表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却の都市  作者: HANA
崩れゆく中枢
PR
109/152

『忘却の都市』 拒絶の声

夏希の声が、空間の温度を変えた。

ずっと沈黙を守っていた彼女の声は、静かだったが、芯があった。

城戸がゆるやかに彼女へと視線を向けると、夏希は一歩前に出る。


「……本気で言ってるんですか?」


その声は、いつもの彼女とはどこか違っていた。

静かだが、鋭く冷えていた。

城戸は眉ひとつ動かさず頷く。

「もちろんだとも。私は、冗談でこんな提案をしているわけではない。」

夏希は視線を逸らさず、まっすぐに返す。


「“資格がある”って……つまり、被験者として記録され、操作されてきた私たちに—— 今度は“管理する側に回れ”ってことですか?」

淡々と投げかけられた言葉の奥に、怒りとも戸惑いともつかない感情が潜んでいた。

「私はあの日、父親を殺しました。 あれは……ああするしかなかったって、今でも思ってます。」

「でも、それが“適性”だなんて評価されて、次は都市の管理者になれって…… そんなの、納得できるわけがない。」

神崎も、夏希の言葉に続く。

「……俺も、妹を救うために二人の人間を殺した。でも、それが“正しい犯罪”だからって、誰かをコントロールする側になれって言われても—— そんな理屈、受け入れられるわけがない。」


その言葉に、城戸はふっと短く息を吐いた。

「……なるほど。やはり君たちはまだ“内側”に立っていない。」

その言葉には、どこか哀しさのような響きがあった。

「君たちが拒絶するのも、理解できなくはない。 だが、なぜそれを“拒絶できる”のか——考えたことはあるかね?」

神崎と夏希は言葉を失う。

「それは、君たちが真っ当な人間だからだ。だが世の中には、自分の罪にさえ気づかず、生まれてから死ぬまで他人を蝕み続ける者がいる。そんな者が、"普通の顔をして"この世界で暮らしている。」

言葉に力がこもる。

「君たちは、“わざと”誰かを傷つけたわけじゃない。君たちの罪は、“誰かを守った結果”だ。 理不尽な暴力に晒され、出口のない中で、その手に刃を握らざるを得なかった。」


城戸の声が、わずかに揺れる。

「そういう者にしか分からない責務がある。管理とは、命令することではない。“境界を決める”ことだ。 線のこちらとあちら、どちらに人を立たせるか。——それを判断できるのは、善悪の両方を知る者だけだ。」

そう言い切る城戸の目は揺ぎ無い意志が込められていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ