
「見た目と普段の言動から想像つかないほど努力家なんだね」
「褒めてるの?けなしてるの?」
「フフ…両方」
「…俺さ、努力って苦手だからそんなんじゃないぞ、ただ」
女神は体を起こし「ただ?」と聞き返す。
「出来る限りのことはやっておきたいだけ。いつ何があるなんて分からないし、後悔を無くすことは出来ない…けど減らせることは出来ると思うからさ」
「そっか…」そう言うと〈ポフ…〉と枕に頭を乗せ、聞き取らせないよう小さく呟く。
「それを努力ってゆーんだよ…おやすみなさい…」
~次回~
【あっち こっち そっち どっち】




