ヒロイン系の少女
武道場は前世の体育館程度の大きさだった。ちなみに数年前から剣術が流行り始めて、今や主流になりつつある。
昔は剣より魔術だったから、剣を極めし者が出てくる可能性が高まったのだ。今後に期待。
武道場に着くと、まずは道着に着替えさせられる。
特に目立った装飾とかはない白い道着だ。
まぁ洗練されてていいよね。すこし物足りない気もするけどいいだろう。
「では一年生は集まってくれ」
と、講師らしき人物が呼びかけた。
「初めまして。私の名はグフラン・ドース。一段の講師をしている」
と、話し始めた。内容は流派の説明や練習法とかだ。
そんな話を長々と聞かされた後やっと練習が始まった。
瞑想、魔力操作、素振り、対戦という流れで、基礎を大切にしている様だ。基礎は大切だ。基礎に偏りすぎても意味はないからそこの按配は気をつけなければいけない。
普通の剣術は洗練されてないからつまらないけど、この流派は剣神が作っただけあって洗練されていてとてもいい。新鮮だ。
それに一段なのに結構満足度は高い。まぁ初めての人向けだからウケがいいように頑張ってんだろ。きっとそうだ。
「なぁ。あの子可愛いよな」
そう言ったのは茶髪のチャラ男。合わせのペアになった人だ。それ以前に前の席のやつ。僕は話しかけてないけど、勝手に話しかけてくるから覚えられている。
オシャレに気を遣っているようなタイプで、ただ見た目の割にだいぶヘタレなやつだ。
確か名前は……。
「確かにそうだね。サム」
「誰だよそれ。どこの外国人と間違えてるわけだ?俺の名前はセン・スナシだよ」
あれ、間違ってたのか。結構自信あったんだけどな。
「いい加減覚えろよな」
「わかったよセン」
「よしそれであっているぞ」
と、上から目線なセン。
と、合わせが始まった。
ただの合わせだっていうのに思い切り当ててくる。チャンバラじゃないんだぞ。と、思うが、ここは僕ものろう。チャンバラも面白いのだ。
「この合わせで負けた方が罰ゲームだ。いいな?」
「罰ゲーム?ハッ僕に勝てるとでも?」
「それはこっちのセリフだね」
センは素人らしく木刀を思い切り振る。
結果は僕が負けた。
いや負けてあげたのだ。
「ハッハッハッ。俺の勝ちだ。見たか」
「流石だ〜」
と、適当に褒める。
「罰ゲームは……」
「罰ゲームは」
「パン買ってこい」
「なんだただのパシリじゃねぇか」
「悪いか?俺は今腹が減ったんだよ」
「そう」
もっと面白い罰ゲームが良かったな。これじゃつまらない。
罰ゲームはもっとこうイベントが待ち受けてるものだろ。
ただのパシリって。どうかしてると思わないか?納得いかない。
「仕方ない……」
と、武道場を抜け出して、購買へ向かう。
武道場からは真反対の位置にあって遠い。大きい学校でのはこういう移動が面倒くさいのが嫌な所だ。
自動化してくれないかな。廊下とか自動で動くようにしたらさ、階段をエスカレーターにしたり。流石に無理か。技術はあるだろうけど、導入はしないだろう。
自分の足で行くしかないのだ。せっかくならと、無駄に綺麗な内装を眺めながら僕はのんびり歩いた。
どれほど歩いただろうか。わからないがとにかく歩いた。
やっとの思いで見つけた購買は学食の隣にあった。
昼だからか結構人は多い。どこをみても美男美女。それも貴族。
正直顔が整ってない奴を見つける方が大変だ。何故かイラついたのは置いといて、残っているパンを三つ買った。
セン用と僕用。
僕が二つだ。せっかく来たんだから買わなきゃ損さ。
帰りは、気分を変え鼻歌を披露し、日の光に照らされて目を瞑りながら歩く。
「平和だな〜つまらん」
学校なら悪の組織が忍び込んでるか、学校占拠とかテロとか、誘拐事件とか、殺害事件と、起きていいだろ。なんなら起きてもらわないと困る。
せっかくの学校なんだからさ。
前世では学校なんて行く時はほとんど隅で寝ているか修行してるだけで、イベントなんかなかった。そもそも行ってることの方が珍しいけど。
と、のんびりと歩いていると少女とぶつかった。
少女は、沢山の書類を山のように積み上げて抱えていたせいで、書類が廊下に散乱した。
少女も考え事でもしていたのだろう。
「ごめんなさいッ。考え事をしていて……」
やっぱりだ。
「大丈夫だよ。僕も考え事をしていて前をよくみてなかった」
少女は学校から支給された制服に、銀髪ロングに青目。
外見は美少女だねって感じ。
少女はしゃがんで散乱した書類を拾う。僕もしゃがんで手伝った。
「これで全部かな」
「ありがとうございます」
「いいよ」
僕は彼女が魔術好きと言うことに気づいた。
書類を拾っている時、何が書いてあるんだろうとみて見ると、魔術式やら、計算がズラーっと書かれていた。
「その書類を見るに君は学者なの?」
「いえ、ただの魔術師です」
「そう」
ただの魔術師か。
「…‥グゥゥゥ」
その瞬間、少女のお腹が鳴った。
そして沈黙。
「……これ食べる?」
その沈黙を破り、僕の分のパンを一つ差し出す。
僕の大切なパン。僕のなけなしのお金で買ったパン。それの大切さは言うまでもない。
ただ今その時が来てしまった。イベントに繋がるはずの出来事なのだ。ここで出さなければ今後に影響する可能性がある。
これを渡さなければいけない。僕の直感が叫んだ。
僕のッ。僕のパァァァンー!
それでもこれは僕のッパンなんだ……。いやあげなければ。
もう後悔はしない。
僕は忘れなんかしないよ。この数分感僕の食欲を掻き立ててくれた君の事は。絶対に忘れたりはしないッ!
「いいの?でも私はお腹減ってないからいいですよ。あれは……私の秘める魔力がすこし溢れそうになっただけですの」
「いいんだ。これは僕の覚悟。受け取ってくれ」
パン……。
「グゥゥゥ」
また少女のお腹が鳴った。
「い、いいんだ。このパンも君みたいな美少女に食べてもらった方が嬉しいさ」
「ッ……わかりました」
少女は美少女と言われた事に少し照れたのか、顔を赤くしながら受け取った。
「君はもう自由だ」
「え?」
「いや。なんでもない。あ、そうそう。君名前なんていうの?」
と、気持ちを切り替えて言った。
「私はリアス・リーンです」
「僕はジンよろしく」
「ええ、よろしくお願いします」
そしてリアスは書類を持ち、プルプルと足を震えさせながらも、小さく僕に手を振った。
「……またね」
と、少しぎこちない小さなまたねを言って去っていった。
「うんまた」
またねか。言われたことないな。
それにしてもリアス……。
もしかして、アレなんじゃないか。
アレだよアレ。
ヒロイン系なんじゃないか?
廊下で美少女とぶつかって……。これは確定演出。
ヒロインというものが実際に存在するのかは知らないがヒロイン系ではある。
何かイベントの鍵になる可能性があると言う事だ。
誰のヒロインかは知らないが、まぁいずれ主人公も出てくるはずだ。
そして武道場。
「おい遅かったじゃん」
センが言った。
「ちょっと混んでてね」
「そうか。で、例の物は」
「これだ」
僕は構えて、センと十分な距離を取る。
そして手を引いて、流れるようにパンを出す。
「これは」
「揚げたてカレーパンだッ」
「最高の選択だ。褒めて遣わす」
「褒めるだけにしといて」
「仕方ない奴め」
と、午後の部業も終わった。
そして学校の鐘が鳴る。
「やっぱ教会だな」
その鐘は想像する学校の鐘ではなく完全に教会とかの鐘だった。
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