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ゴリ押しかよ

 少年の胸の傷は一瞬にして塞がった。


 ラウハートは目を疑った。

 

 確かに斬った。傷が入って血が飛び散った。


 その傷が塞がる?


 ありえない。不可能だ。


 そんな事はできない。そんな事は人に出来ることではない。


「何故、何が、どうして!」


「……簡単な話だ。ただ塞いだ。それだけ」


「は?どう言うことだ。それは、そんな事は出来るはずがッ!」


 少年の笑みは不気味だった。


「出来ない?それは君が決めることではないだろう」


 正論であった。だが、それでも理解し難い。


「貴様は……貴様は何なんだ!一体何者なんだ!」


 内に秘めた疑問を言葉にして少年にぶつけた。


 静寂が訪れる。


 数秒経って少年は言った。


「僕は――」


 そう言った瞬間風が舞うように吹いた。


「私の名は日月(ヒヅキ)。光と闇を統べる者」


 黒スーツロングコートに白の装飾が入った服を纏う、白髪赤目の少年がそこにはいた。


「……ッまさか。き、貴様はッ――」


 俺はあの日を忘れた事はない。


 月が見えない夜。俺は森で盗賊を狩っていた。


 冷たい空気の中。火の周りを囲って雑談を繰り広げる盗賊達を一掃した。


 それは自分の剣を確かめるために行っていた行為だ。


 ただ盗賊の死体に背を向けた時、足音がした。


 振り返ると、黒スーツにロングコートを纏う少年がいた。


 暗くて顔は見えなかったが、その存在は異質であった。


 その少年は一歩で目の前まで近づき、黒の珍しい形の剣を流れる様に振るった。


 防御をするが、完全には防げない。そんな理不尽な剣だった。

 

 そしてその時初めて俺は負けた。


 腕を一本失ったが、逃げることに成功したのだ。命があるだけマシだった。


 剣士としてあれほどの屈辱はない。だからこそ俺は強くならなければいけない。


 いつかあの少年を見返してやるために。


 そして今。その時が来た。あれからの鍛錬は困難を極めた。片腕がない感覚になれるのには一ヶ月はかかっただろう。


 だが、それも今この瞬間のため。


「終わらせてやる」


「来い」


 ラウハートは怒りに任せて剣を振る。


 ピリピリとした魔力。


 剣は今までのどの攻撃よりも重く、醜く、そして美しい一撃だった。


 が、それすらも止められる。


 少年の手には漆黒の刀が握られていた。


「その剣、やはりか」


 僕は思った。何言ってんだ?と。


 まぁわからないし、仕方ない。


 けれどいい。すごく良い。


「もっとだ」


「舐めるなぁぁぁぁあああ!」


 ラウハートは剣を振る。それは力強く、努力の積み重ねの結晶であった。


 努力するのはいい。


 ただ全て力任せは良くない。


「力の使い方を見誤るなよ」


 その言葉はラウハートに強く残った。自分の力を否定されたからである。


「間違ってるとでも言うのか?」


「ああ。間違っている。断言しよう」


 ラウハートの怒りは頂点に達する。


「そうか。だがもう遅い!」


 一歩の踏み込みから全ての動きが威力を増した。


 魔力の性質は人それぞれ違う。だからこそ自分に合った使い方が必要なのだ。


 が、今のラウハート君の使い方は無理やりパンクさせて乗っ取ってる状態だ。それは本来のポテンシャルを潰す行為。


 それに力で無理やりは格好悪いし効率も悪い。


「だから君は、私には勝てない」


「何をッ。俺は絶対にッ!」


 僕は一歩踏み込む。


 魔力は最小限。使う細胞一つ一つに丁寧に無駄なく流す。


 圧縮と爆破を繰り返し、圧倒的な反発力を溜める。


 その魔力を解放し踏み込んで進む速さは、実力者でも完璧に見極めるのは難しいだろう。


 僕の刀はラウハートの片腕を捉えていた。


「この程度も防げない。これが証拠だ」


 刀はラウハートの皮膚を薄く斬っていた。


 ギリギリで腕を落とされずに済んだが、敵わないと言う確信がラウハートの心を蝕む。


 絶望ですらなかった。


「俺は……」


 その瞬間、ラウハートは歯を食いしばった。


 そしてラウハートの魔力が爆破するように膨れ上がる。


「最終手段を取ったか」


 それは魔力を出し切り脳のリミッターを外し一時的に常人を超える動きを可能にする行為。


 そしてそれは実質自滅でもある。


 それを使えば最後。


 もう元に戻る事はできない。


 力を出せる代わりに脳は腐り、体はボロボロに腐敗し回復は不可。


 痛みを味わい続け苦しみながら死ぬことになる。


「俺は、俺はッ!絶対にぃいい!!」


「仕方ない奴だな。最後を付き合ってやろう」


 ただの一歩で空気が震えて風が舞う。


 ただもたらされるのは破壊。


 化け物と化したラウハートは素速く絶大威力を持つ攻撃を連発する。


 刀で受け流して防ぐ。


 幾度も攻撃を重ねていく。


 が、体が当然耐えれない。


「――ガハッ。まだまだ俺は……」


「時間の無駄だ」


 結局一瞬の力なのだ。一瞬。そしてたった一回だけと言うのに命を捨てる。


「そんなはずは……」


「終わりにしよう」


「まだ……」


 僕は刀を優しく握る。


 重力に合わせるように重心を前に落として一気に加速し、一閃。


 血が飛び散って赤く染まる。


 切り口は美しいほど綺麗。


 一瞬にしてラウハートの命は途絶えた。


「さらばだ。フッ」


 ……これだよこれ。最高だ!


 すごく良い演出だった。何よりティマがいい繋ぎ方をしてくれたお陰で僕の登場が完璧になった。


 ありがとうティマよ。


「と、ティマがケガしてるんだった」


 と、変身を解いてティマに近づいた。


 ささっと治療して数分もするとティマは立ち上がった。


 さすがティマだ。


「遅くなった」


「あなたが無事で良かった」


「よくここがわかったね」


「魔力を追ったの」


「なるほど」


「見つけるのが遅れてしまったけれどね」


「いや、あのタイミングで良かったんだ」


「そう……ならよかった」


 と、そんな中。一人の少女が地べたに座っていた。


 そうだ。この子は……。


 僕はゆっくりとその子に近づいた。


 少女は僕を見上げている。


 そして僕は優しく手を差し伸べた。


「僕の元へ来い」


 その一言は少女の心の奥深くに響いた。


 そして肌白い手を伸ばして掴む。


「今日から君の名前はリーナだ」


「リーナ……。私はリーナ」


 少女の目からは泪がポツリとこぼれ落ちた。


「私の全てを捧げます」


「じゃあよろしくね」


 そしてティマが言う。


「私はティマよ」


「……よろしくお願いします」


 てな感じで二人目の配下をゲットした。122という名前だったしリーナに変えて正解だよね。


 そのあとは、捕まっていた後輩先輩を助け出したり、このアジトの中を調べたりしてから帰った。


 リーナはまだ慣れないだろうけど、これから頑張ってもらわないとね。


 ティマにも今度お礼をしてあげないとだな。


 そして僕は屋敷に戻り窓から部屋に入りベッドに飛び込んだ。


「ふぁ〜。今日は楽しかったな」


 誘拐にボス、新しい仲間。今日は楽しい1日だった。


 それにあの演出は最高だった。


 本当に感謝。それをさせてくれたあのラウハート君ありがとう。


 天国でゆっくり休んでね。


 どちらかといえば地獄か?


 まぁ細かいことはいいだろう。


 翌朝。


 家族四人に色々問い詰められた。


 それから1週間くらいはずっと近くに居てめんどくさかったが、まぁ何とか誤魔化せた。


 第11話の最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。もしよろしければ、作品の応援をお願いします!


画面下部にある 【ブックマーク追加】【★★★★★】を押していただくと嬉しいです。


 第12話もよろしくお願いします。


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