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ぼんやり令嬢が不在の間の首都(多視点)

「なぁ、聞いたか?ブランデンブルグの話」


 ここは首都にあるコーヒーハウス、ここでは、主に、新興派貴族の男性らが主に集まる憩いの場であり、うわさ話や軽い商売の話のほんの小さな中心地、また今日も、彼らはコーヒーを飲み、軽食を取りながらあるものは新聞を読み、またある者たちは喫煙所にて話をする。


 話の中心は、勿論ブランデンブルグ侯爵家である。


 「聞いた、聞いた。いやぁバカな息子を持つと大変だな。」


 「あの、婚約破棄から一気に・・・だったもんなぁ。」

 とある男性がしみじみ呟くと、他の面々も頷いた。


 「そもそも何で婚約破棄されたんだっけ?」


 その言葉に、詳細を知らない面々は、首を横に振るがある男が口を開いた。

 

 「浮気やら暴言やらで、愛想が尽きて、証拠を突きつけられたんだと」


 「証拠って……。相手も貴族とはいえ、学生だろう?」


 最近、羽振りの良い商家の男は、あんぐりと口を開けるが、隣の男は少し考えた後、呟いた。


 「それだけ嫌だったんじゃないか?」


 「まぁ、結婚する前にわかってよかったんじゃないか」


 その言葉に、周囲は違いないと、乾いた笑いが零れた。


 「はー、救えないねぇ」


 誰がそう言ったか分からないが全員が頷いた。


 「明日は我が身っと、あっ、でもうちの息子は、婚約者にぞっこんだからなぁ」


 「あんたのところが羨ましいよ」


 うちは大丈夫かと心配する男に、周囲は笑いながら肩を叩いた。


 「ははっ、でもまさかブランデンブルクがここまでとはね、どこも手を差し伸べなかったのか?」


 「あそこだって新興派なのに、他の新興派を見下してたからなぁ」


 「つるんでた商家とかからも、手を切られたんだろう?」


 そうそう、と同意の声の間から小さな声が聞こえた。

不思議なことに、こんな大人数でも、その先の内容を察しているのか、全員がそちらの方向を向いた。

 

 「俺の知り合いがノルドハイムで働いてんだけどさ、どうやら、ノルドハイム伯爵とも縁を切られたってさ」


 「えぇ。もう、どうにもならないなぁ」


 「今のブランデンブルクとだったら、もしかして、うちのが資産あるかもな」


 商家上がりの男爵がそういうも、周囲は呆れたような声を上げる。


 「おいおい、そこで勝ってどうするんだ。」


 その言葉で全体がどっと沸いた。

 まさかブランデンブルグ侯爵家も、自分たちが見下していた彼らに、コーヒーのお供にされてるなんて、露とも知らないだろう。


「まぁとりあえず、ベルバニア万歳ってことで」


 一人、陽気な男がまるで酒を乾杯するかのように、コーヒーカップを持ち上げ言うが、周囲の視線はやや冷たかった。


「よく言うよ。お前、チェーザレ様のこと、陰気でなに考えてるかわからないって言ってたくせに」


「やめてやれよ、こいつティルディア様のことを崇拝してたんだから。」


「なぁんだ逆恨みか」


そんな話をしている間に、またまた笑いが、そこかしこで生まれていた。


「じゃあお互い、子供のことはしっかりしような」


「本当にその通りだ」

 

男たちが、コーヒーハウスでそんな噂話をしている間、女性陣も茶会やティールームで、噂話に花を咲かせていた。


 「ねぇ聞いた?ブランデンブルグ侯爵家のこと」


 誰が言い出したのか、その言葉はどんどん浸透し、全体がその話題に染まった。


 「えぇ、あそこまでになったら立て直すのは難しいでしょうね、だって、家門から犯罪者が出たんだもの」


 「それって本当なのかしら?疑っているわけではないけれど、信じられないのよね」


とある夫人がそう頬杖をついて答えると、周囲も言われてみれば、というが誰かが答えた。


 「本当よ、私の妹が衛兵として働いているんだけれど、今にも、クティノスの王子に飛び掛かりそうな勢いだったんですって、ものすごい抵抗するから、力づくで、留置所に五人がかりで放り込んだって言ってたわ。」

 

 その言葉に、周囲の空気は一瞬凍ったが、話題はころころと変わっていった。


 「きっと、ベルバニア伯爵令嬢はそんな本性が分かっていたのでしょうね……」


 気の毒だわ、と誰かがいうと、周りもそれに同調する。


 「でも今は、王女付き側仕え見習いですっけ?しかも、あの秘書にとっても大事にされてるとか」


 「えぇ、セレスのドレスを一式プレゼントしただとか、毎日のように送り迎えしてるだとか、見たけど、本当に仲がいいのが分かりましたよ。」


 「あぁ、ヨハンナ様のガーデンパーティーで着られていましたよね。」


 「えぇ、とても似合ってました。」


 「そういえば……」


 そうして話はセレスのドレスの話から始まり、フィリア夫人の話から、ダイアン様の過去の恋愛遍歴やら、これからブランデンブルグは、どうなってしまうのかへと転がり、そこからさらに、どこの家門が、ブランデンブルクに成り代わるのかまでに及んだが、最終的に、どうやってベルバニア伯爵令嬢と親しくするかの作戦まで立て始め、その話は、ガラスの鈴のような声によって止まった。

 

 「でも、あの子人見知りなのよねぇ……。学院でも友達がなかなかできなくてねぇ」


 「ツィリアーデ様」


 いつからいたのか、話の中心であるフルストゥルの年の離れた姉であるツィリアーデは、優雅にほほ笑んでいた。


 「ふふ、面白い話をしてるわね」


 「いえ、これはその……」

 

 少し下心、といっても話題の中心であり、今まで交流も少なかったせいか、単純な興味からの可愛いものなのだが、下心は下心、思わず口ごもってしまうも、ツィリアーデは、にこりと花の精霊のように穏やかにほほ笑んだ。

 

 「あぁ、怒ってるわけじゃないのよ。動機が何であれ、妹と仲良くしてくれるなら、その方がありがたいからね」


 ツィリアーデはにこにこと答えると、一度ため息を吐いた後、口を開いた。


 「……ただ助言するなら、大人数で一気に行かないほうがいいわよ?その場では、笑顔で取り繕おうとするけど、その後、距離を取るから、あと下心があるなら絶対無理ね、あの子普段はポヤポヤしてるのに、なぜかそういうのを見抜くのは上手なのよねぇ……。お母様の教育の賜物かしら?」


 一人でつらつらとしゃべるツィリアーデに、周囲は唖然とするが、それを無視してツィリアーデは続けた。


 「あと、できたら人目が多くつく場所も、苦手だからやめた方がいいわね、うん」


 「えっとぉ……」


 まさか、ここまで的確な助言が、身内からどんどんもらえるとは思っておらず、周囲は唖然としていた。


 「まぁもし、どこかで、妹に会う機会があったらよろしくね」


 だがツィリアーデのこの発言により、後日、アーレンスマイヤのタウンハウスに、茶会の誘いが沢山届くことになるのを、領地にいるフルストゥルが知ることになるのは、しばらく後の話。


そして、その噂は予期せぬところにまで広がっていた。


「ねぇ、店長さん知ってる?ブランデンブルグ侯爵家の話」


「さぁ…うちはあまり、そういう話に疎いから……」


フロルウィッチの店内で、とある貴族の女性が話しかけるも、ノージュは首を傾げた。


 「あら、でも気にならないの?息子が大事にしてる子のこと」


 「どうしてフルストゥル嬢の話になるの?」


 疑問符を浮かべ続けているノージュに、女性は肩を落とした。


 「本当に、服以外無頓着よね、店長さんって……」


 「仕方ないじゃない 性分だもの……で話って?」


 そうして一通り、フルストゥルが、レヴィエにされていたであろう仕打ちが、少し盛って広がった噂話から、婚約破棄をしたのにもかかわらず、付きまとわれたあげく、周囲にまで危害を加えられたと一通り聞いたあと、ノージュは頭を抱えることしかできず。

正直、侯爵家の自業自得な話など、頭に一切入ってこなかった。

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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