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静かに暮らしたいだけなのに周囲が俺を天才扱いしてくる  作者: 花梨


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13/17

静かな部屋がほしかっただけ

 主席合格。

 歴代最高評価。

 最悪だった。

 周囲の視線が痛い。

「いたぞ……!」

「主席の……!」

「“沈黙の英雄”……!」

 やめて。

 本当に。

 俺は人混みを避けるように歩いていた。

 すると。

「レイくん♡」

 王女。

 来た。

 しかも笑顔。

 逃げたい。

「寮の部屋、  特別室を用意しましたわ♡」

 嫌な予感。

 かなり。

「静かで広くて、  王城級の設備ですの!」

 それはちょっと魅力的だった。

 静か。

 重要。

 かなり。

 ◇

 王立学園の寮。

 でかい。

 豪華。

 人多い。

 疲れる。

 俺は案内されながら、 ぼんやり廊下を歩いていた。

「こちらが特別寮ですわ」

 王女が扉を開ける。

 中を見た瞬間。

「……」

 広い。

 静か。

 ベッドふかふか。

 しかも防音。

 最高では?

 俺は少し感動した。

「……いい」

 思わず本音が漏れる。

 王女が嬉しそうに笑った。

「ふふっ♡ 気に入っていただけました?」

「しずか……」

「やはり……!」

 なにが。

 だが王女は完全に納得した顔だった。

「強者ほど孤独を愛するものですわ……!」

 違う。

 騒がしいのが嫌いなだけ。

 ◇

 すると。

 コンコン。

 部屋の扉が叩かれた。

「失礼する」

 入ってきたのは、 眼鏡をかけた男性教師。

 真面目そう。

 なんか疲れてそう。

「私はこの学園で一年を担当する、  クロードだ」

「……ん」

 クロード先生は、 俺を見る。

 そして一瞬だけ固まった。

 なんで。

 だがすぐ真顔へ戻る。

「……なるほど」

 なにが。

「王女殿下が気にかける理由は理解した」

 違う。

 気にかけなくていい。

 かなり。

 するとクロード先生は書類を取り出した。

「本来なら入学初日には、  クラス分け試験がある」

 嫌な予感。

「だが君の場合――」

 その瞬間。

 グラッ。

「……?」

 先生が持っていた大量の書類が傾く。

 落ちる。

 俺は反射的に横へ避けた。

 すると。

 ヒュッ。

 風。

 開いていた窓から入る。

 さらに。

 パラララッ!!

 飛び散りかけた書類が、 なぜか綺麗に机へ着地した。

 しかも順番通り。

 しーん。

 沈黙。

 俺は固まる。

 ……なんで?

 クロード先生も固まっていた。

「…………」

 王女は目を輝かせている。

 やめて。

 その顔。

 クロード先生が震える声を出した。

「今のを……  無詠唱で?」

 違う。

 避けただけ。

 だが先生は額を押さえた。

「噂以上か……」

 違う。

 噂が間違ってる。

 本当に。

 ◇

「レイくん」

 王女が嬉しそうに微笑む。

「明日から授業ですわ♡」

 嫌だなぁ。

 かなり。

 するとクロード先生が真面目な顔で言った。

「一応忠告しておく」

「……?」

「君は既に有名だ」

 知ってる。

 最悪だ。

「特に二年と三年には気をつけろ」

 嫌な単語。

「実力主義の学園だからな。  上級生の中には、  君を認めない者もいる」

 あー……。

 面倒そう。

 かなり。

 俺は静かにベッドへ倒れ込んだ。

 せめて部屋だけは、 平和であってほしい。

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