隠れたかっただけ
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王都の学校。
その単語を聞いてから、 俺はずっと嫌な気分だった。
学校。
つまり人が多い。
騒がしい。
絶対疲れる。
「レイならきっと主席ね♡」
母親が楽しそうに言う。
「いや、まだ決まってないぞ」
父親はそう言いつつも、 かなり期待した顔をしていた。
やめてほしい。
俺は静かにパンを食べる。
すると。
「ところでレイ」
「ん?」
「今日は街へ買い物に行くぞ」
……またか。
◇
街は今日も騒がしかった。
人。
声。
足音。
疲れる。
俺は両親の後ろを、 ぼんやり歩いていた。
「最近、衛兵隊でも噂になってるらしいぞ」
「まぁ♡」
父親の話に、 母親が嬉しそうに笑う。
嫌な話題だ。
すると。
「……ん?」
通りの奥が騒がしかった。
人だかりができている。
「盗賊だ!!」
「逃げろ!!」
うわぁ。
面倒そう。
俺は即座に進行方向を変えた。
関わりたくない。
本気で。
しかし。
ドンッ!!
「きゃっ!?」
逃げてきた人とぶつかった。
小さな女の子だった。
転びそうになる。
危ない。
俺は反射的に手を伸ばした。
その瞬間。
ヒュンッ!!
どこからか飛んできたナイフが、 女の子の頭上を通過。
ガキィン!!
近くの看板に刺さった。
しーん。
周囲が固まる。
俺も固まった。
……危な。
今の、 たまたま避けたのか?
すると盗賊らしき男が舌打ちした。
「チッ!」
いや怖。
俺は女の子を抱えて、 即座に物陰へ移動しようとした。
関わりたくない。
だが。
ズルッ。
「うおっ!?」
盗賊の足が滑った。
さらに。
ガシャァァン!!
荷車に突っ込む。
積まれていたリンゴが大量に転がった。
「ぎゃっ!?」
別の盗賊も滑って転倒。
連鎖的にぶつかり合う。
大混乱だった。
しーん。
周囲の人々が固まる。
俺は女の子を抱えたまま、 そっと後退した。
帰りたい。
かなり。
◇
「今の見たか……?」
「子供が動いた瞬間……」
「全部崩れたぞ……」
やめろ。
見ないでほしい。
すると衛兵たちが駆けつけてきた。
「確保しろ!!」
盗賊たちはあっという間に捕まる。
その中の一人が叫んだ。
「ふざけんな!! なんなんだあのガキは!!」
知らん。
俺が知りたい。
だが衛兵隊長らしき男が、 こちらを見て真剣な顔になった。
「まさか……」
嫌な予感。
「君が街を守ってくれたのか?」
「ちが――」
「名乗らないつもりか……!」
なんでだ。
話を聞いてくれ。
周囲までざわつき始める。
「やっぱり噂の……」
「黒髪の天才……!」
「沈黙の英雄だ……!」
その名前、 そろそろやめてほしい。
かなり恥ずかしい。
◇
家へ帰った後。
俺は疲れ切っていた。
精神的に。
「レイ〜!!」
母親が感動したように抱きついてくる。
「無事でよかったぁ♡」
「つかれた……」
本音だった。
父親も深く頷く。
「わかるぞ」
いや、 たぶん分かってない。
「強者ほど孤独だからな……」
違う。
人混みで疲れただけ。
すると父親が真面目な顔になる。
「……もう隠しきれないかもしれん」
嫌な予感しかしない。
「王都にも噂が届き始めている」
終わった。
俺は悟った。
静かな人生、 本当に無理かもしれない。
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