第二話 父さんとの手合わせと、胸の奥の違和感
お読みいただきありがとうございます。
第2話では、
ハエルとアスモスの“手合わせ” を通して、
二人の関係性と、アスモスの“異常な強さ”を描いています。
ほのぼのしつつも、
少しずつ“違和感”が積み重なっていく回です。
ゆっくりお楽しみください。
翌朝。
鳥の声と、父さんの豪快なあくびで目が覚めた。
「ふあ〜……よし、今日もやるかぁ〜!」
父さんは朝から元気だ。
というか、元気すぎる。
「ハエル、朝飯食ったら手合わせな!」
「えっ、今日もやるの? 昨日のゴーレム戦でまだ腕痛いんだけど……」
「痛いなら治してやるよ。ほれ、ヒール」
「うわ、ほんとに治った……」
「だろ? じゃ、やるぞ!」
父さんはにかっと笑い、庭に出ていった。
あの笑顔を見ると、断れない。
俺は木剣を握りしめ、父さんの前に立つ。
「じゃあ……いくよ、父さん!」
「おう、全力で来い!」
父さんは構えすら取らない。
ただ立っているだけなのに、巨大な岩みたいな圧がある。
俺は一気に踏み込んだ。
「はああああっ!」
木剣を振り下ろす――
が、父さんは指一本で受け止めた。
「おっ、今日のはちょっと重かったな」
「指一本で受け止めないでよ!!」
「いやぁ、つい癖で」
「どんな癖だよ!!」
俺は連撃を叩き込む。
しかし父さんはひょいひょいと避けるだけ。
その動きは軽やかで、まるで踊っているみたいだった。
「ほい、ほい、ほいっと」
「くっ……!」
最後の一撃を振り抜いた瞬間、
父さんの姿がふっと消えた。
「えっ――」
「後ろだぞ〜」
「うわあああああ!!」
気づいたときには、父さんの腕の中にいた。
完全に捕まっている。
「はい、父さんの勝ち〜」
「……強すぎるよ……」
俺は地面に座り込み、息を整えた。
父さんは俺の隣に腰を下ろし、空を見上げる。
「でも、強くなってるぞ。ハエルは」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。父さんの若い頃の……三割くらいは強い」
「微妙にムカつく言い方しないでよ!」
父さんは笑った。
その笑顔は、いつも通り優しい。
でも――
ふとした瞬間、父さんの横顔に影が差す。
昨日の夜も、うなされていた。
時々、遠くを見るような目をする。
俺はずっと気になっていた。
「……父さんってさ」
「ん?」
「なんでそんなに強いの?」
父さんの動きが止まった。
風が吹き、木々がざわめく。
父さんは少しだけ笑って、俺の頭を撫でた。
「ハエルが強くなりたいって言うから、だよ」
「そういうことじゃなくて……」
「まあ、いつか話すよ。
……近いうちにな」
その言い方が、胸に引っかかった。
近いうちに。
まるで“期限”があるみたいな言い方だった。
「父さん……?」
「よし、腹減ったな! 昼飯は何がいい?」
「話そらしたでしょ!」
「そらしてないそらしてない。ほら、何食べたい?」
「……カレー」
「よっしゃ任せろ!」
父さんは笑って家に戻っていく。
その背中はいつも通り大きくて、頼もしくて――
でもどこか、寂しそうだった。
俺は胸の奥に生まれた違和感を、
まだ言葉にできなかった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
今回の手合わせで、
アスモスの“規格外の強さ”が少し見えたと思います。
そして最後の
「近いうちに話すよ」
という言葉。
これが、次の展開に繋がっていきます。
次回は、
父さんがハエルを連れて“ある場所”へ向かう回。
物語が大きく動き始めます。
引き続きよろしくお願いします。




