表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然ドジっ子座敷わらしは、恩返しのつもりで居座り中です〜俺の不運がさらに増してる気がするのだが!?〜  作者: 藤原 柚月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/37

小さな妖達の優しさ

 里桜と黎には、お留守番してもらい、俺は勤務する。


 流石に加藤さんは今日は休みだ。それもそうだろう。眼鏡を俺が壊しちゃったのだから。


 運が良いことに今日は早めに上がれそうだ。


 仕事終わったら、一旦帰って里桜と黎を連れて舞のアパートに向かわないと。


 大丈夫だとは思うが、舞は口が悪いし、一回キレるとかなりの暴言を吐く。


 加藤さんは、落ち込みやすいタイプではあるから、舞の言葉に傷つかないと良いんだけど。


 そのかわり、立ち直りが早いんだけど、口論になってたら色々めんどうそうなんだよなぁ。


 ◇◇◇


「もう! なんでそんなこと言うんですか!!」

「は? 別に普通じゃん」

「ふ、普通なものですか!!」

「誰のせいだと思ってんのよ。そもそも、あんたの眼鏡が壊されて、妖が視えるからって急に預けられた私の身にもなりなさいよね」


 案の定だった。俺は舞のアパートの部屋前について、二人の会話を盗み聞きしていた。


 ピョコンっと定位置のように黎が左肩に乗っている。里桜は周りをキョロキョロしていて落ち着かない様子だった。


 深いため息をついた俺は、チャイムを鳴らす。


 しばらくしてから、玄関の扉が開いた。舞が不機嫌そうに「遅い!!」と怒鳴って来たので軽く謝罪して、中に入れてもらった。


「あっ、橘さぁぁぁぁぁん!!」


 加藤さんは俺を見るなり、涙目になる。


「舞……何言ったんだよ」

「何って……あれを見なさいよ」


 舞は呆れたように指をさした。


 俺はその方向に目を向ける。


 そこにはコップサイズの小さな妖が三匹いて、困り果てていた。

 テーブルの上にいる者は小さな角を一本生やしている。

 ソファの上にいる者は、古びた着物を着て、腰に小さな鈴をつけている。

 加藤さんの膝近くにいる者は、一つ目しかなく口はない。それでも心配そうに見ているあたり、優しい子なのだろう。


 その三匹とも、人間の姿に近いが、頭が少し大きめだった。


 その三匹の目線の先には加藤さんがいる。加藤さんは毛布にくるまって、頭を抱えてパニック状態だ。


 テーブルには、冷めきってるコーンスープが置いてある。

 小さい妖が少しでも動くものなら、悲鳴をあげる。


 これは……ちょっとした地獄絵図だな。


「目を覚ましてから、小妖怪を見た途端にずっとこれなのよ。だから、ついイラッとして言ったの。妖力が弱い妖に何怯えてるのよって……」

「うわぁ……」


 俺は呆れながらも引く。


 スマホを確認したら18時を回っていた。


 目を覚したらって、今は18時だぞ。


 加藤さんが涙声で言う。


「し、仕方ないじゃないですかぁ。私……妖、嫌いなんですもん。怖いんです!! 眼鏡があると、守ってもらってるという安心感から、ちょっと危ないことも出来たんです。でも……眼鏡が無いと、不安で怖くて……」


 確かに妖は怖いイメージあるもんな。

 どう宥めようかと思考していたら、舞が盛大にため息をついた。


「はぁ? ばっかじゃないの。怖い? えぇ、確かに妖は怖いわよ。でもそれがどうしたの。今いる妖はあんたに危害を加えたの? あんたが目を覚ますまで、この子達が何してたか知ってる? 心配して、何か役に立てないかと小さい体で必死だったのよ」


 舞は、加藤さんが被ってる毛布を指さした。


「あんたが被ってる毛布もここにいる小さな妖達が被せたんだから。そこにあるコーンスープ(インスタント)もお昼過ぎにこの子達が用意したのよ。見た目が妖だからって決めつけて勝手に敵視してんじゃないわよ」


 加藤さんは涙を流しながらも言い返す。


「な、何がわかるんですか!? 私は……小さい頃に妖に殺されかけたんです」

「だから何?」


 舞は腕組みする。


「私も、妖に殺されかけた過去ぐらいあるわ。だから、あんたの気持ちはわからなくもない。でもね……私は、ここにいる妖があんたがいつ目を覚ましても良いように。風邪をひかないようにって心配して、自分の体よりも大きい毛布を運んで、かけてあげたり、火傷をしながらも必死にお湯を沸かしたりしてたのよ。流石にお湯をスープカップに注ぐのは私がやったけど。それを……見てたのよ。だから、わかってあげなさいよ。この子達の努力を」


 加藤さんはハッとなって泣くのをやめた。


「別に妖が怖いとか、不安は否定はしない。私だってそうだもの。でもね。この子達の努力を否定しないことね」


 舞はフンっと、鼻で笑った。


 加藤さんは舞の言葉が届いたのか、鼻を啜り、涙を乱暴に拭いた。


 震える手でスプーンを受け取ると冷たいコーンポタージュを一口飲んだ。


「おい……しい」


 加藤さんがボソッと呟いた言葉を聞いて、俺は少し安心した。


「……そんな風に思ってるなら、もう少しはるとに対しても優しくしてあげても良かったんじゃないか?」



 舞はビクッと肩を跳ねらせた。しばらくの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。


「私は……いくら善意でやっていたこととはいえ、はるとのした事を許せるはずないわ。ただ、はるとの刻印のおかげで大蛇からの呪いを少しでも軽くしてくれてたことには感謝してる。でも……それでも、失った命は戻ってこないのよ」


 舞は下を向いて、悔しそうに唇を噛み締める。


 はるとが悪いわけじゃない。大蛇が悪いと俺は思うが、舞はそうは思わないらしい。


 結構過酷だったみたいだから、仕方ないといえばそうなんだけど。


「それで……?」

「ん?」

「壊れた眼鏡、どうするつもりよ」


 舞は息を吐き、気持ちを切り替えるように話題を変えてきた。


「ああ、神様にお願いしてみるよ」

「神様?」

「そっ。この間知り合ったんだ。緋色って言うんだけどな」


 舞はチラッと俺を見た後、すぐに目を逸らした。


「そう。まぁ、眼鏡が直ってくれれば少しは落ち着きを取り戻すだろうし。私にこれ以上迷惑かけなければそれでいいわ」


 うーん。


 眼鏡を直しても、迷惑かけそうな未来が見える。というのは黙っておこう。


 加藤さんがボソッと「ごめんなさい」と呟いたのを俺は聞き逃さなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんかこう……大作になっていますよね。 名作になりそうな予感します。 しっかりとしたドラマ展開。キャラクターたちの読み切れない心模様。 ひきつづき読んでゆきましょう(*^-^*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ