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『忘却の都市』 善なる幻想
城戸守は、静かにエレベーターから足を踏み出した。
その姿に、神崎の胸がざわめく。
——いつから気づかれていたのか。
背筋を冷たい汗が伝う。
だが、城戸はまるで全てを見透かしているかのように、表情ひとつ変えず、悠然と歩を進めてくる。
その沈黙の中で、彼は先ほどの問いの続きを——自らの“答え”として口にした。
「私は……信じない。」
その言葉は、静かに、しかし確実に場の空気を支配した。
「人間の本性が、生まれながらにして善であるのなら—— この世は、もっと平和だったはずだ。 そう、我々も……誰かを、この手にかける必要など、なかったのだ。」
神崎と夏希の目が、同時に見開かれる。
その意味に——気づいたからだ。
都市警備隊に選ばれる条件。
それは、“殺人を犯した者”であること。
つまり——彼もまた、同じ罪を背負った存在。
だが、城戸の語り口には、後悔も懺悔もなかった。
そこにあったのは、ただ—— 都市の現実を知る者としての、“静かな覚悟”だった。




