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転生家族~一家心中しようとしたら前世の記憶を思い出しました(家族全員)~  作者: 藤 ゆみ子


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第3話 食料調達

「今からどこか行くの?」

「こういうのは、早朝の方がいいのよね」


 意気揚々と家を出て行ったママ。

 気になったので、付いていくことにした。

 肩を回しながら向かったのは、街の青果店が並ぶ通りだった。

 朝に収穫した野菜や果物を並べているお店の人たち。


 ママはお店の人たちをよく観察すると、一人の男性に声をかけた。


「あの、もしかして肩を痛めていませんか?」

「え? よくわかったな。実は少し前から上がらなくなってかなわんのだ」

「良かったら、少しみさせてもらえませんか? 症状が和らぐかもしれません」


 男性に座ってもらい、ママは後ろに回った。

 そして肩を押さえ、腕をゆっくりと持ち上げながら、後ろに引く。首を横に倒し、腕を持ち上げたまま肩の後ろ辺りをグーっと押している。


 整体の施術だ。気持ちよさそう。

 しばらく施術が行われ、最後にスーッと腕を撫でるように下ろした。


「終わりました。肩、上げてみてください」

「おお! 全然上がらなかったのに、ここまで上がるようになった!」

「それはよかったです。完全に治ったわけではないので、もしまた何かあれば声かけてくださいね」

「ありがとよ! お礼にこれ持ってきな」


 男性はお店の野菜をいくつか紙袋に入れて渡してくれた。


「わあ、瑞々しくて美味しいそう。ありがとうございます」


 ママは今朝採れたての新鮮な野菜たちを抱え、嬉しそうにお礼を言う。

 なるほど。きっとこれを目当てに施術をしたんだな。

 関心していると、途中から様子を見ていた向かいのパン屋のおばさんがママに声をかけてくる。


「今のどうやったの? あたしの腰も治らないかしら」

「腰ですか……みせてもらえますか?」


 ママはおばさんと一緒にパン屋の中へと入っていった。私は窓から様子を覗く。

 お店の中のベンチにおばさんにうつ伏せで寝てもらって、ママは腰をゆっくりと確認するように押していく。何を話しているかは分からないけれど、おばさんは俯いたままうんうんと頷いている。

 それからしばらくすると、おばさんは驚いた表情をして起き上がった。

 ママも嬉しそうにしながら話をして、焼き立てのパンを貰ってお店から出て来た。


「思っていた以上の収穫があったわねえ」

「すごいねママ。こんなに大量の食糧久しぶり」


 私たちはご機嫌で家へと帰った。

 家の外ではパパとお兄ちゃんが井戸で水を汲んでいた。

 水が自由に汲めるのは本当にありがたい。


「おお! アリアナ、上手くいったんだな」

「母さん、レイラおかえり。なんかたくさん持ってるね」


 私たちは食糧と水を持って家の中へと入った。

 テーブルがないので、床に野菜とパンの入った紙袋を置く。

 そしてそれらをじっと見つめる。


「貰ったはいいものの、包丁もまな板もお鍋も何もないわね……」

「野菜の葉っぱをちぎってパンに挟んで、またサンドイッチにする?」


 私の提案に、今はそうするしかないねとみんなで野菜のサンドイッチを作って食べた。

 お腹が満たされることは嬉しいけど、やっぱり物足りなく感じる。


「肉も欲しいなあ」

「料理ができればいいんだけどね……」


 調理器具や調味料、食器などを買い揃えないといけない。

 

「テーブルも欲しいよ。私、いつまでも床で食べるのはちょっと」


 贅沢は言えないけれど、最低限の暮らしをしたいと思うのが人の性だ。

 するとお兄ちゃんが立ち上がった。


「僕がまたマジックで少し稼いでくるよ。テーブルが買えるかはわからけど、お鍋くらいは買えるかも」


 お鍋があればお湯が沸かせるし、野菜を煮込むことができる。それができるだけで全然違ってくる。


「お兄ちゃん、私も一緒に行く」


 けれどパパがお兄ちゃんと私の肩をポンッと叩いて凛々しい顔で言った。


「今度は俺が行く!」


 フンッと鼻を鳴らし、気合いいっぱいに家を出て行く。

 行くってどこに? 何も持っていないし、ママみたいに体ひとつで何かできるのだろうか。

 

 ママとお兄ちゃんと私は、街へ歩いていくパパに後ろから付いていく。

 すると、一軒のお店の前で立ち止まった。

 大きく息を吐き、勢いよくお店のドアを開けた。


「たのもう!」


 た、たのもう? 道場破りでもするの?!


「もう、道場じゃないんだから」


 ママも同じことを思っていたみたいだ。

 それにしてもここは……食堂?

 入ったことはないけれど、ランチが美味しいと話題のお店だ。お昼時になると行列ができることもある。


 パパはお店の中でなにやらシェフらしき人と話し込んでいる。

 必死に頭を下げて何かを頼んでいるようだ。

 どんな話をしているのか気になるけれど、野次馬として入るわけにもいかないし、お金を持っていないのでお客として入ることもできない。

 そうしている間にパパは奥の厨房へと入っていった。


「ずっとここにいても仕方ないし、家で待ってようか」


 お兄ちゃんの言葉に頷き、私たちは家に戻ることにした。

 パパのことは心配だけど、信じて待つしかない。


 カーテンのついていない窓から外の景色を眺める。

 なんだかここに居るのが不思議な感じがする。

 前世とは、全く違う世界。女子高生だった私。

 まさか死ぬなんて思っていなかった。

 お父さんとお母さんの悲しんでいる姿を想像するとすごく苦しい。

 だけど、レイラとして生きてきた十四年もちゃんとある。

 パパとママとお兄ちゃんがいて、家が没落する前は学園にも通って、それなりにいい暮らしもしていて楽しかった。

 事業が失敗してからはもうだめだと思ったけど、今こうして生きていこうとしている――。

 

 どこか感傷にひたっていると、部屋の真ん中でなにやらゴソゴソとしているお兄ちゃんが気になった。

 野菜とパンをもらったときに入れてくれていた紙袋をひっくり返したり、覗いたり、回したりしている。


「そんなに紙袋をいじってどうしたの?」

「これでなにかマジックできないかと思って。小石消すだけじゃすぐにみんな飽きるだろうから。でも紙袋だけじゃなあ」


 お兄ちゃんはまたじっと紙袋を四方から眺めて、頭を悩ませていた。

 きっといろんな道具があればすごいマジックができるんだろうな。


 そうしているうちに、パパが戻ってきた。

 なぜか大きなお鍋を抱えていて、腕には大きな麻袋もぶら下げている。


「仮就職が決まったぞー!」


 お鍋を両手で高く持ち上げ、得意気に笑った。

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