表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

17.決戦

 ガーディアン・竜戦士が守るこの部屋は広く、小さな農村程度なら収まりそうな程だ。

 とてもダンジョン内とは思えない。


 あちこちに人の背丈ほどの瓦礫や岩が散乱しているが、地面は整地されていて移動するのに支障はなかった。


 私たちは、竜戦士を視界にとらえながらも四方八方くまなく目配せし、何か仕込みがないか注意しながら中央に向かって進む。


 もうすぐ魔術の有効射程に入るかって距離で竜戦士が戦端を開いた。

 軽く咆哮したかと思うと、急激に間合いを詰めてくる。


 早い!?


 脚力だけでは説明がつかない速度。

 うっすら翼が発光していることから、何らかの速度向上魔法を使っているな。


 考察している間に剣が届く距離まで詰められる。

 まず狙いは私。二度の斬撃を紙一重でかわす。


 その隙にハリスが切りかかる。


 ギィィィン


 竜戦士は、剣で迎え撃ちつつ左手でひっかき攻撃を私に繰りだしてくる。

 爪がクナイのように鋭い。

 回避に全集中している私は、これも紙一重でかわす。


 ハリスの攻撃を裁きつつ私への集中攻撃が続く。

 私は避ける行動で精一杯。二体一なのに手数で押される。


 何度目かの攻防が続き、妙な慣れが生まれたとき、竜戦士がさらに一手増やしてくる。

 剣、爪に加え、翼を器用に折りたたんで攻撃してきた。


 振り払われた翼をとっさにメイスで受け止める。

 鈍い衝撃がメイス越しに体に伝わり、思わずたたらを踏んで足が止まる。


 その隙を逃すはずもなく竜戦士が間合いを詰める。

 私を仕留めるためにハリスの斬撃を最低限の回避で切られながらも位置をずらし致命傷を避ける。


 真正面に捉えられた私に向かって必殺の間合いで魔法剣を振り上げる。

 当たれば戦闘継続は不可能だ。しかし、私もこの時を待っていた。


 「エンデニール!」


 圧倒的な殺傷力をもった黒い光の槍が竜戦士に放たれる。

 私が扱える最高威力の魔術だ。


 当然このフロアに入る前に必要な詠唱は唱えて終えている。

 そして必殺の間合いとなるこの瞬間を待っていた。


 ギュゥゥイィィィン


 しかし必殺の間合いで放たれた一撃は、竜戦士に直撃する寸前、閃光が走ったかと思うと突然ねじれ、軌道が変わった。


 竜戦士を器用に回り込むような軌道を描くと後方に飛翔し、壁面に大穴を開けて霧散した。

 相手は無傷。


 何が起きた!? 


 と思ったが、奴の胸当てに施されていた魔術文様がかすれて、ほとんど消えている。


 相手の魔術防御をはがせたのは大きいが、最大の仕込みを使ってしまった。


 竜戦士が低く唸る。

 威嚇というより、誘いに乗った悔しさを押し殺したような唸りだ。


 竜戦士が再び間合いを詰める。

 私は回避に専念しハリスが攻撃。奴の引き出しが空になるまで、私は支援に専念する。


 剣と爪による斬撃、翼を使った攻撃。

 二倍の手数にも関わらず疲れる様子を見せないのはさすがだが、私たちもいい加減見切れるようになってきた。


 少しずつハリスの斬撃がかするようになり、小さな傷を皮膚や鎧に刻んでいく。

 そんな状態が続いた時、またしても新たな攻撃を繰り出してきた。


 「△$♪×¥○&%#!」


 魔術だ!

 ほとんど詠唱することなく魔術を発動、するとハリスが立っていた地面が急に泥濘地化した。


 「ストラ!」


 私も準備していた身体強化魔術を発動。

 足を取られかけていた彼の鎧の裾を掴むと引っ張りだす。


 攻撃対象を失って矛先を私に向けられる。

 振り落とされた剣をメイスで打ち払い。翼の攻撃をメイスを盾代わりに受ける。


 その間に回り込んだハリスもついに隠し玉を発動する。


 「ストラッ!」


 力ある言葉とともに身体強化された斬撃を放つ。

 音を切り裂くほどの一撃は竜戦士の魔法剣を弾き飛ばし、肩に浅くない傷をつけた。


 決まったか。

 竜戦士はまだまだ体力もあり私たちを屠るだけの攻撃力も残っている。

 しかし手堅く削っていく我々に対して、これ以上の攻撃がなければ逆転の目はないだろう。


 あるとするなら。


 グゴゴゴゴゴゴゴッ


 突如、ダンジョン全体が揺れ始めた。

 まともに立っているのも難しい。天井からの落下物がないのが救いだ。


 揺れは収まるどころか、激しくなる一方でむしろ震源地が近づいてきている感覚すらある。


 やはり、ここで出てくるよな。私ならそうする。

 むしろ遅いくらいだ。竜戦士背後の壁が崩落し、それが現れた。



 崩れた壁から別の壁が現れた。新たな壁の中央には、禍々しい球体の半分が覗いている。

 あれが上級ダンジョンコアか。


 揺れはいくらか弱まったが治まることはない。

 それもそのはず、コアを内包した壁がゆっくりこちらに迫ってきている。


 「聞けぇ!ダンジョンの主よ。今地上で行っている侵攻を止めよ。そうすれば私たちもここから去る。」


 ハリスが良く通る声でコアに提案する。


 次の瞬間、コア周辺に魔法陣が浮かび上がり、そこから紐状のビーム攻撃をもって返答された。


 まだ説得する状況ではないわね。

 そもそもあれが、人間の言葉を理解しているかも怪しい。


 紐状のビームは軌道を修正しつつ私たちに迫るが、十分な距離があるおかげで難なく避ける。


 竜戦士が咆哮をあげながら突っ込んでくる。いつ持ち替えたのかハルバートが握られている。


 奴の攻撃パターンはすでに把握している。

 獲物が剣からハルバートになって攻撃範囲が変わってもすぐに対応できた。


 しかしコアから放たれるビーム攻撃が厄介だ。上空から降り注ぐ角度で迫ってくる。

 竜戦士が万全の状態で、最初からコアと共闘されていたら、危なかった。


 ハルバートの横なぎをかわし、ハリスの斬撃中に体勢を戻しながらビーム攻撃を避ける。

 翼の攻撃をメイスで打ち払い再びビーム攻撃を避ける。


 ビームがハリスを狙っている場合は、準備していた魔術をあてて軌道をそらし、次の詠唱を始める。


 前進を続けるダンジョンコアとの距離がじりじりと近づいてくる。

 近づくに従い、ビーム攻撃の角度がより直線になってくる。


 竜戦士をかすめることもあるが、コアはもちろん、竜戦士も気にする様子はない。


 「△$♪×¥○&%#!」


 何度目かの魔術。私が飛び退った着地点に泥濘地が生まれる。

 ハリスが私に目配せし助けが必要か確認してくる。


 すかさず不要と合図すると彼は攻撃に意識を切り替え、一手使った隙を見逃さず竜戦士のわき腹を深く切り裂さいた。


 私は追撃のため用意していた魔術を上空で発動、その反動で泥濘地をわずかに外れた位置に着地。

 すぐさまビーム攻撃が飛来するが、かすり傷で対処できた。


 もはやダンジョンコアの壁が目前に迫り、竜戦士に至っては翼が触れるほどだ。

 満身創痍の竜戦士が咆哮をあげる。威嚇というより自身に活を入れるための叫び。


 いまだ当たれば必殺の一撃を繰り出してくるのは厄介だが、当初と比べ勢いが落ちている。

 まずは竜戦士を屠り、改めてコアと交渉か。


 決着が勝利側に傾き少し余裕ができたのか、どこか俯瞰した視線で戦闘を見ていたおかげで気が付いた。

 コア周辺に魔法陣の一つが強く輝いたこと。

 その魔法陣から放たれた紐状のビームの軌道が、他と異なり竜戦士の背後を狙っていることに。


 !?


 一瞬で体中の血液が沸騰する。

 同じだ。ダンジョン入り口の攻防で父を見つけたときと同じように一心不乱に駆け出した。


 「ハリス!」


 父の名を叫びながら彼の体を押し出す。これまでのような連携とは異なる突発的な介入にハリスと竜戦士双方が驚く。


 ビームは、竜戦士の巨体に遮られて視認できない。しかし攻撃する以上は致命傷を狙う。

 ただの勘で当たりをつけ身をひねった瞬間、紐状のビームが竜戦士を貫き、私の胸に突き刺さった。


 竜戦士は絶命。その表情に驚きも苦悶もなかった。むしろ満足しているようにも見えた。

 私は力が入らず、その場でうずくまる。


 「リシュト!!!」


 ハリスが娘の名前を絶叫しながら私に近寄ろうとするが、コアから飽和攻撃が始まると、切れるような視線で睨み、苛烈な勢いでコアに切りかかっていく。


 私は援護しようと魔術を唱えるが、血が肺や喉に溜まって、うまく詠唱できない。

 なるほど。心臓への一撃は避けることができたが、臓器をやられるだけで、戦闘継続がこれほど困難になるとは思わなかった。


 しかし私の援護がなくても彼の進撃は止まらない。

 前面を覆うほどのビーム攻撃を紙一重で避ける。

 いや、致命傷以外は避けず削られながらも前進しコアの真下に到達した。


 そして何らかの魔術を発動。刀身を輝き、さらに伸びてコアを両断してしまった。


 ははっ。やはり彼も隠し玉を持っていたな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ