静かに終わってほしかっただけ
魔力測定水晶。
破壊。
最悪だった。
会場はまだざわついている。
「王国製だぞ……?」
「歴代でもこんなの……」
「まさか測定不能クラス……!?」
違う。
たぶん壊れてた。
古かったんじゃないか。
そういうことにしてほしい。
かなり。
◇
「し、静粛に!!」
試験官が慌てて叫ぶ。
だが声が少し裏返っていた。
完全に動揺している。
俺も動揺してる。
試験官たちは小声で話し合い始めた。
「どうする……?」
「予備を持ってこい!」
「いや、下手に触らせるな……!」
なんでだ。
俺、何もしてない。
すると一人の老人試験官が、 真剣な顔でこちらを見た。
「少年」
「……?」
「今、 意図的に魔力を抑えたか?」
「しらない」
本当に。
だが老人は深く頷いた。
「なるほど……暴走を防いだのだな」
違う。
むしろ暴走した。
すると周囲の受験生までざわつき始める。
「抑えてあれ……?」
「化け物かよ……」
「いやでも魔力を感じなかったぞ……」
俺も感じてない。
というか帰りたい。
◇
その後。
急遽、 実技内容が変更された。
「次は戦闘技能を見る!」
えぇ……。
やりたくない。
かなり。
試験官が木剣を配り始める。
「模擬戦形式だ!」
嫌な予感しかしない。
俺は木剣を見つめた。
重い。
疲れそう。
すると。
「ふん」
隣の受験生が鼻で笑う。
金髪の少年だった。
なんか偉そう。
「噂ほどでもなさそうだな」
知らん。
その噂、 俺も困ってる。
少年はニヤリと笑った。
「俺はアルト。 剣術首席候補だ」
へぇ。
すごい。
でも興味ない。
するとアルトは木剣を構える。
「本気で来いよ?」
「……やだ」
「は?」
本音だった。
戦いたくない。
疲れるし。
だが試験官が叫ぶ。
「始め!!」
終わった。
アルトが突っ込んでくる。
速い。
普通に強そう。
怖。
俺は反射的に後ろへ下がる。
すると。
ツルッ。
「!?」
アルトの足が滑った。
バランスを崩す。
さらに。
ブンッ!!
振った木剣が手から抜けた。
飛んでいく。
そして。
カンッ!!
訓練場の鐘に直撃。
ゴォォォン!!
大音量。
しーん。
全員が固まった。
俺も固まった。
……えぇ。
アルトは地面に倒れたまま、 呆然としていた。
「な、なにが……」
知らん。
俺も知りたい。
だが試験官たちは震えていた。
「剣圧だけで……」
「距離を取らせ、 武器まで弾き飛ばした……!?」
「しかも最後は降参の鐘を……!」
違う。
全部事故。
偶然。
むしろ被害者寄りだと思う。
しかしアルトが、 青ざめた顔でこちらを見る。
「お、お前……」
やめて。
その目やめて。
「俺に恥をかかせないよう、 わざと傷一つつけずに……?」
違う。
勝手に転んだだけ。
俺は心底疲れた顔になった。
◇
「勝者、レイ!!」
やめて。
勝ってない。
何もしてない。
だが観客席は完全に盛り上がっていた。
「すげぇ……!」
「見えなかったぞ……!」
「王女殿下が注目するだけある……!」
うわぁ。
最悪。
かなり目立ってる。
そして遠くでは。
王女がキラキラした目で拍手していた。
やめてほしい。
本当に。
俺は静かに思った。
……もう帰って寝たい。




