ぼんやり令嬢と町巡り
またまた気づいたらなんですけど この話で100話でした。
こうやって毎日頑張れてるのは本当に読んでくださる皆様のお陰ですいつも本当にありがとうございます。
「おや 今日もロテュスにいくのか?」
お父様は珍しそうにそう言うが、どこか嬉しそうに見えた。
それもそのはず、私は領地に戻っても、大体、館の敷地内でしか行動しないうえ、やることといえば読書や絵をかいたりする、たまにアントワネットと遊ぶくらいだから、引きこもりがちな私が外出するのが嬉しいのだろう。
「はい。昨日は夕方からだったので、町の飾りもみたいですし、噴水も見に行こうかと」
「そうか、気を付けていってきなさい」
お父様は優しく笑い言葉を続けた。
「ジィドは、学校の友人らと行ってくるそうだ。フルストゥルも楽しんできなさい。勿論ニーチェ君も」
お父様は、私とニーチェさんを交互に見て、優しくそういう視線も声色も、区別がないことが何故だか嬉しかった。
「はい」
「はい。ありがとうございます。伯爵」
お父様に見送ってもらった後、オルハに町まで送ってもらうと、昨日とかわらず、町は盛り上がっていた。
「花だらけだなぁ」
ニーチェさんの言葉の通り、ロテュスのどこもかしこも、花のリースやスタンドだけでなく、ベンチや民家の窓に至るまで花で飾られている、初めて見るニーチェさんは、とても驚いていた。
正直、私も毎年、よくこの量のお花用意できるなぁと感心していたので、気持ちは大分わかるなぁと思いつつ、くどくない程度の説明を始めた。
「旧レウデールの王族は、植物にゆかりのある名前のかたが多かったんです。だから、こうしてたくさんのお花が飾られてるんですよ」
「へぇ……にしてもすごいな、植物園といっても過言じゃないな」
「植物園なんてあるんですか?」
きょとんと首を傾げると、ニーチェさんはくすりと笑った後に、優しく答える。
「あるよ。少し郊外よりにはなるけれど、今度行こうか」
「いいんですか?」
私の問いに何を当たり前のことを、という表情をするわけでもなく優しい表情のまま続けた。
「いいよ、植物も綺麗だけど、中に人口の湖もあるんだよ。小舟で渡るくらいの」
「すごぉい、あっでも私船こいだことないです」
「あったらすごすぎるんだよなぁ……」
ニーチェさんと、いつもアイン様の前でするような軽いやり取りをしていると、ふと、背中に小さい衝撃を感じ、振り返ると、小さな女の子が、小さな花束を笑顔で差し出してくれていた。
「姫様~あげる~」
ただ純粋に、邪気など微塵も感じさせない可愛らしい女の子は、もはや天使に見えにやけそうになる心を抑えて抑えて、目線を合わせて返事をした。
「あらぁ ありがとうねぇ」
……今、この子を撫でたら捕まるんだろうかと思いつつ、女の子が、今日はお母さんときたんだよーとか、このお花おうちでそだてんだよーと、可愛らしい報告をうんうんと聞いていると、その子の後ろから母親らしき人物が現れ、即座に頭を下げた。
「ごめんなさい姫様」
「大丈夫ですよ。お話いっぱいしてくれてありがとうねぇ」
「どーいたましてぇ」
……言い間違えてるの可愛いなぁ、と女の子に笑いかけていると、母親は何度も頭を下げた。
「寛大な心遣い、ありがとうございます。」
「いやいやいいんですよ お祭りなんですし今日はそういうのなしで行きましょう?」
むしろ折角のお祭りに、こんな風に頭を下げさせて、申し訳ないなぁという思いからの、発言だったのだが、そのやり取りを聞いてた周囲は口々に
「やっぱり、俺らの姫様は寛大だなあ」
「流石 お館様の娘、お優しい方だ」
などなど持てはやされるが、いやいやいや、小さい子供に優しくするのは当たり前だし、そもそも、頭下げさせちゃってるけどいいのそこは?
と疑問符が沢山でてくるも、戸惑ってる私に、ニーチェさんは微笑みかけた。
「慕われてるなぁ」
「婚約破棄して、慰謝料大量にもらったかいがありましたわぁ。世の中やっぱ金ですね」
チャリーンと効果音が出そうな手をするも、ニーチェさんは肩を落とした。
「堂々といわないの、あとその手はやめなさい」
ニーチェさんにたしなめられるも、言葉に怒りなどはなく、かるく頭をぽんぽんとされるだけだった。
その後、昨日見れなかった、若い職人たちが出してる出店を眺めた。
「昨日もびっくりしたんだけどさ、ベルバニアって物価安すぎないか?」
ニーチェさんは、レモネードをのみながら呟くと、それが聞こえたらしい革製品屋の店主は、深く頷いた。
「そうなんですよ。俺は首都から流れてきたんですけど、びっくりしました。」
「田舎なんでね、土地が安いから……」
田舎あるあるですよと答えるも、ニーチェさんは首を横に振った。
「確かに、首都からは離れてるけど、普通に生活するには不便無さそうだよな」
「えぇ、みんないい人ばかりですし、住みやすいです」
「ならよかったです。」
正直、あまり領地経営のことに関わってないが、こうやって若い人が住んでくれて、それですみやすいって言ってくれるのは、嬉しいなぁと素直に思う。
やっぱり、家族が認められてるのは嬉しいことだなぁ、としみじみとしてると店主は頭を下げた。
その後、しばらく見て回った後、館へ戻ると、エマが約束どうりケーキを用意してくれていた。
もちろんニーチェさんの分も、だが、ニーチェさんは意外そうな目で呟いた。
「え?俺もいいの?」
「いやいや、お客様ですから」
「悪いなぁ」
その会話の後、二人でアップルパイをのんびりと食べながら、おしゃべりをして、それはそれは穏やかな時間を過ごしていた。
だからこそ、今、首都で何が起こっているかなんて全く予想もついていなかった。
フルストゥルがベルバニア領に戻った翌日、アーレンスマイヤのタウンハウスにて。
「ヴォルフラム様、レヴィエ・ブランデンブルクが廃嫡されるそうです。」
執事のウォーレンが、まるで今日の予定をいうように軽やかに言うと、ヴォルフラムは、コーヒーを一口飲んだ後、呟いた。
「…………ようやくかぁ」
ヴォルフラムの言葉に、エフレムだけが首を傾げ、小さく手をあげた。
「廃嫡されたらどうなるんですか?」
「よくあるケースは、傍系とかにかくまってもらうとかあるけど、それも無理だねぇ……刑が執行されるとしたら、国外追放とかになるのかな?」
「犯罪者を匿うメリットなんてありませんからね……。もしくは、一生檻の中かですね」
ウォーレンの言葉に、エフレムが納得すると、ヴォルフラムが呆れた表情で続けた。
「もっと早く廃嫡したかっただろうけど……。相変わらず、義兄さんは怖いなぁ。ここまできたら、立て直しは難しいだろうねぇ」
社交界では、不貞を犯した息子をきることができない上に、フィリア夫人の傍若無人さが目立つわ。金銭面でも困窮するわで、もう破綻寸前で廃嫡したとしても、今更過ぎるだろう。
噂で聞いたが、ノルドハイム伯爵家から縁を切られたらしい。
もう転落どころか、残骸を踏み荒らされているようなものだ。
「ベルバニアを散々下に見てたみたいだけど、今や見る影もないですね」
ウォーレンのその言葉通りの現状に、意を唱えることは誰もできなかった。
「盛者必衰……」
エフレムがそう呟くと、ヴォルフラムはからっと笑う。
「ははっ確かにその通りだね」
「でも分からないんですよね。話を聞けば聞くほど、レヴィエ様、お嬢様のことが好きですよね?」
どうして普通に、と言葉を漏らすエフレムに、タウンハウスの面々は、うなだれるしかできなかった。
「さぁねぇ……どこでねじ曲がったんだかね」
どうしてそうなったかといえば、彼が、自分の本心に気づいてなかったというのが、大きな理由なのだが、自分の感情を整理することもできない愚か者の思考を、理解したいとは到底思えなかった。
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