『忘却の都市』 扉の向こうに立つ者たち
扉が開く、その瞬間。
田中と工藤は反射的に動いた。
警戒と覚悟に満ちた動きで、エレベーターの中へと突進しかける。
——だが、そこに立っていたのは。
「……えっ?」
驚愕が、全員の動きを止めた。
中にいたのは——神崎凛と進藤夏希だった。
あまりに予想外の光景に、沈黙が場を包み込む。
一瞬、誰もがその現実をうまく受け入れられず、言葉を失った。
その沈黙を、最初に破ったのは——やはり彼だった。
「お! なんだか久しぶりだな!」
悠人が屈託なく手を振り、笑顔で声をあげる。
「思ったより元気そうで安心したよ! 夏希さんも無事で……よかった!」
その明るさに空気が和らぐ——はずもなく、田中も工藤も、ただ呆然と立ち尽くしていた。
ついていかない思考に、声が追いつかない。
やがて、工藤が何度か深呼吸を繰り返した後、ようやくかすれた声を搾り出す。
「……あなたたちは……どうして……? 城戸は……どうなったの?」
現実感のない問い。 だが、それは当然だった。
——たった今、このふたりが“城戸と共に意識を手放した”と確信していたのだから。
対する夏希は、落ち着いた口調で返す。
「城戸隊長は……まだ、上にいます」
その余白を埋めるように、神崎が言葉を継いだ。
「……もし、何かできることがあれば—— 一緒に来ていただけますか。詳しい説明は、移動しながら話します」




