第十八話 光と闇、そして怯える影
お読みいただきありがとうございます。
今回は、
セラがハエルの“光と闇”の危険性を説明しつつ、
日常ギャグ、魔物襲撃、光の暴走など
イベント盛りだくさんの回です。
朝の光が差し込む。
目を覚ますと、セラがベッドの端に座り、じっとベッドを睨んでいた。
「……この寝具、罠では?」
「いや、罠じゃないよ」
セラは指でベッドをつつく。ふにっと沈む。
「柔らかすぎます。天界の寝具は岩のように硬いので……沈むと不安になります」
「沈むのが苦手なんだ?」
「沈む=落ちる、という認識です」
リナが苦笑する。
「セラさん……可愛い……」
「聞こえてます」
朝から妙な空気だった。
朝食後、セラは真剣な表情で俺たちの前に座った。
「昨日の続きです。ハエルの光と闇について」
リナが息を呑む。
セラは俺の胸の中心を見つめた。
「まず、闇の反応。これは本来、人間には絶対に存在しません。魔族の核……闇の反応です」
リナの顔が青ざめる。
「じゃ、じゃあ……ハエルさんは……」
「魔族ではありません。ただ……魔族化の兆候があるのは確かです」
胸がざわつく。
「……俺、どうすればいい?」
セラは続けた。
「そして光。これは天使の核とは違います。でも光の反応が出ている以上、天界のセンサーには“異常反応”として扱われます」
リナが不安そうに俺を見る。
「異常って……危険なんですか?」
「危険というより、珍しいという扱いです。ただ、上層部が興味を持つ可能性はあります」
「見つかったら……どうなる?」
「すぐに処理されることはありません。でも調査対象にはなるでしょう」
セラは視線をそらし、小さく付け加えた。
「だから……報告を急ぎたくないんです」
その瞬間だった。
セラが俺の胸に軽く触れ、光魔法で反応を確かめようとした時――
胸の奥が熱くなり、視界が白く染まった。
「……っ」
胸の中心が光り始めた。
リナが叫ぶ。
「ハエルさん!!」
セラがすぐに俺の胸へ手を伸ばし、光を押さえる。
「動かないで。……私の光魔法に反応してる」
光が一瞬だけ強くなり、セラの髪が揺れた。
「……やっぱり。闇が光を押し返してる。
私の光が触れたことで、反応が表に出たんです」
息が乱れる。
「これ……どうしたらいい?」
「このままだと危険です。光と闇が混ざり合おうとして……衝突している」
「危険って……どれくらい?」
「最悪の場合、体が耐えられません」
リナが震える声で言う。
「そんな……!」
胸の光は、セラがそっと手を添え続けると、ゆっくりと収まっていった。
その時、外から悲鳴が聞こえた。
「きゃああああ!!」
俺たちは外へ飛び出す。
村の入口に、小型の魔物が一匹、唸り声を上げていた。
リナが叫ぶ。
「ま、魔物……!」
魔物は俺に向かって突進してくる。
「リナ、下がってて!」
その瞬間、セラが一歩前に出た。
魔物の体がビクッと震え、その場で硬直する。
リナが驚いた声を上げる。
「えっ……怯えてる……?」
セラは淡々と言った。
「当然です。魔物は“格”を感じ取りますから」
魔物は完全に恐怖で動けなくなっていた。
セラが手をかざすと、光が魔物を包み込む。
魔物は悲鳴を上げ、そのまま気絶した。
だがその瞬間、セラの光が一瞬だけ揺らぎ、俺の胸の奥がまた熱くなる。
(……また反応してる……)
セラの表情がわずかに強張った。
魔物を処理した後、セラは俺の方へ向き直った。
「やはり、このままでは危険です。光も闇も……目立ちすぎる」
「じゃあ……どうすれば?」
セラは胸に手を当て、静かに言った。
「偽装魔法をかけます。あなたの光と闇の反応を、人間の反応に偽装する」
リナが驚く。
「そんなことできるんですか?」
「できます。ただ、長時間は持ちません。定期的に私が調整する必要があります」
セラは俺の胸に手をかざした。
「少しだけ、触れます」
「うん……」
光がふわりと広がり、胸の奥のざわつきが静まっていく。
「これで、しばらくは大丈夫です」
リナが感心したように言う。
「すごい……」
セラは少しだけ視線をそらした。
「あなたを守るためです。天界にも……魔族にも」
セラは続けた。
「偽装が効いているうちに、一度、町へ行きましょう」
「町……?」
「あなたの光と闇が、外でどう反応するか確認したいんです」
リナが手を挙げる。
「じゃ、じゃあ私も行きます!」
「もちろん。あなたの存在は……ハエルの安定に影響しますから」
リナは顔を赤くした。
俺は意味が分からず首をかしげる。
「どういう意味?」
「まだ言えません」
セラはそれだけ言って黙った。
夜。
リナが作ったスープを前に、セラはじっと見つめていた。
「……これは……毒では?」
「毒じゃないよ」
リナが慌てる。
「セラさん!? 失礼ですよ!」
セラはスプーンを口に運び、目を瞬かせた。
「……味が……濃い……」
「嫌だった?」
「……おいしいです」
リナが小声で言う。
「可愛い……」
「聞こえてます」
その夜。
胸の奥で、光と闇がわずかに揺れた。
セラはその気配に気づき、窓の外を見つめる。
(急がないと……この子は……)
風が吹き抜ける。
セラの瞳は、どこか不安を帯びていた。
今回は、
セラの光魔法が“ハエルの光と闇”に触れたことで起きた反応、
そしてその危険性がはっきりした回でした。
偽装魔法がかかったことで、
ようやく外へ出られる状態になった三人。
次はいよいよ――
“初めての町”へ向かいます。
ハエルの光と闇が、
外の世界でどう反応するのか。
そしてセラが何を見極めようとしているのか。




