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空羽ばたく光の影  作者: R-so
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第一話:誕生

西3588暦年5月、空、暗く覆われ雷鳴響く日に小さな町の少し離れた丘にたたず家で数人の大人に囲まれ、一人の男の子が生れた。


「……オギャー、オギャー」


周りの大人たち心配そうに見つめていたが、赤子が産まれ歓喜している。


「ライカ、元気な男の子だぞ。よく頑張ったな」


その赤子の父トドロキが語り掛ける。


「はぁ…はぁ……、可愛い子…」

「名前は決めているのかい?」


出産に携わっている一人の女性が問う。


「はい…、〝メイ〝に決めています。」


ライカは答えメイを胸元に寄せ抱きかかえた。

この日生れた子が後に世界を揺るがすとは、まだ誰も知る余地もない。

それから10年の時が流れ、メイは両親と共に平和な日常を過ごしていた。


「メイ、もう少しで信託の儀だな」


トドロキがおもむろに話し出した。


「思えばお父さんもメイと同じ年に受けもんだ」


思い出に浸るそんなトドロキにライカが言った。

 

「あなた、そんなに良い信託受けてなかったじゃない。」

「う…うるせぇ。いいじゃねぇか、その分努力して上り詰めたんだからよ」


トドロキは一般的な信託だった。しかし、現在は世界に数少ない聖騎士(パラディン)の信託を受けている。魔導騎士である。

 

「あらあら、慌てちゃって、うふふ。」


からかっているライカは聖女の信託を持つ魔導士である。

そんな二人の子供がメイである。

 

「父さんも母さんも、すごいからきっと僕もすごい信託をもらえるよ」


メイは両親を尊敬している。自分も両親みたくなりたいと想っているのが伝わってくる。

そんなメイを見て、両親は微笑んだ。

 

「そうだな、お前は母さんに似ているから、きっといい信託をもらえるだろうな」

「ふふ、そうね、でもね、どんな信託が来ても、あなたの頑張り次第でどこまでも成長できるのよ。あな たのお父さんがそうだったようにね」


ライカは優しく撫でながらメイに話した。

 

「うん」


メイはライカに抱き付いた。トドロキはその光景を嬉しそうに眺めている。

 

「さぁ、そろそろ寝る時間よ。明日はいつもより早く起きないと」


ライカはそう言ってメイを寝室の方へ優しく押した。

 

「はーい。父さん、母さん、おやすみなさい」

「おう、おやすみメイ」

「はい、おやすみなさい、メイ」


こんな日常が当たり前だった。この日常がいつまでも続くものだと誰もが想っていた。だが終わりは突然だった…。

翌朝、メイはいつもより早く目が覚めた。外は陽が昇り始めまだ低く、家の周りの木々は陽の光に当たり青々と輝いて見える早朝である。

 

「んっ……、ふぁ~。」


身体を伸ばし、少し眠そうにベッドから起き上がりリビングの方へと歩む。

 

「あら、おはよう、メイ」


ライカは朝食の準備をしていた。テーブルには朝食が3人分用意されている。メイがいつも見る光景だ。しかしいつもと違う点があった。それは父の姿がまだなかった。

 

「ふぁ~。おはよう母さん、父さんは?」


メイは眠そうに聞いた。

 

「お父さんならまだ眠っているみたいよ」

「昨日メイが寝た後にお酒いっぱい飲んだみたいなのよ」


トドロキはお酒には弱いが嬉しいことがあった時や、お祝いの時に飲むそうで、飲んだ次の日はいつも遅く起きてくる。

「朝ごはんもう少しで出来るから起こしてくれるかしら?」

「はーい」


そう返事をしてトドロキが眠る寝室へと向かう。寝室の扉を開けると、ベッドの上で体を伸ばしているトドロキの姿があった。

 

「おはよう、父さん」

「ん?…おう、メイか、おはよう」

「朝ご飯もうすぐ出来るよ」

「わかった、すぐ行く」


メイは寝室の扉を閉めて、リビングへと戻って行った。ライカが椅子に座って待っていた。

 

「お父さん起きたかしら?」

「うん、すぐ来るって」

「そう、じゃあ先に食べてましょうか」


メイは椅子に座りライカと先に食事を始める。そこにトドロキが遅れてやって来た。三人は他愛のない会話と朝食を楽しんでいた。


「ごちそうさま」


メイは先に朝食を食べ終わった。そろそろ信託を受けに行く時間だった。家族の時間はいつもあっという間に過ぎていく。


「そろそろ行ってくるよ」

「気をつけて行くのよ」

「町まで送ってやろうか?」

「ううん、大丈夫一人で行けるよ」


ライカとトドロキに見送られながら、メイは家を飛び出して町〈イニチア〉へと向かった。

町の中央には小さな教会が建っていて、信託は教会で受け取られる決まりだ。メイが教会に着くと既に多くの人が集まっていた。信託を受ける者、それを見守る者たちだ。メイは一人信託を待つ列に並んだ。

 

「おい、あの子って…」

「ねぇ、あの子が例の……」


周りの大人達がざわついている。この町でメイを知らない者はいない。聖騎士と聖女を親にもつのだから。

ざわつく周りの視線が幼いメイに集まる。メイはうつむき服の裾を強く握った。

教会の鐘が鳴り響き、扉が開く。中にはフードを被った一人の信託者がいた。

 

「これより信託を授与します。子供らよ、一人ずつ私のもとに来るのです。」


透き通った声は、下を向いた顔を上げさせた。メイだけではなく、周りの大人たちも彼女の声に心打たれ言葉をなくし見つめた。

 

「さあ、順番にいらっしゃい」


その声に誘われるように、一人ずつ彼女のもとへと歩んでいった。


信託は本人と本人が了承した者にのみ見ることができる。受け取った信託を両親に見せ喜んでいる姿がメイの視界に入る。メイは羨ましそうな表情を浮かべた。

そしてメイの順番がやって来た。

 

「次の者、こちらにいらっしゃい。」


メイは彼女のもとへ行くと、彼女が少し動揺し、少し微笑んだ。


「さぁ、目を閉じて。あなたの大切な人を想い浮かべるのです。」


彼女はそういうと、右手をメイの頭にかざす。メイは母さんと父さんと暮らす日々を思い浮かべていた。するとメイの目の前にクリアなプレートが現れ始めた。

 

「さぁ、目を開けて。この信託があなたの進む糧となりますことを願います」


彼女がそう言い終わると、メイは目を開けてプレートを手にした。メイは自分で確認をしないまま、教会を出た。トドロキとライカと一緒に見て一緒に喜びたかったからである。そんなメイを見つめる彼女が小さくささやいた。

 

「どうかあの子の進む道が幸せでありますように…」


そしてまた次の者の信託を再開した。

メイは一目散に二人の待つ家へと変える。


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