『忘却の都市』 崩れる秩序
——突如、爆発音が響いた。
次いで、施設内部にサイレンが響く。
「緊急事態発生、緊急事態発生。施設内部のスタッフは直ちにデータを取り出し、避難を行ってください。」
『神崎 怜奈』は、この都市に来て、初めて“異音”を聞いた。
全身が硬直する。
しかし、その中で遠くから声が飛んできた。
「怜奈!早くデータを移してこちらに来なさい!」
工藤先輩の声だった。
パニックになりながらも、怜奈は必死に専用端末へとデータを移していく。
——手が震える。画面が滲んで見えた。
画面の進捗バーがじわじわと埋まる。
そして、完了と同時に—— 再び複数回衝突音が響いた。
施設内部に、怒号と焦燥が、壁を伝って施設中に広がっていく。
「一体何が起きてるんだ——!」
「何番の暴走だ!?監視員は何をしている!?」
怜奈はその言葉の意味を理解できなかった。
しかし、動かなければならない。
なんとか立ち上がり、工藤のもとへと向かう。
「何が——何が起きてるんですか!?」
息を切らしながら尋ねる。
工藤は短く答えた。
「……分からない。でも、確実に“何か良くない事”が起きてるわ。」
その言葉の奥にあるものを感じながら、怜奈は息を詰める。
「こっちだ!」
別の声。
振り向くと、田中先輩が立っていた。
「このエレベーターで地下に避難する。混み合う前に先に移動しよう。」
冷静な指示。
怜奈はその声に導かれるように、足を動かした——。




