018話 発見
宝探しの三人は、巨大な赤褐色の岩石があちこちに突き出て天然の砦のようになっている場所へたどり着いた。
地図のバツ印が示す位置だ。
「地下遺跡……。マリエルが本で読んだって言ってた通りだな」
アゼルは目の前の地面を見た。
砂をかき分けた先に岩盤があり、金属製の四角い扉がはめ込まれている。
地下への入り口だ。
ナジムは背負っていた革袋を下ろして、中を探っている。
やがて取り出したのは、銅製のコマであった。
「コマなんて何に使うんだ?」
「まァ見てろって」
ナジムは得意げに、細い紐をくるくるとコマの軸に巻き付ける。
紐の一端を握ってコマを空中へ放り、勢いよく紐を引いた。
コマはカンッと金属音を立てて地下扉の上に着地し、回る。
扉の上に残っていたわずかな砂が、円形に弾き飛ばされた。
ナジムは回転するコマに顔を近づける。
「何してるの」
「しっ」
目を閉じ、耳を地面に近づける。
十秒ほどの後、彼はコマをパッと拾って立ち上がった。
「この扉にゃ罠は無ェな。直下の深さはとりあえず三階分ってとこだァ。その先は分からねェが、なんだか広そうだぜ」
「そんな事まで分かるのか!」
「まァな」
ナジムはコマをしまうと、琥珀色の目を細めていたずらっぽい笑みを作り、マリエルの方を見た。
「おめェもこういう事を期待して付いてきたんだろ?」
「うん。さすがだね、ありがとう」
「おォ……? お、おゥ」
マリエルは素直に礼を言い、ナジムはむず痒そうに眉をひそめてのけ反った。
そんな二人の様子を見て、アゼルは笑った。
「どうしたんだよナジム、ありがとうって言われただけで」
「う……っせェな。ほら行くぞ。松明出せコラ」
きまり悪そうに扉を開け、幅の狭い階段を下り始めるナジム。
マリエルの方はというと、既に元の無表情に戻っている。
まるで百年前からずっとその顔でいるかのような面構えで、彼女はナジムの後に続いた。
アゼルもそれに続いて階段内部へ入り、一応辺りを見渡してから扉を閉めた。
陽光が完全に遮られるのとほぼ同時にマリエルが振り返り、魔法で火をつけた松明をアゼルに手渡す。
「ありがとうマリエル」
「待て待て。みんな止まれェ。罠チェックだ」
「またコマ回し?」
「文句言うなよメイドォ。細かく確認しねェと危ねェんだよ」
「別に文句言ってない」
「じゃあ黙って静かにおしとやかについてこい」
「あなたの方がうるさ──」
「あァもう静かにしろってェ! コマの音が聞こえねェんだよ」
その時アゼルは思わず吹き出してしまい、「おめェも静かにしてろ」と叱声が飛んだ。
三人のいなくなった地上には、閉ざされた遺跡の地下扉を、岩陰から静かに眺めている影がひとつ。
ツギハギだらけの麻のローブが、砂交じりの風に揺れた。




