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転生家族~一家心中しようとしたら前世の記憶を思い出しました(家族全員)~  作者: 藤 ゆみ子


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第2話 四人の前世

 四人でいい匂いが漂う街を歩きなが何を食べようかと相談する。

 久しぶりの収入に気持ちが高ぶってしまったけど、そんなにたくさん買えるほど投げ銭をもらったわけではない。


「ねえパンを一斤買って、分けて食べない?」

「パンだけじゃ味気ないだろう。肉も欲しい」


 パパとママが相談した結果、パン一斤と串肉を買った。

 何もない家に帰り、輪になって床に座る。

 買ってきたパンを四等分にして、肉は串から外し、その肉をそれぞれパンに挟んでサンドイッチにした。


「「「「いただきます」」」」


 全員で自然と手を合わせた。


「私、いただきますなんて久しぶりに言ったよ」

「でも当たり前のように出たね」


 お兄ちゃんと顔を見合わせ笑い合いながら、サンドイッチを頬張る。


「ん~、美味しい! 肉汁がパンに染みていい感じ」


 しっかりしたお肉を食べるのも久しぶりだ。

 少しの贅沢が生きて良かったと思わせてくれる。


「うぅ……美味いなあ」

「あら、マルコスったら泣いてるの?」

「だって、またこんな美味いものが食べられると思ってなかったんだ」

「そうね、良かったわね。イクスに感謝しないと」


 事業が失敗したときも、家を売ったときも、死ぬことを決めたときも泣かなかったパパが涙を流している。

 お兄ちゃんは照れくさそうに笑っていた。


 感動の時間みたいになっているけれど、お金がないことにはかわりない。

 お兄ちゃんの投げ銭を頼りに生活していくわけにもいかないし。

 そもそも生活していくためのものが何もない。


「ケーキ屋でも開くか!」

「そんな資金ないでしょ」

「だよな……」


 でも、ほかにできることが思いつかないとパパはしょんぼりしている。


「そういえば、パパってユメヤのパティシエだったんだよね? 私あそこのケーキ好きだったんだ。火災の日もケーキ買ったんだよ。食べられなかったけど」

「そうだったのか。また作りたいなあ。お前たちに食べてもらいたい」

「いつか作れるわよ」

「僕も、楽しみにしてる」


 ケーキを作るための道具や材料を揃えていたらかなりのお金がかかる。

 今はまだ無理だろうけど、いつかお金が貯まったら作ってもらう約束をした。


「そういえば、ママはあのショッピングモールで何をしてたの?」

「私、ユメヤ整体院の整体師だったのよ」

「え? あの一年予約待ちだって有名だった?」

「まあ、おかげさまで忙しくしてたわね」


 私は高校生だったし、整体院にかかったことはないけど、お父さんが一度行ったことがあった。

 有名女性整体師がいて、たしか元柔道選手だったとかですごく力もあって、整体の技術も一年待ちなだけあるって言っていた。


 今の、華奢でおっとりしたママとは想像つかない……。


「すごい人だったんだね」

「レイラは、どうしてショッピングモールにいたの?」

「私は、両親の結婚記念日のプレゼントを買いに、高校が終わった後あのモールに行ったの」


 放課後、ケーキとプレゼントを買って帰って家でパーティーをする予定だった。

 私が準備をすると言うと両親はすごく喜んでくれていたのに。

 最悪な結婚記念日にしてしまったな。


 悲しい気持ちを思い出していると、ママが抱きしめてくれた。


「前世の分も、私たち四人で幸せになりましょう」

「俺もこれから頑張るからな!」


 先行きは全く見えないけれど、この家族ならなんとか生きていけそうな気がした。


「僕も、マジックのレパートリー増やしたいな」

「さっきの小石が消えるやつって、どうやってるの? よく見るけど、仕掛けがわかんないだよね」

「これは簡単だよ。布の真ん中に石を包んでると見せかけて、本当は隅にあって指で挟んで隠してるんだよ」


 お兄ちゃんはポケットから小石と布を取り出した。

 両端を掴んで広げた布の端。指で布を掴んだそこに小石も掴まれている。


「へえ! なんかこれなら私もできそう」


 できるようになったら、私も少しは稼げるようになるかな。

 とにかく今はお金が必要だから、私にもできることをしなくちゃ。

 

「イクスとレイラには苦労をかけてしまって本当に申し訳ない」

「学園でも成績が良かったのに辞めさせてしまってごめんなさいね……」


 私とお兄ちゃんは家が没落する前、貴族学園に通っていた。

 十八歳になったお兄ちゃんはあと半年で卒業だった。頭も良かったし王立図書館での就職も決まっていたけど、全部なくなった。口には出さないけれど、すごく悔しかったと思う。

 比べて私は十四歳のなんの取り柄もない普通の生徒だった。強いて言えば絵を描くことが好きだったくらい。

 思えば絵が好きなのは前世から受け継がれていたものなのかもしれない。

 美術部に所属していて、賞をとったこともあった。

 レイラの今は前ほど上手くないのけどね。

 でも、なんだか無性に絵が描きたい気分だ。絵を描く紙も絵具も鉛筆も何もないけど。


「とりあえず、今日はもう寝ようか」

「そうね。明日のことは明日考えましょう」


 パパとママは寄り添いながら床に寝転んだ。

 私とお兄ちゃんもその横に寝転んだ。


「ベッドは贅沢だけど、毛布くらいは欲しいかも」

「明日はもっと投げ銭貰えるように頑張るよ」

「ありがとうイクスお兄ちゃん。私も手伝うね」


 硬い床で寝心地は悪いけれど、久しぶりにぐっすり眠れた。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝、うっすらと窓から射し込む光で目が覚める。

 まだ日は昇りきっていない。

 パパとお兄ちゃんはまだ寝ているけれど、ママはもう起きていた。

 そしてなぜかストレッチをしている。


「おはようママ、どうしたの?」

「今日は私が頑張ってみようと思ってね。イクスに頼ってばかりではいけないでしょ?」


 ママは袖を捲り、小さな力こぶをポンッと叩いた。

 お金を稼ぐのだろうけど、何をするのだろう?

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