第二話:適正
信託を受けに近くの町「イニチア」の教会へ行ったメイ。
信託を受け取り一目散に両親の待つ家へと帰るのだった。
そんなメイを見送るように視ていた信託者の彼女…。
メイは信託のプレートを抱え家へと来た道をかける、そう遠い距離ではないが足が止まった。
「はぁ…はぁ…。ん、あれなんだろう?」
茂みのそばに一羽の黒い雛がうずくまってふるえていた。メイは雛に近寄り、辺りを見渡す。辺りに雛の巣のようなものはなかった。いったいどこから来たのだろうと不思議に思うメイ。
雛を持ち上げると、何かで切った様な傷跡と血が出ていた。信託のプレートに乗せて家へと急ぎ向かう。
家に到着しドアを開けると、両親が待っていた。
「おかえりなさい、メイ」
「おかえり、早かったじゃない」
メイを出迎えた二人は、メイの手元に目が行き驚く。
「メイ…、その雛どうした」
雛をテーブルに乗せメイは怪我をしていることを話す。
ライカが治癒魔法“ハイ・ヒール”を施す。
雛は落ち着き眠った。メイは心配そうに見つめる。
「きっと疲れているのよ。今は寝かせてあげましょう」
メイは雛の頭を優しく撫でた。
「そういえばメイ、信託はどうだった」
トドロキの言葉でメイが思い出したように、二人にプレートを持って二人者へ、画面は雛の血で赤く染まってしまった。トドロキが受け取った。
「これじゃ見れんな。血を洗いながさねぇと」
「あら、ほんとね」
二人がプレートを覗いたとき、一瞬黒く歪んだ字で“天災”の文字が浮かび、消えた。
二人は驚き動揺した。そんな二人を見上げるメイが不思議そうに聞いた。
「ねぇ、どうしたの?」
「あっ…、ああなんでもないぞ」
そう言ってプレートの血を洗い流しに行った。
「ねぇ、実はね、まだ僕も見てないんだ。お母さんとお父さんと一緒に見たくって」
ちょっと照れくさそうに二人を見つめる。二人は同じくらい嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「それじゃあ、一緒に見ないとな」
「そうね。メイはどんな信託をもらったのかしらね」
三人でプレートを覗き込むと。……“雷皇”……。
浮かび上がったそれはトドロキもライカも知らない信託であった。
「ねぇ、これ何て読むの?」
メイは何なのか聞いた。
「これはね、“らいてい”って読むのよ」
「らいてい?」
メイは聞き返した。ライカはうんとうなずいた。
しかし、この信託が何を案じているのかがらからない二人…。
この世界には魔法が存在する。それは炎、氷、風、地、光、影の6種類。または魔術と言われる代々伝承されているその一族のみ使用できるものしかないのだ。
その魔法に優れた者に皇帝の位が存在している。だが“雷”という魔法属性は存在せず、雷は自然怒る天候なのだから。
そんな信託がなぜあるのかと二人は戸惑っていた。
何やら難しそうにしている二人を視てメイが不安そうに話しかけた。
「僕の、わるい信託だったかな…」
二人はメイの言葉を聞き我に返りメイに弁解する。
「そんなことないぞメイ、これはきっとすごい信託だ」
「そうよ。頑張ればきっと皇帝様になれるのよ」
「僕が、皇帝に …?」
皇帝というものがあまりピンとこないメイ。
「皇帝っていうのはね、魔法の王様みたいなものよ」
「魔法の王様」
メイは目をキラキラさせ、喜んだ。
この日夜は、豪勢な食事と家族三人の賑やかな笑い声が響いた。こんな幸せが続くのだとメイは思っていた。
……だが、世界は非情であった…。
みんなが寝静まったころ、空は荒れ始め雷が響く。
「ゴロォォ……ゴロォォ………ズドォォォォン」
落雷の凄まじい音に皆が目を覚ました。メイは怖くなり二人のもとへと行こうと一緒に寝ていた雛と眠そうに向かった。
部屋の扉を開け、出たその時…。
「ドンガシャァァン…」
「バリバリバリ…」
「う“わわわゎゎー……」
家に何かとてつもなく大きなものが落てきて家を押し潰した。メイは落ちてきたものの風圧で崩れた壁と一緒に外へ吹き飛ばされていた。
「うっ……お母…さん…お父…さん…」
ひどい痛みの中二人を呼ぶメイが家の方を見ると、跡形もなく崩れ去っていた。
そしてそこには、巨大な竜のような姿がぼんやりと見え、意識を失った。
「グゥゥルルァァァァ」
竜は咆哮をし、空に“竜のブレス”を放つと雲が裂け天候が変わり大地は揺れ町まで響いた。
竜は飛び立ち姿を消した。
「んん…んぅぅ」
メイが目覚めるとそこは知らないベッドで知らない部屋だった。
ここはどこだろう。そう思っていると隣の部屋から一人の女性が出てきた。
「メイ…ちゃん」
どこか見覚えのある女性は手に持っていた物を落とし、メイに勢いよく抱き付き涙を流した。
「よかった……本当によかった…」
「お母さんとお父さんは?」
彼女は涙を浮かべながら、「ごめんね」と何度もささやいた。
メイは疲れきるまで泣き、また眠りについた…。
それから8年の時が流れた。メイは18歳になり都市にあるエリクス学院に入ることを決意した。




