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天然ドジっ子座敷わらしは、恩返しのつもりで居座り中です〜俺の不運がさらに増してる気がするのだが!?〜  作者: 藤原 柚月


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正しいからこそ、冷たい【黎視点】

「雪だ……」


 透和が空を見上げて、呟いた。


「きれいですね! 透和様」


 里桜も声を弾ませている。


 俺様だけが、まだおばさんを見ていた。


 透和に聞いた話ではあるが、昨日は武器を向けてきて、殺されそうにもなったらしい。


 それなのに、今日は……何も無かったみたいに笑っていた。


 人間って、都合がいい。忘れて、笑って……それで終わり。


 それは、正しいことなんだろう。覚えたままだと、昨日の自分と今日の自分が並立できない。だから、忘れる。

 正しいからこそ、冷たい。


 俺様は、そうはいかない。


 透和の頭の上で、体温を感じる。とても温かい。


 だから余計に思い出す。


 俺様みたいな妖力が弱いやつは、かくりよじゃ生きられない。


 強いやつに捕食されるか、なぶり殺されるからだ。

 弱いやつが死ぬのは自然だ。自然は正しい。

 正しい世界では、消えても誰のせいにもならない。


 だから月影寮(つきかげりょう)がある。弱いやつの為の養護施設だ。

 管理してるのは、かなり妖力が強めな妖だ。あいつは弱いやつを襲わない。だから、安心してそこで百年ま(・)で(・)暮らせる。


 百年経てば追い出される。理由は簡単で、増えすぎると管理が難しくなるらしい。


 正しい保護と理由だと思う……だから、俺様を捨てても誰も悪くはない。


 うつしよでの生活も同じだ。弱い者同士が集まらないとならない。元々の能力や妖力が弱いのに加え、うつしよに行くとさらに弱くなってしまうから、一人だけだと長生きなんて出来ないんだ。


 だから隠れた施設で弱いやつ同士が集まって固まる。隠されて、いないものとして生き残る。それも正しい。


 俺様もその施設で他の妖と暮らしていたんだ。そしたら、いきなり舞とかいう変な女がやってきたんだ。


 視える人間に出会ったことなかった俺は、興味本位で近付いた。


 そしたら、いきなり睨まれ、舌打ちされた。


「寄らないでよ。妖とは関わりたくないのよ」

「俺様が何したっていうんだよ。ここが妖の住処だって知ってるよな」

「知ってるわ。ここには私のために来たのよ。仲良くするためじゃない」

「なっ!? 俺様だってお前みたいな冷たいやつとは仲良くしたくない!!」

「仲良くしたくないんだったら良かったわ。お互いに関わらなくて済むものね」


 正しい距離感だ。仲良くしない方が、お互いに楽に終わる。正しいから、むかつく。


 回し蹴りをお見舞いしてやろうかと思ったが、他の妖に止められた。


 それからしばらくして、俺様は舞を遠くから観察してて思った。


 口は悪いが、意外に良いやつだ。


 転んで起き上がれない妖を立たせてあげたり、雨で体が冷えている妖には、もふもふのブランケットを渡したりしていた。


 俺様は、お腹が空きすぎて動けないところをビスケットを落としていった。


 それでも、夜中に、唸って起き上がることがあった。


 過去に、妖との間に何かあったのだろう。だが、俺様は聞かなかった。


 そんな中だ、また人間がやってきた。今度は男と女の二人。


 舞は迷惑そうにしながらも部屋に入れる辺り、少しは仲の良い人かもしれない。


 男と舞は話をしてから、男は部屋を出ていった。


 人間の男は、舞と違って親しみやすい雰囲気があった。


 人間は、舞としか話したことなかった俺様は、その男に興味を持った。


 だから、後をつけてしまった。


 最初は驚いていた。当然だろう、下位種の俺様が、いきなり後ろをついてきたんだから。


 それでも、追い返さなかった。住んで良いと、言ってくれた。


 それだけじゃない。名前までくれたんだ。


 黎明の黎……。


 暗い夜が終わって、朝が始まる最初の光だと。


 俺様は、名前なんて持ったことがなかった。


 下位種に名前は無い。無いのが普通なんだ。普通は正しい。正しいから、消えても心に残らない。


 印象を強くするしか無いだろう。だから、俺様は「俺(・)様(・)」と自分で呼ぶようになったのは、正しさの中で少しでも残るためだ。でも、残ることはなかった。


 それが、たった一言で呼ばれる側になった。


 嬉しい。そんな言葉じゃ足りない。


 跳ねて、叫んで、一生ついていくと口にしていた。


 あれは、勢いで言ったんじゃない。


 かくりよでも、施設でも、俺様は弱い一匹だった。


 守ってもらえるうちはいい。百年経てば出される。正しいんだろう。正しいからこそ、何も残らない。


 透和は、正しくなんてなかった。


 弱いのに、それなのに視えるようになって……自分の事で精一杯なはずなのに、俺様を見てくれた。


 名前もくれた。居て良いと言ってくれた。


 一緒にいると、どうしようもなく楽しいんだ。

 理由なんて、自分でもうまく言えない。ただ、ここに居ていい気がする。


 俺様は、そういう場所を知らなかった。


 だから、決めた。


 透和が歩くなら歩く。止まるなら止まる。危ないなら、俺様の小さな体でも前に出る。


 この楽しい時間が壊れるのが嫌なんだ。


 雪はきれいだと、透和も里桜もそう言っている。人間たちは、昨日を正しく忘れている。正しい終わり方だ。

 正しい終わりが、この温かさを持っていく。


 だから思う。透和が人間じゃなく、妖だったら良かったのに……。


 そしたら、一生暮らせる。正しい側からしたら、これは冷たい願いだ。わかっている。それでも俺様は……温かい方を選ぶんだ。





黎が正しさに執着してるのは、正しさだけが弱い自分を生かす理由になっているからです。

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