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『忘却の都市』 黒き再起動
——おかしい。
田中と工藤の脳内に、同時に警鐘が鳴っていた。
他の研究員が下層に降りてくる予定はない。
外部の者が訪れるには、あまりにも早すぎる。
では、一体——誰が。
「二人とも、私たちの後ろに下がって!」
工藤の声が鋭く響き、怜奈と悠人が反射的にその背後に身を寄せる。
——まさか。
田中の脳裏をよぎる“最悪の可能性”。
万が一とは言った。だがそれは、文字通り“万に一つもない”と思われたはずだった。
殺人という最も重い罪を背負った者。
人工AIによって記憶の奥底に封じられていた者。
——その解放は、どれだけ早くても数時間、長ければ数日間の混濁を伴うはず。
だが——
(……あの男なら、やりかねない)
この都市の“例外”として存在し続けた、制御不能な男。
田中と工藤は、一瞬だけ視線を交わす。
無言のまま、同じ行動を取ることを確認した。
扉が開いた瞬間、突入者の動きを封じる。
その隙に、怜奈と悠人を強制的にエレベーターに押し込む—— それが、唯一の選択肢だった。
そして——
ギィィィィ……ガタン。
金属が擦れる音とともに、エレベーターが停止する。
わずかな間のあと、ドアが開き始める。
その先に——
“その人物”が、立っていた。




