ラブコメは事件の前触れ
人は、お互いに干渉し支え合って生活をしている。
表面的な繋がりはなくとも、必ず裏の繋がりがあるものだ。
もちろん僕にもある。家族や、今世の友人、社会を成り立たせる社会人の皆さん。
全員がいるから今の生活が出来ているのだ。
それを踏まえて、人と言うものは繋がりがないと生きていけないことが分かる。
みんなもわかったな?
そう、そこまではいいのだが、僕が今何故リアスに手を繋がられているのかは、未だにわかってはいない。物理的な繋がりはそこまで必要ではないのだ。
リアスは逸れると、危ないとしか言われて抗う暇もなく手を繋がれているわけだが、何故僕は手を繋がれている?
何故こんな美少女に手を繋がれて歩いているのだろうか。
その答えが今出た。
それはつまりリアスは僕を逃さない。何があっても逃げる事は許さないと言う意味だ。
リアスのプライドを傷つけてしまったことの恨みがあるはずだから、その可能性は極めて高い。
つまり今日のお出掛けで僕を飼い慣らすつもりなんだ。
あえて弱そうに見せて、僕を油断させようとしているんだ。
ほら、リアスの顔が赤くなってる。相当緊張している。僕を逃さないか不安でね。
ただ僕はそんな手には引っかからない。僕はそんなやわじゃないんだ。
「リアスちょっと待って」
「はいッ」
「僕は逃げないから、そんなに急がないでくれ」
「す、すみませんでした。頭が真っ白になってしまって」
と、慌ててリアスは僕の手を離す。
「じゃあ行きましょう」
と、歩き出していった。
まぁ仕方ない。ちょっと怒らせたかもだけど仕方ないのだ。
そして人混みの中をしばらく歩いていくと、リアスが僕を見て言った。
「ここです」
「立派だね」
お店はバス同様ダークブラウンを基調とした外観で、中の光と対照的でお洒落だ。
こんなセンスの良さそうな店を選ぶなんて、さすがは女子。
ただ少しお洒落になりすぎるかもしれないからそこは調整が必要だ。
やっぱり人に任せるって楽。
楽ってのはいいものだ。僕は必要なものにしかエネルギーを使いたくないから、少しでも楽できる事は僕にとって最高のお礼となる。ありがとうリアスよ。そして僕をミンチにしないでね。
お店の中はまるで異世界。異世界の中に異世界だ。
それほどの内装だった。
「なんか凄いね」
「そうですね」
「キラキラだ」
「キラキラです」
ほぼ幼稚園児と保育士の会話を僕達は繰り広げた。
沢山の質の良い服が天井のライトで照らされている。
床や壁の味のある木が落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「沢山あるので色々試しましょう!」
リアスの目が輝いている。
「リアスは服好き?」
「はい!一応私も女の子ですからね」
いや誰も女の子じゃないなんて見てないんだが。
「じゃあ、リアス」
「はい」
「僕の私服に、似合う落ち着いた服を探してはくれないか」
「わかりました。欲しいのは数着で良いですか?」
「うん、いいよ」
そしてリアスはお店の中を子供のように楽しみながら見て回った。
「決まりました。試着してみましょう!」
さて、お手並み拝見と行こうか。
「ではお任せください」
そのまま店員の人に試着室に連れてかれて、強引に着替えさせられた。
そしてカーテンが開かれる。
「なんか間違ってない?」
何故か執事服。いやおかしいだろ。
「……ッ!似合ってますよ!可愛らしいです」
可愛らしい要素どこにとは思うけど、とりあえず褒められたなら感謝を示そう。
「ありがとう。ただよくこんな服あったね」
「ちゃんとした職服ではあるので」
「じゃなくてこれはどう言うことだ?将来は執事をしていると?」
「え、えっと……」
こりゃ僕で遊んだな。
「似合うと思って?」
「うん」
「本当なんですよ?」
「うんうん」
まぁそこからはちゃんとしていた。
落ち着いた色で装飾もそこまで派手じゃない。
まさに僕好みを選んでくれた。
上下一組を合計三着。うーん。本当にありがたい。
「リアスさん?」
「はい!」
「何故執事服まで購入しようとしているのかな?」
「――私用に」
「リアスが?」
「……はい」
「本当に?」
「本、当……」
「そうか」
本当なら仕方ない。
そして服を購入し、店を出た。
女が男ものを着てもいいのだ。
僕はリアスを見つめた。
「なんでそんな目で見るんですか!」
「なんでもないよ」
「嘘ですね」
「嘘じゃないよ」
僕はそっぽ向いて遠くを見つめるようにボーっとした顔で、そう言った。
「なにかある人の顔です」
「――リアスが男物を着るなんて、と」
「プ、プレゼントしたい方がいたのです」
そう慌てて、リアスは言った。
「そうなんだ」
「はい」
「そろそろお昼にしない?」
「いいですよ」
「ただ今は僕お金がないんだ。今日のために貯めたお金を持ってきたんだけど、ヤンキーに絡まれて、全部取られてしまったんだ」
「それは災難でしたね。私はお金には余裕があるのでもしよろしければ」
「いいの!?ならよろしく!」
よっしゃ、お昼奢ってもらう作戦成功だ!
「あらかじめ調べておいたのでそこに行きましょう」
流石リアス。頼りになるな。
ちなみにリアスも一着ほど買ってた。
落ち着いた雰囲気の服もリアスが着たら、なんと言う事でしょう。あっという間に高級感あふれるお洒落な服に大変身!
こりゃ凄い。
そしてリアスが調べてきてくれたと言うお店に向かった。
ここから300メートルくらい歩いたところにある結構近いところだ。
「ここが」
「はい」
そこは、ザ・レストランと言った感じのお店だった。白い壁に、暗い茶色の柱、ガラスの窓。植物まで添えられた見た目は、庶民が入りにくい雰囲気を最大にまで高めていた。
流石は侯爵令嬢。選ぶ店もこんな高級そうな店なのか。
「入りましょう」
中は涼しく、そして貴族達がいっぱいだ。
もちろんこんなところは僕は場違いだ。
ただでさえ、リアスと一緒にいるだけでも場違いだと言うのに。
と、思ったが、とりあえず奢ってもらえるみたいなのでいいとしよう。
そして頼んだのは、学食でもよく食べるハンバーグ。ただここはレストラン。無駄に食べ物に装飾がついている。
こう言うのって要らないよな。ただハンバーグとソース、野菜とかだけでいいのに。
ソースとかも一種類でいいんだよ。
そう思ったが、食べてみると美味しかったので今言った事は無かったことにしよう。
それからも色々街中を歩き回って本やら魔道具やらと買ったり、試したり。
そして時は流れ陽は沈みかけ、影が街を覆っていった。
暗い街中にポツポツと明るい光が灯り始める。
これでお出掛けも終盤。なんとか耐えに耐えて、やっとここまで来た。
これでやっと終わり。
リアスに付き合っていたらこんなにも遅くなってしまったため少し時間が勿体無い気がした。ただ服を買いに来ただけだったのに。
「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「ああ。そうだね。服もありがとうね」
「いえ。喜んでもらえたので良かったです」
「そう。じゃバイバイ。また明後日」
「はい。また明後日……」
リアスは少し元気がないように見えた。そう思ったのも束の間、リアスはその冷たい背中を向けて歩き出す。
「これでラブコメも終わりだ。ハァ〜疲れた。帰って早く寝よ」
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