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魔族に育てられた俺、 気づけば光と闇の境界に立っていた  作者: CYABUSAN(ちゃぶさん
第一章:父と子の物語(第1〜10話)

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第一話 父さんのカレーと、俺の夢

はじめまして。

この作品は、魔族に育てられた人間の少年が“勇者”を目指す物語です。


ほのぼのとした父子の日常から始まりますが、

物語が進むにつれて、

“魔族と人間の争いの真相”

“父の正体”

“主人公の出生の秘密”

などが明らかになっていきます。


シリアスと日常のバランスを大切にしながら、

父子の絆を中心に描いていきます。


ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。

石畳の上に、鈍い音を立てて俺は倒れ込んだ。


「ぐっ……また負けた……!」


目の前には、訓練用のゴーレムが仁王立ちしている。

 何度殴っても蹴っても、びくともしない。

 勇者を目指す俺――ハエルは、今日も完敗だった。


ふらふらになりながら家に帰ると、扉の向こうから鼻歌が聞こえてきた。


「るるる〜♪ 今日のは自信作だぞ〜」


台所で鍋をかき混ぜているのは、父さん――アスモスだ。

 筋肉ムキムキの大男なのに、料理のときだけ妙に軽やかだ。


「ただいま……父さん、もうくたくただよ……なんであんなゴーレム頑丈なの……」


「おっ、お帰り〜。その様子じゃ今日も惨敗か?」


「いらっ……!」


言いかけて、俺はむっとした。


「そんなことないし! あと何発か当てれたら壊れてたんだよ! 僕は父さんと違って嘘つかないからね!」


「俺がいつ嘘ついたんだよ〜」


父さんは笑いながら、俺の頬を指でつんつんしてくる。


「なあ、ちょっとからかっただけじゃん。ごめんって。にしてもキレすぎだろ〜。カルシウム不足じゃないのか?」


「がぶっ!」


「ああああ!! 指がーーー!!」


「知らないよ!」


父さんはヒール魔法で指を治しながら、苦笑いを浮かべた。


「いってえな……。まあ、ヒール覚えててよかったぜ」


「そうやってからかってられるのも今のうちだけだからね!」


俺はぷいっと顔をそむけたが、父さんは気にした様子もなく鍋をかき混ぜ続ける。


……と、そのとき。


ふわりと、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。


「まさか……この匂いは!!」


「やっと気づいたか。今日は特製カレーだぞ。魔豚と魔牛の肉を大量に入れてるからな!」


「水浴びしてくる!! 父さん、絶対食べないでよ!!」


「早く行かないと全部食っちまうぞ〜!」


「行ってくるーーー!!」


俺は全力で飛び出した。


父さんのカレーは、この世で一番うまい。

 勇者になって世界中の料理を食べても、きっと勝てない。


水浴びを終えて戻ると、テーブルには湯気を立てるカレーが置かれていた。


「おおお……この匂い……今日のは特に美味そう!」


ひと口食べた瞬間、顔がとろけた。


「うんまあああああ……!」


気づけば皿は空っぽだった。


「ふぅ……明日も早く……って、なんかお腹いっぱいになったら眠くなってきた……」


「明日も訓練だろう? 片付けはやっとくから寝ておいで」


「いつもありがとう、父さん……おやすみ……」


「ああ。おやすみ」


その夜。


月明かりが差し込む部屋で、父さんはうなされていた。


「……もうそろそろだな……」


その声は、どこか悲しげで、苦しげだった。


俺はまだ知らなかった。

 翌朝、すべてが変わることを。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


第1話は、ハエルとアスモスの“日常”を中心に描きました。

この二人の関係が、後の物語で大きな意味を持ちます。


アスモスはちょっとズレてるけど憎めない父さん。

ハエルは勇者を目指す素直な少年。

この二人の掛け合いを楽しんでもらえたら嬉しいです。


次回は、父さんとの手合わせ回。

アスモスの“本当の強さ”が少しだけ見えてきます。


続きもよろしくお願いします。

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