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魔族に育てられた俺、 気づけば光と闇の境界に立っていた  作者: CYABUSAN(ちゃぶさん
第一章:父と子の物語(第1〜10話)

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五十話 分かっていないことのリスト

49話で、骨隆々村へ向かうことが決まりました。


今回は、少し立ち止まる話です。

セラが——調査員らしく、状況を整理します。

街道の途中、大きな木の下で休憩を取ることになった。


「……少し、整理させてください」

セラが荷物から羊皮紙を取り出した。


「整理?」


「今、分かっていることと、分かっていないことです。頭の中が、少し混乱してきたので」


「セラでも混乱するんだな」


「……失礼ですね。当然、混乱します。だから整理するんです。」

セラは紙に文字を書き始めた。

「まず——分かっていないことから並べます」


「多そうだな」


「多いです」


セラは静かにペンを走らせた。

「一つ目。なぜ、ハエルの中に闇の力があるのか」


「……それは、俺も知りたい」

俺は正直に言った。

「父さんは、そのことを話す前に……」


言葉が、少し詰まった。

「話す前に、亡くなった」


セラは静かに頷いた。

「ええ。だから——これは、今も分かっていません」


「二つ目。リナの力の正体」


「私の……」

リナが少し身を乗り出した。


「巫女の血統らしい、というところまでは分かっています。でも——なぜ犬の耳や尻尾が現れたのか、どこまでの力があるのか、詳しいことは分かっていません」


「……そうですね」


「三つ目。私が、規律を破っても——」


セラは少し言葉を止めた。

「……なぜ、罰を受けていないのか」


その言葉に、少し重い空気が流れた。


「これも、まだ分かっていません」


「セラ……」


「大丈夫です。続けます」

セラは咳払いした。

「四つ目。教団の目的」


「まだほとんど何も分かってないな」


「はい。存在の噂を知っているだけです」


「五つ目——」

セラは少し間を置いた。

「神が、なぜ今のような姿になったのか。その詳しい経緯です」


「……それも、まだか」


「ええ。今のような状態にある、という結果だけは分かっています。でも——なぜそうなったのか、根本の原因はまだ誰も分かっていません」


ルシェが腕を組んだ。

「……知らないことだらけだな」


「そうなんです」


セラは少し困ったように言った。

「六つ目。ハエルの——」


セラは俺をちらっと見た。

「……闇の、新しい変化について」


俺は少し黙った。

「それは——」


セラは静かに続けた。


「でも、いつか解決しないといけない問題として、書いておきます」


「……ああ」


「七つ目。ソロの首輪の状態」


「あれも、まだ限界が近いままだったな」


「はい。いつか、根本的な対処が必要になると思います」


セラは紙を見つめた。

「……こうして並べると、分からないことばかりですね」


リナが少し不安そうに言った。

「大丈夫でしょうか、私たち」


セラは少し考えて、首を振った。

「分からないことが多いのは、悪いことじゃないと思います」


「そうですか?」


「知らないことに気づけているから、調べようとできます。気づいていなかったら、もっと危険だったと思います」


その言葉に、リナは少し安心したように頷いた。

「……じゃあ、分かっていることも書きましょう」


「はい」


セラは紙の別の場所に、また文字を書き始めた。

「一つ目。アスモスは、堕天した元天使で、人間を助けすぎたことがその理由だった」

「二つ目。骨隆々村で、ハエルの母親と出会い、村に受け入れられた」

「三つ目。村が騎士団に襲撃され、ハエルの母親が亡くなった」


セラは少し言葉を選んだ。

「……この辺りは、ハエルから聞いた話です。それ以上のことは、まだ分かっていません」


俺は黙って頷いた。


「四つ目。ザイルは、天界の中でも異常な存在で、私に執着している」


「……セラ」


「事実です」


セラは静かに続けた。

「五つ目。ガルドは、天界の命令に対して、少しずつ疑問を持ち始めている」

「六つ目。ハニエルは、アスモスの友人で、私たちに協力してくれる意志がある」

「七つ目——」


セラは少し間を置いた。

「骨隆々村に、真実を知る手がかりがあるかもしれない」


紙を見つめて、セラは小さく息をついた。

「……こうして見ると、分かっていることより、分かっていないことの方が多いですね」


「そうだな」

俺は紙を見た。

特に——一番上に書かれた「なぜ、ハエルの中に闇の力があるのか」という一文が、目に焼き付いた。


(父さん)

(教えてくれる前に、いなくなってしまったな)

「でも——」


俺は少し息を吸った。

「一個ずつ、潰していけばいい」


「……ええ」

セラは紙を丁寧に畳んだ。

「次の目的地は、骨隆々村です。そこで——手がかりを、探しましょう」


リナが頷いた。

「私も、頑張ります」


ルシェが立ち上がった。

「……行くか」


セラが最後に、静かに付け加えた。

「……あと」


「なんだ?」


セラは少し照れくさそうに言った。

「……九つ目。私たちの旅が、これからどうなっていくのか」


「それは——」


「分からないことです。でも——」


セラは俺たちを見た。

「一緒に、見つけていきたいと思います」


その言葉に、四人はしばらく黙っていた。

でも——それぞれの表情に、静かな決意があった。


「行くぞ」


「はい」


「ああ」


四人は、また街道を歩き始めた。


分からないことは多い。


でも——一歩ずつ、進んでいく。


その先に、骨隆々村があった。

50話、読んでくださってありがとうございます。


セラが、状況を整理してくれました。分かっていないことが九つ、分かっていることが八つ。


一番上に書かれた「なぜ、ハエルの中に闇の力があるのか」。これは、ハエル自身にとっても、まだ答えのない問いです。


「知らないことに気づけているから、調べようとできる」というセラの言葉。この物語は、そうやって少しずつ前に進んでいきます。


次回、骨隆々村へ到着します。


またお会いしましょう。

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