第七話 父親失格と、初めての叫び
お読みいただきありがとうございます。
この作品は 毎日20時に更新 しています。
今日は 第7話 です。
父と子が初めて“本音”をぶつけ合う回です。
ゆっくりお楽しみください。
朝の空気は冷たかった。
昨日の“最後の一日”が終わり、
今日が――旅立ちの日。
父さんは家の前で、
古いマントを広げていた。
「これを持っていけ。
寒さはしのげる」
「……うん」
声が震える。
父さんは気づいているのか、いないのか、
いつも通りの顔で荷物を整えていた。
「食料は三日分。
村を抜けたら街道に出る。
そこからは……」
「父さん」
俺は耐えきれず、言葉を遮った。
「本当に……来ないの?」
父さんの手が止まる。
「……行けないよ、ハエル」
「なんで!?
一緒に行けばいいじゃん!!
俺、父さんと一緒がいいよ!!」
父さんはゆっくり振り返った。
その目は、どこか遠くを見ているようだった。
「……俺はもう長くない」
「そんなの……!」
「嘘じゃない」
父さんは胸に手を当てた。
その手が、わずかに震えている。
「堕天した時点で……俺の寿命は削られ続けてる。
もう……限界なんだ」
「そんなの……そんなの嫌だよ……!」
涙がこぼれた。
父さんは優しく笑った。
「泣くな。
お前は強い子だ」
「強くなんてない!!
父さんがいないと……俺……!」
「ハエル」
父さんの声が、少しだけ低くなった。
「俺は……父親失格だよ」
胸が凍りついた。
「……なんで……そんなこと言うの……?」
「母さんも……村も……守れなかった。
お前に……何ひとつ残してやれなかった。
俺は……父親なんて名乗る資格……」
「違う!!」
気づいたら叫んでいた。
「違うよ!!
父さんは……俺の父さんだよ!!
俺を育ててくれた!!
守ってくれた!!
笑ってくれた!!
怒ってくれた!!
抱きしめてくれた!!
父さんが父親失格なら……
俺は……俺はどうなるんだよ!!」
父さんの目が揺れた。
「ハエル……」
「俺は……父さんの息子だよ……
父さんの息子で……よかったんだよ……!」
父さんはゆっくり近づき、
俺の頭に手を置いた。
その手は、いつもより冷たかった。
「……ありがとう」
その声は、震えていた。
「お前に……そう言ってもらえるなんて……
俺は……幸せ者だな……」
父さんは俺を抱きしめた。
強く、強く。
その腕の力が、
ほんの少し弱くなっていることに気づいてしまって、
胸が痛くなった。
「ハエル。
行け」
「……やだ」
「行け。
お前には未来がある。
俺には……もうない」
その言葉が、
胸に深く刺さった。
「……父さん」
「なんだ」
「帰ってくるから。
絶対に……帰ってくるから」
父さんは笑った。
どこか寂しそうに、でも誇らしげに。
「……ああ。
待ってるよ」
その笑顔が、
なぜか胸を締め付けた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
この作品は 毎日20時に更新 しています。
次回:第8話「父の影が薄れていく」
明日の20時に投稿されます。
引き続きよろしくお願いします。




