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静かに暮らしたいだけなのに周囲が俺を天才扱いしてくる  作者: 花梨


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6/17

静かに本を読みたかっただけ

初投稿になります。

感想、レビュー頂けると励みになります


 王都から視察が来る。

 その話を聞いてから、 俺はずっと憂鬱だった。

 絶対面倒だ。

 しかも父親は妙に嬉しそうだった。

「王都の人間がレイを見るのか……!」

「ふふっ♡ きっと驚くわね♡」

 頼むから驚かせないでほしい。

 俺は朝食のパンを齧りながら思った。

 静かに暮らしたい。

 なぜそれだけで済まないのか。

 ◇

 その日。

 俺は逃げるように街へ来ていた。

 家にいると、 両親がずっと“視察”の話をするからだ。

 疲れる。

「……静かな場所」

 そう呟きながら歩いていると、 小さな建物を見つけた。

 看板には、 “資料館”と書かれている。

 人も少ない。

 静か。

 完璧だった。

 俺は迷わず中へ入った。

 ◇

 中には大量の本が並んでいた。

 古い紙の匂い。

 静かな空気。

 最高である。

「……ここ住みたい」

 思わず本音が漏れた。

 受付のおじいさんが、 優しそうに笑う。

「坊や、本が好きなのかい?」

「しずかだから」

「ははは、変わった子だねぇ」

 普通だと思う。

 俺は適当に棚を眺め始めた。

 すると。

 ガタッ!!

「!?」

 奥の棚が大きく揺れた。

 積まれていた本が崩れ始める。

 しかも下には、 小さな女の子。

 危ない。

 俺は反射的に一歩下がった。

 すると。

 コツン。

 俺の足が、 床に落ちていた棒へ当たる。

 棒が転がり――。

 カタン。

 近くの梯子へぶつかった。

 梯子が倒れる。

 さらに。

 ドンッ!!

 倒れた梯子が本棚を支えた。

 崩れかけていた棚が止まる。

 セーフ。

 しーん。

 館内が静まり返った。

 俺は固まる。

 ……いや、 そんな綺麗に止まる?

 女の子もぽかんとしていた。

「た、助かった……?」

「……よかった」

 本当に。

 怪我なくてよかった。

 だが。

「す、すごい……!」

 受付のおじいさんが震えていた。

「崩落を計算して……?」

 してない。

 偶然だ。

 むしろ俺が驚いてる。

 ◇

 問題はそこからだった。

 奥から、 ローブ姿の老人が出てきたのだ。

 なんか偉そう。

「騒がしいと思えば……」

 老人は止まった本棚を見る。

 そして。

 ゆっくり俺を見た。

 嫌な予感。

「坊主」

「……?」

「今のをやったのはお前か?」

「ちが――」

「隠すか」

 なんでだ。

 話を聞け。

 老人は真剣な顔になっていた。

「魔力を一切漏らさず、最小限の動きで棚を止めた……」

 違う。

 棒に当たっただけ。

 しかし老人は何かを確信したように呟く。

「……王都の噂は本当だったか」

 やめて。

 その流れやめて。

 すると受付のおじいさんまで興奮し始める。

「ま、まさかあの“沈黙の英雄”……!?」

 その名前、 本当に広まってるのか。

 恥ずかしい。

 かなり。

 ◇

 帰宅後。

「レイ〜♡」

 母親がぎゅっと抱きついてくる。

「今日は資料館を守ったのね♡」

「まもってない」

 最近これしか言ってない気がする。

 父親は腕を組みながら頷いた。

「知識を好む強者か……」

 違う。

 静かだったからだ。

 すると次の瞬間。

 コンコン。

 家の扉が叩かれた。

 父親が出る。

 そして。

「……っ!」

 急に空気が変わった。

 なんだ?

 父親が緊張した顔で振り返る。

「レイ」

 嫌な予感。

「王都からの使者だ」

 終わった。

 俺は静かに現実逃避したくなった。

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