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静かに暮らしたいだけなのに周囲が俺を天才扱いしてくる  作者: 花梨


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10/16

落ちたかっただけ

 王女が帰ってから数日。

 家の空気がおかしかった。

「レイ、王都ではどんな生活したい?」

「制服、何着必要かしら♡」

 完全に、 学園へ行く前提で話が進んでいる。

 違う。

 俺はまだ諦めてない。

 落ちればいいんだ。

 試験に。

 それなら王都へ行かなくて済む。

 静かな生活継続。

 完璧だった。

 ◇

 そして。

 入学試験当日。

 王都。

 人。

 多すぎる。

「うっ……」

 俺はすでに帰りたかった。

 巨大な門。

 豪華な建物。

 騒がしい受験生たち。

 全部疲れる。

「レイ〜♡ 頑張ってね♡」

「力を隠しすぎるなよ!」

 両親はやる気満々。

 違う。

 今日は落ちに来た。

 本気で。

 すると。

「まあ!」

 聞き覚えのある声。

 嫌な予感。

「来てくださったのですね!」

 王女だった。

 なんでいるの。

 しかも周囲がざわつく。

「王女殿下……!?」

「誰だあの子……」

「まさか特別推薦……?」

 やめて。

 目立ちたくない。

 かなり。

 王女は嬉しそうだった。

「あなたの活躍、  とても楽しみにしておりますわ♡」

 落ちる予定なんだけど。

 ◇

 試験会場。

 まずは筆記だった。

「……」

 俺は問題を見る。

 普通。

 たぶん。

 でも満点取ったら目立つ。

 だから。

 適当に間違えよう。

 それでいい。

 俺はわざと簡単そうな問題を外し始めた。

 これなら自然に落ちるはず。

 完璧。

 ――だったのに。

「試験終了!」

 試験官たちが答案を回収していく。

 その途中。

 一人の試験官が、 俺の答案を見て止まった。

「……ほう」

 嫌な予感。

 かなり。

 試験官は震える声で呟く。

「わざと初歩問題だけ外している……?」

 やめろ。

「応用問題は全問正解……だと……!?」

 周囲がざわつく。

 違う。

 偶然。

 いや違うな。

 これは普通にミスった。

 なんでバレるんだ。

 試験官は真剣な顔だった。

「基礎を解く時間すら惜しみ、  効率を優先したのか……!」

 違う。

 落ちたかっただけ。

 すると別の試験官まで頷き始める。

「しかも答えの書き方が簡潔すぎる……」

「無駄が一切ない……!」

 やめて。

 褒めないで。

 俺は静かに頭を抱えた。

 ◇

 次は実技試験だった。

 広い訓練場。

 受験生たちが並んでいる。

 試験内容は単純。

 魔力測定。

 まずい。

 俺、自分の魔力とか知らない。

 そもそも使った覚えないし。

 すると試験官が説明を始めた。

「この水晶へ手を置け」

 嫌だなぁ。

 本当に。

 俺の番が近づく。

 帰りたい。

 かなり。

「次!」

 終わった。

 俺は重い足取りで前へ出る。

 そして。

 そっと水晶へ触れた。

 ――その瞬間。

 ピキッ。

「……?」

 ヒビ。

 次の瞬間。

 バキィィン!!

 水晶が砕け散った。

 しーん。

 会場が静まり返る。

 俺は固まった。

 ……え。

 なんで?

 試験官たちは顔面蒼白だった。

「ま、魔力測定水晶が……」

「王国製だぞ……!?」

「ありえん……!」

 いや知らん。

 むしろ俺が知りたい。

 すると遠くで、 王女が目を輝かせていた。

「やはり……!」

 やめて。

 本当に。

 俺は悟った。

 落ちるの、 無理かもしれない。

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