#5 よし、周囲の安全を確認!
#5
カナタは、モニタを起動すると、たった今スペースハンマーを飲み込んだばかりのマイクロダンジョンが存在したと思われる場所を何度かスキャンする。
収集したスキャンデータはSエクスカードに記録されているはずだ。
「これだけあれば十分かな」
ダンジョン内は通常空間とは異なる時空であるらしい。
駆け出しSエクスのカナタは完全にダンジョンイン、つまり体全体をどっぷりとダンジョンに入れたことはない。
なので、知識として持っているだけであるが、ダンジョンにごとに時間の流れすら異なっていることがあり、単なる空間映像では証拠としての価値がないこともあるらしい。
カナタはダンジョンの情報をモニタに十分記録したと思うことにする。周囲を見回して安全らしいことを確認すると、ひらりとスペースバイシクルにまたがる。
「よし、周囲の安全を確認!」
スペースハンマーはなくしてしまったが、ステーション3に安全に帰還できなければ、報酬を受け取ることもできないし、だいたい生存も危うくなる。
仲間と一緒にパーティを組んで活動すれば生存確率は飛躍的に上がるのはわかっている。だが、宇宙空間で信頼できる仲間を見つけるのは困難であることもまた確かなことだ。
宇宙での信頼関係はパートナーいない歴=年齢のカナタには想像するしかないのであるが、結婚のような関係と置き換えることができると言われている。
結婚の概念も昔とは随分と違うらしいが、信頼できる男女が、生涯に渡ってペアを組み、お互いを愛し合う関係だとカナタは思っている。
まあ、そこまで重くないにしても、お互いの命を預け合う関係になる以上、そうそう簡単にパートナーが見つかると思えない。だから、カナタのようなソロを基本とする学生Sエクスは少なくない。
「さあ、帰ろう」
宇宙空間においてソロであってもカナタはいちいち声に出してしゃべることにしている。そうしないとカナタ自身の自我がどこか遠くにいってしまいそうな気がするから、である。
モニタのメニューからナビゲーションを起動する。
そしてインターワープステーション3ベータを目的地にセットする。この簡易ナビは全Sエクスに装備が義務付けられている。最低限の機能しか持たないが、カナタのように学生にとって、確実に帰還するための重要な装備だ。




