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The/O  作者: 数美
2.キカイナマジュツ
32/48

彼女たちの仕事(1)


   【2】



 吊るされた太陽が闇の中で灯火となる。

 ただ一つの脆弱な光ではすべての見通しはかなわず、呻きをあげるような無貌の闇が輪郭を包んでいた。

 満たされぬ光量だが、所々にここが岩肌の壁に囲まれた広間であること示している。そして床には多くの黒い塊が敷き詰められていた。

 遠き陰影は濃淡が混じり合い、階調的に色褪せた単色モノクロへと歪ませる。

 赤は黒へと溶けて、それ以外を白とする。

 刃の煌めき。纏う鋼。希望と絶望。不純は眩しさに染められ鈍色となり、それ以外は黒となる。

 その中に。

 黒でありながら白の中に立つ影は、ただひとつの例外だった。

 影が伸縮し、光を放った。

 闇を払う閃光。手をかざし白刃のように輝く光球を生み出したのだ。


「……」


 敷き詰められた黒い塊の正体が露わとなる。

 光に向かい――まるで断崖に咲く薔薇に手を伸ばすかのような光景だった。

 伸ばされたいくつもの手は虚空を滑り、何もつかむことはなかった。

 命が、散っている。

 凄惨だろう。おぞましかろう。苦悶。恐怖。戦慄。驚愕。満足に果てた顔など一つもない。

 蠱惑の香りに引き寄せられし虫たちがその正体に気付くことなく、紅の残滓と化した。

 だが苦しみの中で息絶えたとしても、ただえにしという因果が巡ったに過ぎないのだ。

 踏み出した足音と共に浮かぶ、逆光を背負う少女の姿。

 花のような唇が甘美な声でささやいた。


「あなたが最後かしら?」


 女という花は美しさの中に棘を隠している。

 可憐な容姿の少女だが、容易く手折られるような儚さはない。

 澄んだ瞳は細められ、口元には緩やかな微笑。

 したたかな笑みだった。平気で嘘をつき、それを真実に変えてしまうような。

 そして彼女が持つ棘はとびきりに切れ味鋭い、牙という猛毒だった。


「くさい。汚い。帰ってシャワー浴びたい」


 ため息交じりに引き抜いたその剣身は、呪いのように赤く染まっていた。


2018/06/18【修正】内容は変わっていません

2018/06/14【投稿】

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