謎のお姉さんキャラ
「ここは……」
リアスが目を覚めると、そこは壁で囲まれた牢獄だった。
ベッドに寝かされて、手は鎖で繋がれている状態だ。
確か私は、ジンさんと別れた後――。
◇
私は今日の出来事に想いを馳せて歩いていた。
「ちゃんとできていたでしょうしか。引かれたりしてはないでしょうか」
今日の行動に恥ずかしさを抱いていた。どう言う距離感で、接するのが良いのかまだ分からなく、胸を締め付ける。
ジンさんを私に付き合わせて、戸惑わせ。私は酷い人だ。
この寂しいような、何かを求めるような、胸をズキズキと苦しめる、上手く言葉にできない感覚。
冷たい空気の中ただ1人、孤独に浸った。
ただその瞬間。
後ろから突如、口に布を当てられた。
「あっ……」
おそらく睡眠剤がつけられていたのだろう。
私の意識はそこで途切れた。
◇
ほんの少しの静寂。その後にすぐに声がした。
「起きたようだな」
そう言ったのは白衣に緑色の髪を後ろで結んだ男だった。
「貴方は」
「クギース」
迷いもせず、すぐに自分の名を名乗った。それだけ自信があると伺える。
「何故私を」
「それは僕が答える必要がない」
「答えて欲しいの」
「知りたいのか?」
「ええ」
「フフフッ仕方ない。ならば教えてやろう」
そして語り始めた。
「龍の血の適合実験だ」
「龍の血?」
「伍代龍の血と悪魔の血を混ぜ合わせた物だ。君ら代々龍人の血を引く家系の人間は、龍の血に強く反応し、より効力を高める事ができるんだ。これでわかったか?短くまとめてやったのだから理解したよな」
「大体は」
リアスは思った。この人は自分の研究している事はペラペラと話してくれると。
「なら良い。その龍の血の適合実験を行うと同時にさらに完成度を高める為にも、君の血が必要だ。もちろん君だけじゃない。ここには他にも龍人に関わる人物を監禁してある。中には耐えられず死んだものもいるが……君は耐えられるかな?」
「ッ!」
「じゃあ……早速血を抜かせてもらう」
リアスは覚悟した。死ぬかもしれないと言われて平然としていられる精神力はないが、ただ抗うすべがないため耐えるしかない。
「来い」
クギースがそう扉の方を見て言った。するとコツコツコツと可憐な足音を立てて、白衣に銀髪ポニーテールのお姉さんと言った雰囲気の女性が入ってきた。
「新人だが、まぁいいだろう。しっかりと血を適度に抜き続けろ。血は多い方がいい。抜きすぎて死なせるなよ」
「わかってるわ」
そう言ってクギースは急ぎ足で出て行った。
「初めまして。私はカーナ」
「初めまして……」
何故だろう。ジンの雰囲気と同じようなものをほんの少し感じた。
「痛いかもだけど、我慢してね」
「ッ!」
リアスの腕に注射針を丁寧に慣れた手つきで刺した。
腕から血を抜かれる感覚が妙に癖になる。血が吸われるのが分かる。力が上手く入らない。
パックの中に鮮やかな赤の血が溜まっていく。
「はい。これでお終い」
カーナは道具を手際よく片付けた。
そして堂々とヒールの音を響かせながら歩きだす。
「後は自分でできるよね」
カーナはそう言い残して去って行った。
「待ってッ」
体を起こした。起こせたのだ。鎖で繋がれていたはずが。
鎖は綺麗に真っ二つに割れていた。
『後は任せましょうか。彼が来てくれたみたいです』
カーナ。いや、その姿は黒のフォーマルスーツにロングコートを羽織るリーナへと変わっていた。
「なんで助けてくれたの……」
分からない。彼女は一体。
ただ今は動かなければいけない。
その牢獄を出ると、長い廊下が続いていた。
他の牢獄にも私同様に監禁されている子達が居たが、今は助けてあげられる時間がないと、割り振り、まずは外に逃げてそれから助ける事にした。
しばらく廊下を歩くと、開けた空間に出た。
そこは円形状の空間で、螺旋状に続く階段が驚くほど高く続いている。
「一体どこまで続いているのだろう」
暗さも相まって天井は見えなかった。
「こんな所一体何処に」
すると、暗闇から突如として声がした。
「おや、迷子の子猫ちゃんかな?」
「誰!」
「覚えてらっしゃないのですか?ゼイガルニクですよ」
「ッ!何でここに……」
その人は私が知っている人であった。
それも子供の頃から。
「ここは私の施設なのですよ」
「それはどう言う……」
「とにかく、ここを出ましょうか。この階段を上がれば地上に着きます」
リアスはいまだにゼイガルニクの言葉を理解できていなかった。
何故ここに居て、何故この施設を所有していて、何故地上へ誘うのか。
「わ、わかりました」
それでも今は従うしかない。
「いい子だ」
そして螺旋階段を一歩一歩と登って行く。
「君は昔から人の言う事を良く聞くいい子だったね」
「ゼイガルニク叔父様の事はよく覚えています」
忘れられるはずもない。あの頃の私にとっては、兄以外に頼れる大人だったからだ。
「それは嬉しいね」
ゼイガルニクの声が不気味にもこの広い空間に響く。
足音と2人の声だけしか聞こえないと言う事に加え、この螺旋階段の高さ。
いろんな恐怖が渦巻いた。
「あの頃のリアスはよく泣いていたね」
「ええ」
「今はこんなにも立派に成長してくれて、本当に嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「それは私からも言うべきだね。ありがとう」
「それは……」
「困惑しているかい?」
「はい……」
「大丈夫だ。全ては一つとなり、素晴らしき終わりを迎える」
「……どう言うことかわからないのですが」
「今は分からなくていい。安心して私について来れば大丈夫だ」
「そう……ですか」
やはり何処かおかしい。私が知っているゼイガルニク叔父様はもっと優しいはずだった。今も変わってはいないけれど、何処かおかしい。
「一つ質問いいですか?」
「何かな?」
「私を誘拐したのはゼイガルニク叔父様ですよね」
「どうしてそう思うのかな?」
「あの、私の口を塞いだ布です。あれはゼイガルニク叔父様が愛用している物と似ていました」
「……良く見ているね。そうだ、私だ。昔から君の目は鋭い」
「何故」
「必要だったからさ」
「必要?あのクギースが言っていた龍の血に関係があるんですか」
「ああ。出来れば君には知らずに居てもらいたかったが、あのクギースは口が歯止めを効かなかったみたいだな」
「何故そんなことをッ」
「おとなしくしてもらいたい。君を傷つけてしまっては本末転倒なんだ。何も言わず、何も抵抗せず、私について来なさい」
「……それに従うとでも?」
「ならば力ずくになってしまう。それは望まないだろう?」
「それでも私は否定します」
「残念だがそれは出来ない。君はもう私達の物なのだ」
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