第十五話 村への帰り道で
お読みいただきありがとうございます。
今回は、
森での戦いのあと、
リナの気持ちが少しだけ動く回です。
静かな帰り道で、
ふたりの距離が変わり始めます。
草地を離れ、森の中を歩く。
さっきまでの戦いが嘘みたいに、
鳥の声が戻ってきていた。
リナは俺の少し後ろを歩いていた。
さっきから、何か言いたそうにしているのに、
言葉が出てこないみたいだ。
「……リナ、大丈夫か?」
声をかけると、
リナはびくっと肩を揺らした。
「だ、大丈夫です……!
その……はい……!」
返事はしてるけど、
顔が真っ赤だ。
(熱でもあるのか……?)
そう思って覗き込むと、
リナは慌てて視線をそらした。
「ち、近いです……!」
「え?」
「な、なんでもないです……!」
リナは両手を胸の前でぎゅっと握りしめて、
歩く速度を少し早めた。
しばらく歩いたあと、
リナがぽつりと呟いた。
「……ハエルさん」
「ん?」
「さっき……その……
私のこと、助けてくれて……」
言葉がそこで止まる。
リナは俯いたまま、
草を踏む音だけが続いた。
「……怖かったけど……
でも……ハエルさんが来てくれて……
すごく……安心しました」
声が震えていた。
「そっか。よかった」
そう言うと、
リナはさらに顔を赤くした。
「……かっこよかったです」
小さな声だった。
聞こえないふりをしようかと思ったけど、
ちゃんと聞こえた。
「え?」
「い、今のなしです!!」
リナは両手をぶんぶん振って否定した。
でも耳まで真っ赤だ。
(……かわいいな)
そう思った瞬間、
リナがちらっとこちらを見た。
目が合う。
リナは慌ててそっぽを向いた。
「……村、戻りましょう!」
「うん」
リナは前を向いたまま、
歩幅を少しだけ俺に合わせてきた。
その背中が、
いつもより近く感じた。
村が見えてきた頃、
リナが小さく呟いた。
「……守られてばかりじゃ、だめですよね……」
「え?」
「私も……強くなりたいです。
ハエルさんの隣に立てるくらい……」
その言葉は、
森の風よりも静かで、
でも確かに胸に届いた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
リナの気持ちは、
まだ言葉にならないまま揺れています。
次回は、
村に戻ったふたりを待つ“新しい気配”の話です。




