昼寝場所を探してただけ
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最近、 家にいると落ち着かなかった。
「レイってやっぱり凄いわよね〜」
「将来は英雄かしら♡」
近所の人まで言い始めたからだ。
違う。
英雄じゃない。
静かに暮らしたいだけだ。
あと最近、 母親が妙に張り切っている。
「レイの服、もっと高級なのにしようかしら♡」
「目立つからやだ」
「控えめなのがまた大物感あるわ……!」
違う。
本当に目立ちたくないだけだ。
◇
その日。
俺は一人で街外れへ来ていた。
目的は一つ。
昼寝場所探し。
家は最近うるさい。
街はもっと嫌。
だから静かな場所が欲しかった。
「……ここ、いいかも」
小さな丘。
木陰。
風も気持ちいい。
完璧だった。
俺はその場へ座り、 ようやく落ち着く。
静かだ。
最高である。
……と思った時だった。
ガサガサッ!!
「……?」
近くの茂みが揺れる。
嫌な予感。
かなり。
すると。
「た、助けてぇ!!」
子供の声。
なんでだ。
なんで静かな場所に限って事件が起きる。
俺は嫌そうな顔で立ち上がる。
視線の先には、 泣いている少年。
そしてその後ろには、 狼型の魔物。
しかもでかい。
「グルルル……」
怖。
普通に怖い。
俺は関わりたくなかった。
本当に。
だから。
逃げようとした。
その瞬間。
コロッ。
「あ」
足元の石を蹴った。
小石は転がり――。
カンッ!!
近くの木へ当たる。
すると。
バキィッ!!
木の枝が折れた。
さらに枝が別の枝へぶつかり――。
ドサドサドサッ!!
大量の木の実が魔物へ直撃。
またか。
「ギャンッ!?」
魔物が驚いて後退。
そのまま崖際で足を滑らせた。
「ギャオォォォ!?」
落ちた。
しーん。
俺は固まる。
……いや、そんな綺麗にいく?
少年もぽかんとしていた。
「え……?」
「……だいじょうぶ?」
俺が聞きたい。
だが少年の目はキラキラしていた。
「す、すごい……!」
違う。
全部偶然。
むしろ怖い。
◇
問題は、 その直後だった。
「いたぞ!!」
衛兵。
なんで来るの早いんだ。
俺は反射的に木の後ろへ隠れた。
面倒だから。
すると衛兵たちは、 崖下を見て顔色を変える。
「狼型魔物が……一撃で……?」
「周囲に戦闘痕もないぞ……!」
「まさか噂の……」
やめろ。
その流れ嫌いだ。
すると助けられた少年が、 興奮した顔で叫んだ。
「黒髪のお兄ちゃんが助けてくれたんだ!!」
言うな。
特徴を言うな。
衛兵たちの顔が変わる。
「黒髪……!」
「やはり沈黙の英雄……!」
その名前、 誰が考えたんだ。
センスが恥ずかしい。
俺は木の裏で頭を抱えた。
◇
帰宅後。
「レイ〜〜〜っ!!」
母親が抱きついてきた。
「また街を守ったって本当!?」
「まもってない」
即答。
父親は深く頷く。
「功績を語らない……さすがだ」
だから違う。
すると父親が真面目な顔になった。
「……王都の件だが」
嫌な単語が来た。
「近いうちに、視察が来るかもしれん」
終わった。
完全に。
俺は静かに遠い目をした。
昼寝したかっただけなのに。
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