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魔族に育てられた俺、 気づけば光と闇の境界に立っていた  作者: CYABUSAN(ちゃぶさん
第一章:父と子の物語(第1〜10話)

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二十六話 少しだけ、強くなった

25話で、三人の距離が少しだけ近くなりました。

今回は軽めの話です。


特訓の成果が、少しずつ形になっていきます。


派手な展開はありませんが、確かな前進があります。

町を出て、三日が経った。


森を抜け、街道を進む。

次の町まではまだ距離があった。


「お腹空きましたね……」

リナが歩きながら呟く。


「もうすぐ休憩にしよう」


「はい!」


セラが前方を見据えた。

「……魔物の気配があります」


「多い?」


「三……いや、四匹です。そこまで強い反応ではありません」


俺は剣に手をかけた。

特訓のおかげで、以前より構えに迷いがなくなっていた。

「リナ、下がってて」


「はい」


森の奥から、低い唸り声が響いた。

木々の間から、狼型の魔物が姿を現す。

四匹。


「この前よりは少ないな」

俺は前に出た。


「セラ、見ててくれ。一人でやってみる」


「……無理はしないでください」


「分かってる」


一匹目が飛びかかってきた。

セラとの特訓で覚えた「目を見る」感覚を意識する。

魔物の動きに、視線の予兆はない。

でも——重心の動きなら読める。


(肩じゃなくて、腰だ)

魔物が踏み込む直前、腰がわずかに沈んだ。


俺は半歩横にずれた。


爪が空を切る。


その隙に、剣を一閃。

「……っ」

手応えがあった。


一匹目が地面に倒れる。


二匹目が横から来た。


今度は最初から重心を見ていた。

落ち着いて避け、足元を払う。

体勢を崩したところへ、剣を叩き込む。


三匹目、四匹目が同時に来た。

(さすがに二体同時は——)

そう思った瞬間、体が勝手に動いていた。


セラとの特訓で、何度も繰り返した動き。

一匹の攻撃を剣で受け流しながら、もう一匹を蹴り飛ばす。


着地と同時に、剣を構え直す。

「はああっ!」

最後の一匹を斬り伏せた。


静寂が戻る。


「……終わった」

俺は剣を収めた。


息は上がっていたけど、思っていたより楽だった。


「ハエルさん! すごいです! 今日、すごく綺麗な動きでした!」

リナが駆け寄ってくる。


「そうか?」


「はい! この前より全然、無駄がなかったです!」


セラが静かに歩み寄ってきた。

「……重心を見ていましたね」


「ああ。セラに教わった通りに」


「正確に実践できています」

セラは少しだけ、満足そうな表情を浮かべた。

「……成長していますね」


「セラのおかげだよ」


「私だけの成果ではありません。あなたの努力です」

珍しく、セラがまっすぐにそう言った。


俺は少しだけ照れくさくなった。

「……ありがとう」


「お礼を言われることでは——」


「言わせてくれ」


セラは少し黙って、小さく頷いた。

「……どういたしまして」


休憩のため、川辺で足を止めた。


リナが薬草を取り出しながら言った。

「ハエルさんの剣、見ててドキドキしました」


「危なかったか?」


「いえ、その……」

リナは少し言葉を選ぶように言った。

「強いハエルさんを見るの、ちょっと誇らしいというか……」


「……そうか」


「あ、変なこと言いました!?」


「いや、嬉しいよ」


リナは顔を赤くして、薬草に視線を落とした。


セラはその様子を、少し離れた場所で見ていた。

(……二人とも、いい関係を築いていますね)


セラはふと、自分の中の変化に気づいた。

(私も……同じように、感じている)


その感情に、まだ名前はついていなかった。

でも——確かに、何かがそこにあった。


夕方、次の町が遠くに見えてきた。


「もうすぐ着きますね」

リナが嬉しそうに言った。


「ああ」

俺は自分の手を見た。


(まだ、あの男には敵わない)

(でも——確実に、近づいてる)


セラが隣を歩きながら言った。

「焦らなくていいです。一歩ずつ、強くなっていますから」


「うん」

俺は前を向いた。


(父さん)

(俺、ちゃんと成長できてるかな)

26話、読んでくださってありがとうございます。

今回は静かな成長回でした。

セラとの特訓の成果が、雑魚戦という形で初めて結果になりました。


重心を見て避ける。これは小さな変化に見えて、大きな一歩です。

リナの「強いハエルさんを見るの、誇らしい」という言葉。


セラの中に生まれた、まだ名前のない感情。

どちらも、まだ静かに育っている段階です。

次回、強敵が再び現れます。


今度こそ、決着をつけられるでしょうか。

またお会いしましょう。

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