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忘却の都市  作者: HANA
終焉の扉
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126/152

『忘却の都市』 決意の分岐点

「……俺も、最初はこの都市が“素晴らしい場所”だって思ってた」

続けて、静かに、けれど力を込めて声を発したのは悠人だった。

「キレイで、安全で、何でも揃ってて……完璧に見える場所だった」

彼の言葉に、室内の空気がふと和らいだような気がした。

「でも、実際に過ごしてみると……なんか皆、親切なんだけど、どこか作られた表情っていうか……。 うまく言えないけど、人間味が、希薄なんだ」


誰も言葉を挟まない。ただ、彼の言葉に耳を傾けていた。

「城戸って人の考え方、まったく理解できないってわけでもない。俺もついこの間まで都市の外にいたから分かるんだ。どうしようもない人間も、確かにいる。 反省しない奴、自分の行動に責任を持たない奴。いるよ、そりゃ」

「でも……だからって。 誰かに従わされて償わせられるんじゃなくて—— そいつ自身が、罪を認識して、どういう形であれ自分の意志で償うべきなんだと思う」

その声には、都市での生活を通して育まれた違和感と、確かな実感が込められていた。


その言葉を聞き終えると、工藤はふいに立ち上がった。

視線を夏希に向ける。

「進藤夏希」

呼ばれた名前に、夏希は背筋を伸ばす。

「——あなたは、どう思う?」

唐突な問いに、言葉が詰まりそうになる。

だが、心の奥に芽吹いた声を、少しずつかたちにしていく。


「……正直、怖いです」

震えるような声で、それでも夏希は答えた。

「都市のみんなも、私自身も……システムが止まったらどうなるか、分からない。どれだけの人が、何を取り戻して、どうなってしまうのか……」

一度だけ息を吸い込む。


「でも……二人の話を聞いて、思いました。 やっぱり、罪は……犯した人間自身が、その責任を背負って生きるべきだって」

「今まで、私はそのことすら忘れて、普通に暮らしてきてしまってたんだから……。 これは、私達が支払うべき——代償なんです」

その言葉を告げるときには、夏希の目にはもう迷いはなかった。

まっすぐに、工藤を見据えていた。

工藤は三人を見渡す。

玲奈、悠人、夏希——それぞれの表情には違う覚悟が滲んでいた。


そして、静かに言った。

「……あなたたちの意見は分かった」

一拍置いて、肩をすくめる。

「残念ね。自分で、逃げる道を潰すなんて」

そのまま、ゆっくりと上着の内ポケットに手を入れる。

次の瞬間、夏希の身体が自然と反応した。

(まずい——)

身構え、立ち上がりかける。

「動かないで」

その声は、冷静でありながら鋭く、完全に“読まれていた”。

夏希の動きが、止まる。


工藤のは何かを取り出し、そっと——机の上に置いた。


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