普通に寝てただけ
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――運が悪かった。
前世の俺は、とにかく運が悪かった。
財布は落とす。
鳥のフンは当たる。
電車は遅れる。
極めつけは。
青信号を渡っていたら、なぜかトラックが突っ込んできたことだ。
理不尽すぎる。
そして次に目を開けた時。
俺は白い空間にいた。
「ごめんねぇ」
目の前には、女神っぽい人。
軽い。
ものすごく軽い。
「君、ちょっと運が悪すぎたんだよ。世界のバランス壊れるくらい」
「はぁ……」
「だから次は、少しだけ運を良くしておくね!」
嫌な予感しかしない。
だが、その前に視界が光に包まれた。
「じゃ、第二の人生楽しんで〜!」
そして――。
「おぎゃあああ!!」
赤ん坊として生まれた。
◇
「あなた見て!! レイが寝返りしたわ!!」
「天才だ……!」
うるさい。
眠い。
俺はまだ生後数ヶ月。
だというのに、両親が毎日騒がしい。
騒がしすぎる。
「この子、絶対賢いわ……!」
「目つきが違う……!」
普通だと思う。
たぶん。
俺は欠伸をしながら天井を見た。
この世界は平和そうだし、 できれば静かに暮らしたい。
平和が一番。
静かな生活最高。
そう思いながら、 再び眠ろうとした、その時。
ガタッ!!
近くの棚が揺れた。
「……?」
上を見る。
花瓶が落ちてきていた。
真下には母親。
危ない。
だが。
パシッ。
落ちてきた布が偶然花瓶に絡まった。
さらに反動で花瓶が横へ逸れる。
ゴトン。
柔らかいクッションの上に落下。
割れなかった。
しーん。
両親が固まる。
俺は眠かった。
かなり。
「…………今の」
父親が震えた声を出す。
母親はレイを抱きしめながら呟いた。
「この子……私を守ったの……?」
違う。
偶然だろ。
というか静かにしてほしい。
眠い。
しかし父親は真顔だった。
「赤子で空間把握を……?」
「しかも先読みまで……!」
だから違う。
俺はそのまま目を閉じた。
すると母親が感動したように言う。
「見てあなた……」
「ああ……」
「何事もなかったように眠ってる……!」
いや眠いからだ。
◇
一年後。
俺は縁側でぼーっとしていた。
暖かい。
風も気持ちいい。
最高だ。
「レイ〜?」
母親が手を振る。
「お昼ご飯できたわよ〜」
「んー」
返事をしながら立ち上がる。
その瞬間。
バサバサッ!!
庭の木から鳥が飛び立った。
「!?」
驚いて足がもつれる。
転びそうになった。
だが。
偶然、近くの桶に手が当たる。
桶が転がる。
すると中の水が庭へ流れ――。
バシャッ!!
塀の上を歩いていた猫が滑った。
「にゃっ!?」
さらに猫が飛び跳ねた拍子に、 干してあった洗濯物が落ちる。
その洗濯物が、 ちょうど庭へ侵入しかけていた蛇へ直撃。
蛇は驚いて逃げていった。
沈黙。
俺は固まった。
……なんか凄い連鎖したな。
母親は青ざめていた。
「へ、蛇……!?」
父親も目を見開く。
「レイが……家族を守った……?」
違う。
転びそうになっただけ。
むしろ俺が一番驚いてる。
しかし母親は感動で目を潤ませていた。
「まだ一歳なのに……!」
だから違う。
俺は疲れたようにため息を吐く。
静かに生きたい。
本当に。
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