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静かに暮らしたいだけなのに周囲が俺を天才扱いしてくる  作者: 花梨


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5/16

昼寝場所を探してただけ

初投稿になります。

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 最近、 家にいると落ち着かなかった。

「レイってやっぱり凄いわよね〜」

「将来は英雄かしら♡」

 近所の人まで言い始めたからだ。

 違う。

 英雄じゃない。

 静かに暮らしたいだけだ。

 あと最近、 母親が妙に張り切っている。

「レイの服、もっと高級なのにしようかしら♡」

「目立つからやだ」

「控えめなのがまた大物感あるわ……!」

 違う。

 本当に目立ちたくないだけだ。

 ◇

 その日。

 俺は一人で街外れへ来ていた。

 目的は一つ。

 昼寝場所探し。

 家は最近うるさい。

 街はもっと嫌。

 だから静かな場所が欲しかった。

「……ここ、いいかも」

 小さな丘。

 木陰。

 風も気持ちいい。

 完璧だった。

 俺はその場へ座り、 ようやく落ち着く。

 静かだ。

 最高である。

 ……と思った時だった。

 ガサガサッ!!

「……?」

 近くの茂みが揺れる。

 嫌な予感。

 かなり。

 すると。

「た、助けてぇ!!」

 子供の声。

 なんでだ。

 なんで静かな場所に限って事件が起きる。

 俺は嫌そうな顔で立ち上がる。

 視線の先には、 泣いている少年。

 そしてその後ろには、 狼型の魔物。

 しかもでかい。

「グルルル……」

 怖。

 普通に怖い。

 俺は関わりたくなかった。

 本当に。

 だから。

 逃げようとした。

 その瞬間。

 コロッ。

「あ」

 足元の石を蹴った。

 小石は転がり――。

 カンッ!!

 近くの木へ当たる。

 すると。

 バキィッ!!

 木の枝が折れた。

 さらに枝が別の枝へぶつかり――。

 ドサドサドサッ!!

 大量の木の実が魔物へ直撃。

 またか。

「ギャンッ!?」

 魔物が驚いて後退。

 そのまま崖際で足を滑らせた。

「ギャオォォォ!?」

 落ちた。

 しーん。

 俺は固まる。

 ……いや、そんな綺麗にいく?

 少年もぽかんとしていた。

「え……?」

「……だいじょうぶ?」

 俺が聞きたい。

 だが少年の目はキラキラしていた。

「す、すごい……!」

 違う。

 全部偶然。

 むしろ怖い。

 ◇

 問題は、 その直後だった。

「いたぞ!!」

 衛兵。

 なんで来るの早いんだ。

 俺は反射的に木の後ろへ隠れた。

 面倒だから。

 すると衛兵たちは、 崖下を見て顔色を変える。

「狼型魔物が……一撃で……?」

「周囲に戦闘痕もないぞ……!」

「まさか噂の……」

 やめろ。

 その流れ嫌いだ。

 すると助けられた少年が、 興奮した顔で叫んだ。

「黒髪のお兄ちゃんが助けてくれたんだ!!」

 言うな。

 特徴を言うな。

 衛兵たちの顔が変わる。

「黒髪……!」

「やはり沈黙の英雄……!」

 その名前、 誰が考えたんだ。

 センスが恥ずかしい。

 俺は木の裏で頭を抱えた。

 ◇

 帰宅後。

「レイ〜〜〜っ!!」

 母親が抱きついてきた。

「また街を守ったって本当!?」

「まもってない」

 即答。

 父親は深く頷く。

「功績を語らない……さすがだ」

 だから違う。

 すると父親が真面目な顔になった。

「……王都の件だが」

 嫌な単語が来た。

「近いうちに、視察が来るかもしれん」

 終わった。

 完全に。

 俺は静かに遠い目をした。

 昼寝したかっただけなのに。

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