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静かに暮らしたいだけなのに周囲が俺を天才扱いしてくる  作者: 花梨


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11/16

静かに終わってほしかっただけ

 魔力測定水晶。

 破壊。

 最悪だった。

 会場はまだざわついている。

「王国製だぞ……?」

「歴代でもこんなの……」

「まさか測定不能クラス……!?」

 違う。

 たぶん壊れてた。

 古かったんじゃないか。

 そういうことにしてほしい。

 かなり。

 ◇

「し、静粛に!!」

 試験官が慌てて叫ぶ。

 だが声が少し裏返っていた。

 完全に動揺している。

 俺も動揺してる。

 試験官たちは小声で話し合い始めた。

「どうする……?」

「予備を持ってこい!」

「いや、下手に触らせるな……!」

 なんでだ。

 俺、何もしてない。

 すると一人の老人試験官が、 真剣な顔でこちらを見た。

「少年」

「……?」

「今、  意図的に魔力を抑えたか?」

「しらない」

 本当に。

 だが老人は深く頷いた。

「なるほど……暴走を防いだのだな」

 違う。

 むしろ暴走した。

 すると周囲の受験生までざわつき始める。

「抑えてあれ……?」

「化け物かよ……」

「いやでも魔力を感じなかったぞ……」

 俺も感じてない。

 というか帰りたい。

 ◇

 その後。

 急遽、 実技内容が変更された。

「次は戦闘技能を見る!」

 えぇ……。

 やりたくない。

 かなり。

 試験官が木剣を配り始める。

「模擬戦形式だ!」

 嫌な予感しかしない。

 俺は木剣を見つめた。

 重い。

 疲れそう。

 すると。

「ふん」

 隣の受験生が鼻で笑う。

 金髪の少年だった。

 なんか偉そう。

「噂ほどでもなさそうだな」

 知らん。

 その噂、 俺も困ってる。

 少年はニヤリと笑った。

「俺はアルト。  剣術首席候補だ」

 へぇ。

 すごい。

 でも興味ない。

 するとアルトは木剣を構える。

「本気で来いよ?」

「……やだ」

「は?」

 本音だった。

 戦いたくない。

 疲れるし。

 だが試験官が叫ぶ。

「始め!!」

 終わった。

 アルトが突っ込んでくる。

 速い。

 普通に強そう。

 怖。

 俺は反射的に後ろへ下がる。

 すると。

 ツルッ。

「!?」

 アルトの足が滑った。

 バランスを崩す。

 さらに。

 ブンッ!!

 振った木剣が手から抜けた。

 飛んでいく。

 そして。

 カンッ!!

 訓練場の鐘に直撃。

 ゴォォォン!!

 大音量。

 しーん。

 全員が固まった。

 俺も固まった。

 ……えぇ。

 アルトは地面に倒れたまま、 呆然としていた。

「な、なにが……」

 知らん。

 俺も知りたい。

 だが試験官たちは震えていた。

「剣圧だけで……」

「距離を取らせ、  武器まで弾き飛ばした……!?」

「しかも最後は降参の鐘を……!」

 違う。

 全部事故。

 偶然。

 むしろ被害者寄りだと思う。

 しかしアルトが、 青ざめた顔でこちらを見る。

「お、お前……」

 やめて。

 その目やめて。

「俺に恥をかかせないよう、  わざと傷一つつけずに……?」

 違う。

 勝手に転んだだけ。

 俺は心底疲れた顔になった。

 ◇

「勝者、レイ!!」

 やめて。

 勝ってない。

 何もしてない。

 だが観客席は完全に盛り上がっていた。

「すげぇ……!」

「見えなかったぞ……!」

「王女殿下が注目するだけある……!」

 うわぁ。

 最悪。

 かなり目立ってる。

 そして遠くでは。

 王女がキラキラした目で拍手していた。

 やめてほしい。

 本当に。

 俺は静かに思った。

 ……もう帰って寝たい。

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