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静かに暮らしたいだけなのに周囲が俺を天才扱いしてくる  作者: 花梨


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4/18

隠れたかっただけ

初投稿になります。

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 王都の学校。

 その単語を聞いてから、 俺はずっと嫌な気分だった。

 学校。

 つまり人が多い。

 騒がしい。

 絶対疲れる。

「レイならきっと主席ね♡」

 母親が楽しそうに言う。

「いや、まだ決まってないぞ」

 父親はそう言いつつも、 かなり期待した顔をしていた。

 やめてほしい。

 俺は静かにパンを食べる。

 すると。

「ところでレイ」

「ん?」

「今日は街へ買い物に行くぞ」

 ……またか。

 ◇

 街は今日も騒がしかった。

 人。

 声。

 足音。

 疲れる。

 俺は両親の後ろを、 ぼんやり歩いていた。

「最近、衛兵隊でも噂になってるらしいぞ」

「まぁ♡」

 父親の話に、 母親が嬉しそうに笑う。

 嫌な話題だ。

 すると。

「……ん?」

 通りの奥が騒がしかった。

 人だかりができている。

「盗賊だ!!」

「逃げろ!!」

 うわぁ。

 面倒そう。

 俺は即座に進行方向を変えた。

 関わりたくない。

 本気で。

 しかし。

 ドンッ!!

「きゃっ!?」

 逃げてきた人とぶつかった。

 小さな女の子だった。

 転びそうになる。

 危ない。

 俺は反射的に手を伸ばした。

 その瞬間。

 ヒュンッ!!

 どこからか飛んできたナイフが、 女の子の頭上を通過。

 ガキィン!!

 近くの看板に刺さった。

 しーん。

 周囲が固まる。

 俺も固まった。

 ……危な。

 今の、 たまたま避けたのか?

 すると盗賊らしき男が舌打ちした。

「チッ!」

 いや怖。

 俺は女の子を抱えて、 即座に物陰へ移動しようとした。

 関わりたくない。

 だが。

 ズルッ。

「うおっ!?」

 盗賊の足が滑った。

 さらに。

 ガシャァァン!!

 荷車に突っ込む。

 積まれていたリンゴが大量に転がった。

「ぎゃっ!?」

 別の盗賊も滑って転倒。

 連鎖的にぶつかり合う。

 大混乱だった。

 しーん。

 周囲の人々が固まる。

 俺は女の子を抱えたまま、 そっと後退した。

 帰りたい。

 かなり。

 ◇

「今の見たか……?」

「子供が動いた瞬間……」

「全部崩れたぞ……」

 やめろ。

 見ないでほしい。

 すると衛兵たちが駆けつけてきた。

「確保しろ!!」

 盗賊たちはあっという間に捕まる。

 その中の一人が叫んだ。

「ふざけんな!! なんなんだあのガキは!!」

 知らん。

 俺が知りたい。

 だが衛兵隊長らしき男が、 こちらを見て真剣な顔になった。

「まさか……」

 嫌な予感。

「君が街を守ってくれたのか?」

「ちが――」

「名乗らないつもりか……!」

 なんでだ。

 話を聞いてくれ。

 周囲までざわつき始める。

「やっぱり噂の……」

「黒髪の天才……!」

「沈黙の英雄だ……!」

 その名前、 そろそろやめてほしい。

 かなり恥ずかしい。

 ◇

 家へ帰った後。

 俺は疲れ切っていた。

 精神的に。

「レイ〜!!」

 母親が感動したように抱きついてくる。

「無事でよかったぁ♡」

「つかれた……」

 本音だった。

 父親も深く頷く。

「わかるぞ」

 いや、 たぶん分かってない。

「強者ほど孤独だからな……」

 違う。

 人混みで疲れただけ。

 すると父親が真面目な顔になる。

「……もう隠しきれないかもしれん」

 嫌な予感しかしない。

「王都にも噂が届き始めている」

 終わった。

 俺は悟った。

 静かな人生、 本当に無理かもしれない。


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