『忘却の都市』 本部
現場に到着すると、都市中央にそびえる白く大きな建物が目に入った。
そこは“本部”と呼ばれる、この都市の中枢。
——その入り口が、吹き飛んでいた。
破片が散乱し、瓦礫が周囲に広がる。
恐らく、先ほどの爆発音の原因だろう。
周囲では夏希が動いていた。
負傷者の搬送、逃げる住民の誘導——
その的確な動きのおかげで混乱は最小限に抑えられていた。
「何か手伝えることはあるか?」
俺が声をかけると、彼女は驚いたように振り向いた。
「あれ?なんでここにいるの?」
短く言い、視線を向ける。
「さっきの5人は?」
「城戸隊長が、ここは任せて夏希のサポートに向かうよう指示された。」
その言葉に、夏希はわずかに眉をひそめる。
「……隊長は、自分のことを歳だとかなんとか言いながら、こういう時に真っ先に現場に来るタイプなんだけどな。」
夏希は少しだけ疑問を抱いたようだったが、すぐに考えを切り替えた。
「それはそれとして——住民の避難案内を手伝って。」
俺は頷く。
その流れの中で、夏希から現状について説明を受けた。
「爆発を起こした犯人を、警備隊の2名が追跡している。」
「その2名は大丈夫なのか?」
「隊長自らがこの本部の近くに配置させていた人たちだから、裏切る可能性はほぼないと思う。」
その言葉に少し安心する。
「他の隊員は?」
「残りの2名についても恐らく問題はないよ。都市全体の他の場所で2次トラブルが発生しないように見回りに行ってる。」
……つまり、警備隊員7名全員に裏はないということになる。
夏希は端末を操作しながら続けた。
「私はこの場がもう少し落ち着き次第、建物の中に向かうよ。分かってると思うけど、君はこの場を引き続き見張ってて。」
その言葉に、霧崎は静かに息をついた。
——この都市の均衡が、静かに、しかし確実に崩れ始めていた。




