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【連載版】不運が続く俺の元に座敷わらしが嫁候補として居座っているのだが  作者: 藤原 柚月


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緋色の最悪な妙案

 一清が仕事から帰ってくるのは遅くても夜の九時だ。

 そこからはずっと家で、一人で話している。


 外から見えるカーテン越しのシルエットは一人だ。なのに笑い声が漏れている。楽しそうに……誰かと会話しているような……そんな声で。


 それを見る度に心の奥が痛くなる。


 それ以上に俺自身も心配なことがある。


「ストーカーみたいじゃん!!」


 俺は、一清の大体のルーティンをメモったノートを地面に叩きつけた。


 一清の動向を探ろうと、メモしたのだ。


 一清の家から数メートル離れている電柱の影に隠れているのだが、やってることがストーカーのそれみたいで鳥肌が立つ。


 里桜は叩きつけたノートをひょいっと拾い上げ、埃を落とす。


「お姉さんが以前言ってました! 人間のストーカー行為は愛情表現の一つだって。好きだからこそ、なんでも知りたいからつきまとうんだって」

「いや、そんな純粋なものじゃないからね! ストーカーは良い意味ないからね!!?」


 俺の声が大きかったのか、一清が窓を開けて外を確かめた。


 咄嗟に俺は電柱の影に隠れ直す。


 キョロキョロと見渡した一清は「気のせいか?」と小さく呟いてから窓を閉めた。


 気付かれなかったという安堵で大きくため息をついた俺は、ズルズルと電柱を背に座り込む。


「……コソコソするのが嫌なら直接聞いてしまえばいいのに」

「そうだけど……そうなんだけどな、聞きにくいものってあるだろ」


 そもそもなんて聞けばいいんだよ。


「なんじゃ、そんなことか。安心せい。方法なら妾が用意した」

「うわっ!!?」


 居るのは、俺と里桜の二人だけだと思っていたが、いつの間にか緋色がいた。


 しかも俺の隣に立っていた。全然気配を感じなかったから驚いて頭を強く電柱に当たってしまった。


 コンッ!!


「ぐっ……!」


 鈍い痛みが脳天に響く。声にならない悲鳴を必死に飲み込んだ俺を、緋色は涼しい顔で見下ろしていた。


「大袈裟じゃのぅ。そんな驚くことではなかろうに」

「驚くだろう。いきなり現れれば……それよりも方法って」

「妾がお前にしたことを思い出すのじゃ」


 思い出すって言われても……。

 したことって、勝手に人の金を使って酒を買い占め、酔い潰れるぐらいまで呑んで……はっ!!!


「俺の金返せよ! 神様がそんな横暴なことしていいのかよ。確かに踏んだのは俺が悪かったが、だからといってこんなこと許されるわけないだろ!!」

「思い出すの、そこ!? その前に入れ替わったことをじゃな……」

「俺にとって、入れ替わりよりも金を勝手に使われたことがショックなんだよ」

「そ、それはすまん。だって我慢できなくて、つい」


 何が『つい』だ!

 クソッ。思い出したら腹が立ってきた。


 しかもこいつが俺の体で醜態を晒したせいで、新入社員には軽蔑され、避けられてるんだぞ。

 幸いにも周りに噂が広まってないけど。


 見られたのが、噂を広める子じゃなかっただけありがたい。


 でも、そんなことをやっている場合ではないのはわかってるから、必死に怒りを抑える。


「その話は、後にして……入れ替わりって、また俺と緋色がするのか? でもそんなことしても無駄だとは思うが……」

「いや、入れ替わるのは妾じゃない」


 緋色の言葉を聞いた瞬間、空気が変わった。


 温度が一気に下がるような、肌を刺す冷たさ。

 虫の声すら止み、夜の湿った空気が急に重くなった。


 心臓の鼓動が早くなる。


 緋色の背後──影の濃い部分から、ゆっくりと人影が浮かび上がる。


 最初に目に入ったのは、青白い肌だった。

 血の気というものがまるで感じられない。陶器のように滑らかで冷たい色だ。


 長い髪が、まるで水の中で揺れるようにゆらゆらと漂っている。


 その顔は、一清が見せてくれた写真の女性と瓜二つだった。いや、おそらく本人だろう。


 ただ、写真の中の彼女は柔らかく微笑んでいた。

 今、目の前にいる彼女は……、悲しそうにしていた。


「……っ」


 俺は息を詰めた。


 彼女の体は、胸から下にかけてぼんやりと透けていて、向こう側の夜の景色がうっすらと見えていた。

 足元に至ってはほとんど輪郭が溶けていて、地面に触れているのかいないのかも分からない。


 霊体──それも、かなりはっきりとした強い念が残っている霊だ。


 彼女はゆっくりと頭を下げた。


 頭を上げた彼女は、寂しそうな微笑みを浮かべたまま、俺を……いや、俺の背後にいる緋色を見つめている。


 ゾクッと背筋が凍りつくような感覚が、全身を駆け巡る。


 俺は無意識に後ずさろうとして、電柱に背中を強く打ちつけた。


 緋色はそんな俺の様子に気付いていないのか、胸を張った。


「なかなかいい案じゃろう! まぁ相手が霊体じゃ。入れ替わりでも、お前の魂が入れる器はない。だったら、お前の魂をそのままに一清の妻をお前の中に入れてしまおうと思うんじゃ!」


 サァーっと冷たい風が吹く。

 周りも静かだから、緋色の声が響く。


 堂々とドヤリ顔で言うものだから、一瞬思考が停止してしまった。


 それってつまり……。


 取り憑かせるってことじゃねぇか!!?



私、ホラーが大好きなんですよ。グロ系から霊的なものまで。


それで、自分も書きたくて緊張感溢れる地の文を学んでる途中ではあるのですが、まさか活かされる日がくるとは思わなかったです(笑)


霊系のホラーって難しくて書いては消しての繰り返しだったので、一生世に出せない気がしてたのですが、こんな形で描写を書くとは思わずに……気合いを込めて書きました←


楽しかったです(笑)

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― 新着の感想 ―
最後まで読ませていただき、本当にありがとうございました。とても深く優しい物語で大好きでした。
コメディとホラーは紙一重。この感覚って貴女にある? いや、なくても別にいいものだけど(#^.^#) 僕が心得ているっていうか、よく考えるテーマでそんな何かを感じられたお話でした。読んでいて楽しかっ…
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