ラブロマンスは早朝に――じゃねぇよ!!
僕は憂鬱な気持ちで目覚めた。
「あぁなんと綺麗で残酷な朝なのだろう」
こんな朝には寝坊が似合う。
と、言うわけであと十分だけ寝よう。そうだ。あと十分。いや、二十分が最適か。
すると横の部屋から大声で怒鳴る迷惑な騒音がせっかくの眠気を覚ましてしまった。
『は?私は悪くないし、あんたが浮気したのが悪いんでしょ?』
『そう言うお前だって、他の男と仲良くしてたじゃねぇか』
『は?なんで私が責められなきゃいけないわけ?元はと言えばあんたが浮気しなければいい話でしょ?!』
『だから何度も言ってるだろ。俺は浮気してないんだよ。いい加減話聞けって』
『嘘よ。そうやってまた私を騙すのね』
『信じてくれよ』
『何度も裏切られた。だから信じなくなったの』
『確かにそうかもしれない。俺は君を何度も何度も裏切ってしまった』
『ほら……だからあなたが』
『でも、それでも君を愛している。君以外を愛すことなんてできないんだッ』
『そう言ってまた裏切るんでしょ?!』
『裏切らない。それは断言する。だが、これから2人で歩んでいく上で、お互いに勘違いしてしまうこともあるだろ?だからこそ話し合おう。そして支え合おう』
『たっちゃんッ!』
『みっちゃん!』
『大好きだッ』
『私もッ』
と薄い壁越しに聞こえた。聞きたくはなかったが、聞こえたのだ。
「大好きだッじゃねぇよ!うるせぇ!」
何故早朝からラブロマンス繰り広げてんだよ。
こっちはせっかくの二度寝をしようとしているってのに、眠気吹っ飛んだじゃないか。
ケンカしてんだか、愛を確かめ合ってんだか。はっきりさせろ!そして黙れ!
「あぁ〜もう。起きるか……」
ゆっくりと重たい体を起こして、せっせと準備を始める。
選んだ服を着て、歯を磨き、髪の毛をいい目立たなさにセットッ。
最後は寝癖を少々。
とにかくここは目立たないようにしなければ行けない。ただでさえ、美少女とのデートなのだ。
服と飯をタダでいただく代わりに、僕はこの屈辱を味わい代償を支払わないと行けない。
「よしこれで準備は完璧。あとは今日を乗り切るのみ」
そして靴を履き、扉を開けた。
いつも通りの寮。静かで、穏やかな太陽。
気持ちがいい。さっきの不快は一瞬で飛んでいった。
長い廊下を歩き階段を下り、集合場所まで歩く。
集合場所はハゲの銅像の前。
「うーん立派な頭だ」
この像で、このレベルなら本物はどれくらいなんだろう。
「魔術学校の創設者なんですよ」
と、リアスが。
そんなち偉い人だったわけだ。
このハゲのおじさんは。
「おはよう」
「おはようございます」
「今日はいい天気だね」
「そうですね」
基本天気の話をしていればもつだろう作戦は失敗に終わった。
ならばここは服を褒める作戦だ。女子と出かける時は褒めるこれは、どこかのお婆ちゃんが言ってたから多分、確かだ。
「今日の服すごく似合ってるね」
リアスは白と黒を基調とする服を着ていて、黒の短いスカートがリアスの細く肌白い足を強調している。
「リアスはスタイルもいいし、肌も白いから落ち着いた色の服とよく合うね」
とりあえずは客観的に見てわかる事を言うべし。
「あ、ありがとうございます。ジンさんも似合ってると思います」
「ありがとう」
お世辞というやつだ。ただ僕にはまだ手がある。
外見は服だけじゃない。
「今日の髪もいいね。いつもはストレートだったけど、今日は編んでるんだね」
女子は髪が長い人が多いから色々アレンジできるんだろう。流石はお洒落。つまり女子だ。
それに主張を激しすぎない程よいアレンジだし、リアスになら僕の私服も完璧な物を選んでくれるはずだ。目立ちすぎない普通を!
いいキャラに出会えて僕は嬉しいよ。
「気づいてもらえてとても嬉しいです」
リアスは少し恥ずかしそうに言った。
んー。これは照れてるのか?いやそうしておこう。怒ってると思って過ごすのは居心地が悪いしね。楽しみたいとかじゃないと。
怒ってる人で遊ぶのって楽しいからね。感情に飲まれて馬鹿馬鹿しい理不尽なことを結論ではなく嫌味や煽りを何度も何度もぶつけてくる。
結局何が言いたいの?とか思うだろうが、皆んなはただ返事をすればいい。
そうだね。とか、はいはい。とかそんなかんじ。
ただそれでも、は?それしか言えないのか、と小学生みたいな対抗してきたら、目を見つめて黙りこめ。
思考を放棄して相手が焦るのを楽しむんだ。それで完璧。
「じ、じゃあ行きましょうか。色々調べて来たので安心してください」
「それはとても安心だ」
こうして僕達は歩き出した。
――バス停。
なんでこの世界にもバスがあるのかは知らないが、まぁそもそもこの世界が前の世界とにているからおかしいともいえない。
何故ならばまずこの世界には水と土地があるそして猫や犬や鳥、人などがいる。そして月がある。さらには物理法則もほとんど同じ。
違いと言えば魔力があることや魔物とかがいることくらいだ。
バスはダークブラウンの洒落た感じで、僕好みだ。こう言うものもいいよね。日本のあの安心感あるバスとは違い、お洒落を貫き通したかのようなバス。
「乗りましょうか」
「そだね」
中は電車に近い感じだった。
赤い座席に2人並んで座る。
他の客にはスーツと帽子のおじさんとか、まだ若い妊婦と子供とかが、バスにはいた。
ただその普通という日常に全く馴染んでないリアスさん。
一人だけオーラから違う。ただ座ってるだけなのに、人の目が自然とリアスに向かうのだ。
当然僕はただの置き物。それでいい。それがいいのだ。
「今日は人が少ないですね」
「いつも多いの?」
「はい。魔道具や本を買いに行くときによく乗るので」
「そうなんだ」
便利だよね。バス。
「なので今日は空いててよかったです」
リアスが微笑んだ。
「そうだね」
ただ緊張がリアスの思考をぐちゃくちゃに絡めさせていた。
リアスは今まで男の人とお出掛けをした事は小さい頃、家の使用人と街に行った時か、唯一可愛がってくれた兄とな上、田舎から王都に来たため、そもそも人にもあまり慣れていないのだ。
もちろん声をかけてくる人はいた。だが、どれもその容姿や家柄を狙ってのものばかりでリアス自身を見るものなど居なかった。
だからこそ今日のジンとのお出掛けには緊張していたのだ。
そして静寂が訪れる。
僕は気まずさが2割、暇だなが8割。
「リアスはいつもどんな魔術について調べてるの?」
とりあえず疑問をぶつける。
「いつもは基礎の伍代属性を調べてます」
「伍代属性か」
本当に基礎の基礎だ。まぁ何にも基礎は大事なのだ。
伍代属性ってのは、木、火、土、金、水の属性に分かれる物。ちなみにそれぞれの属性を司る守護龍神、または伍代龍ってのがいる。
うーん格好いいよね。いつかの休みに会いに行ってみようかなとは思うんだけどどこにいるかはわかってないんだよな。
「ただ各属性の応用と言った感じですけどね」
「それでも凄いや」
「そうですか?」
「ああ」
「それは嬉しいです」
「ならよかった」
そしてバスが停まる。
「では行きましょう」
リアスと僕は立ち上がって出口に向かう。
「先に」
侯爵令嬢だし、それ以前に女の子だ。
どこかのお婆ちゃん知恵袋によると、とにかく女の子には贅沢させてあげることと、気を遣ってあげることだ。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
と、降りた先は街中の中心部。
沢山の人で賑わっている街はどこかダークさを感じる。人々の欲が集まってるからだろうな。
まぁそう言う雰囲気もいいでしょう。と、思う。
「ここから少し歩いたところにお店があります。人が多いので逸れないようにしてくださいね」
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