静かに食べたかっただけ
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二歳になった頃。
俺には、好きな時間があった。
食事の時間だ。
静かだから。
みんな食べてる間は、 比較的騒がしくない。
最高である。
「レイ、今日は街の食堂へ行くぞ!」
……訂正。
今日は最悪だった。
◇
街は人が多い。
騒がしい。
疲れる。
俺は父親に抱っこされながら、 ぼんやり通りを眺めていた。
「最近、街も平和になったわねぇ」
母親が嬉しそうに言う。
すると近くの人が頷いた。
「ええ。最近は変な揉め事も減りましたし」
知らん。
俺には関係ない。
静かならなんでもいい。
◇
食堂の中は混んでいた。
ガヤガヤと騒がしい。
でも外よりはマシだ。
俺は椅子に座りながら、 早くご飯来ないかなと思っていた。
その時だった。
「おい!! 酒がぬるいぞ!!」
怒鳴り声。
うるさい。
店の奥で、 酔っ払いの男が騒いでいた。
「だから言ってんだろ!!」
ドンッ!!
机を叩く。
店員のお姉さんが怯えていた。
周囲の客も気まずそうだ。
……うるさいな。
本当に。
俺はパンを食べながら思った。
静かに食べたい。
ただそれだけなのに。
すると。
ミシッ。
男の座っていた椅子が軋む。
「ん?」
次の瞬間。
ベキィッ!!
「うおっ!?」
椅子が壊れた。
男はそのまま盛大に転倒。
さらに。
ガシャァン!!
近くの水桶が倒れ、 頭から水を被る。
しーん。
食堂が静まり返った。
男は呆然としていた。
周囲も固まっている。
俺はスープを飲んだ。
……静かになった。
良かった。
すると男が青ざめた顔で周囲を見る。
「な、なんだ今の……!?」
知らん。
椅子が古かったんじゃないか?
だが店員のお姉さんが、 なぜかこちらを見ていた。
「……え?」
やめろ。
見るな。
俺は目を逸らす。
しかし周囲の客もざわつき始めた。
「今、あの子が見た瞬間……」
「まさか……」
「いやでも、魔力は……」
違う。
本当に違う。
◇
食事を終え、 店を出た後。
父親が真剣な顔をしていた。
「レイ」
「んー?」
「お前、威圧を使ったのか?」
「つかってない」
即答した。
そもそも威圧ってなんだ。
だが父親は深く頷く。
「隠すか……」
「さすがレイ……!」
母親はキラキラした目をしていた。
違う。
俺は疲れた顔になる。
なんでこうなるんだ。
◇
その日の夜。
俺は自室でごろごろしていた。
静かだ。
素晴らしい。
ずっとこうならいいのに。
すると、 隣の部屋から両親の声が聞こえてきた。
「……やはり特別な子だな」
「ああ……」
まだ言ってる。
「でもレイって、 あまり目立ちたがらないわよね?」
「強者ほどそういうものだ」
違う。
本当に目立ちたくないだけだ。
すると父親が真面目な声で言った。
「将来は大物になるぞ……」
やめてほしい。
俺は布団を被った。
静かに暮らしたい。
切実に。
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