彼女たちの仕事(1)
【2】
吊るされた太陽が闇の中で灯火となる。
ただ一つの脆弱な光ではすべての見通しはかなわず、呻きをあげるような無貌の闇が輪郭を包んでいた。
満たされぬ光量だが、所々にここが岩肌の壁に囲まれた広間であること示している。そして床には多くの黒い塊が敷き詰められていた。
遠き陰影は濃淡が混じり合い、階調的に色褪せた単色へと歪ませる。
赤は黒へと溶けて、それ以外を白とする。
刃の煌めき。纏う鋼。希望と絶望。不純は眩しさに染められ鈍色となり、それ以外は黒となる。
その中に。
黒でありながら白の中に立つ影は、ただひとつの例外だった。
影が伸縮し、光を放った。
闇を払う閃光。手をかざし白刃のように輝く光球を生み出したのだ。
「……」
敷き詰められた黒い塊の正体が露わとなる。
光に向かい――まるで断崖に咲く薔薇に手を伸ばすかのような光景だった。
伸ばされたいくつもの手は虚空を滑り、何もつかむことはなかった。
命が、散っている。
凄惨だろう。悍ましかろう。苦悶。恐怖。戦慄。驚愕。満足に果てた顔など一つもない。
蠱惑の香りに引き寄せられし虫たちがその正体に気付くことなく、紅の残滓と化した。
だが苦しみの中で息絶えたとしても、ただ縁という因果が巡ったに過ぎないのだ。
踏み出した足音と共に浮かぶ、逆光を背負う少女の姿。
花のような唇が甘美な声でささやいた。
「あなたが最後かしら?」
女という花は美しさの中に棘を隠している。
可憐な容姿の少女だが、容易く手折られるような儚さはない。
澄んだ瞳は細められ、口元には緩やかな微笑。
強かな笑みだった。平気で嘘をつき、それを真実に変えてしまうような。
そして彼女が持つ棘はとびきりに切れ味鋭い、牙という猛毒だった。
「くさい。汚い。帰ってシャワー浴びたい」
ため息交じりに引き抜いたその剣身は、呪いのように赤く染まっていた。
2018/06/18【修正】内容は変わっていません
2018/06/14【投稿】




