第十四話 森を駆ける影と、怯える魔物
お読みいただきありがとうございます。
今回は、
魔物の群れとの本格的な戦闘回です。
ハエルの強さ、
リナの勇気、
そして――
白い影が、さらに近づいてきます。
それでは、どうぞ。
森を抜けた瞬間、
視界がぱっと開けた。
そこだけ木々が途切れていて、
陽の光が差し込む小さな草地になっていた。
風が草を揺らしているのに、
空気はどこか重い。
そして――
「……多いな」
草地の中央に、魔物が集まっていた。
数えてみると二十五匹。
狼のようなもの、猪のようなもの、猿のようなもの。
本来なら一緒に行動しない種類ばかりだ。
リナが小さく息を呑む。
「村の人……十匹くらいって……」
「増えてるのか、最初から隠れてたのか……どっちにしても、嫌な感じだな」
魔物たちはこちらを見て吠えた。
草地の空気が震える。
俺は剣を抜いた。
「リナ、後ろに」
「……はい」
リナは震えているのに、逃げずに俺の背中に立った。
最初の一匹が飛びかかってきた。
爪が迫る。
俺は半歩だけ横にずれ、
その勢いを利用して腹を蹴り上げた。
魔物の体が浮く。
落ちてくる前に、逆手に構えた剣で叩き落とした。
背後から別の魔物。
振り向かずに剣を突き出す。
手応えがあった。
三匹目が横から突っ込んでくる。
地面すれすれに滑り込み、足元を斬り払う。
体勢を崩したところへ膝を入れると、骨の砕ける音がした。
だが――
数が多い。
左右から、前から、後ろから。
次々と襲いかかってくる。
剣を振り、避け、蹴り、斬り、
土が舞い、魔物の唸り声が響く。
リナが震えた声で叫ぶ。
「ハエルさん!!」
「大丈夫だ!」
そう言った瞬間だった。
一匹の猿型の魔物が、
突然方向を変えた。
リナの方へ。
「……っ!」
リナは足がすくんで動けない。
魔物が飛びかかる。
間に合わない――
そう思った瞬間、体が勝手に動いた。
俺は剣を投げた。
空気を裂く音。
一直線に飛ぶ刃。
剣は魔物の肩に深く刺さり、
そのまま地面へ叩き落とした。
リナの足元で魔物が痙攣する。
「ハ……ハエルさん……!」
「大丈夫か!」
駆け寄ろうとしたその時、
別の魔物が横から飛びかかってきた。
俺は地面の石を掴み、
魔物の顔面に叩きつける。
「ガッ!」
怯んだ隙に距離を詰め、
拳を顎に入れる。
魔物が倒れる。
さらに後ろから二匹。
俺は倒れた魔物の腕を掴み、
そのまま振り回してぶつけた。
リナが震える声で呼ぶ。
「ハエルさんっ……!」
「今行く!」
俺は倒れた魔物の肩に刺さった剣を引き抜き、
再び構えた。
そのままリナの前に立ち、
迫ってきた魔物の爪を弾き、
腹を斬り払う。
血が草地に飛び散る。
リナが息を呑む。
「……ハエルさん……」
「もう大丈夫だ」
まだ十数匹残っている。
だが――
その目は俺ではなく、
森の奥の“何か”を見て怯えていた。
「……?」
魔物たちは吠えながらも、
視線は草地の向こうの木々へ向いている。
その瞬間、
木々の間で白い光が揺れた。
昨日よりも近い。
確実に近づいてきている。
リナは気づいていない。
「ハエルさん……?
どうしたんですか……?」
「……いや。なんでもない」
魔物たちは、
その光から逃げるように散っていった。
戦いが終わり、
リナが俺の袖をそっと掴む。
「さっき……助けてくれて……ありがとう……」
「当然だよ」
リナは胸に手を当てて、
震えながらも笑った。
その笑顔が、
草地の光に溶けていくように見えた。
風もないのに、木の葉が揺れた。
白い影が、
木の上からこちらを見ている気がした。
でも、
次の瞬間には消えていた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
森の奥で見えた白い光は、
魔物たちが怯えるほどの“何か”でした。
リナの強さと、
ハエルの戦い方も少しずつ見えてきました。
次回は、
リナの過去と、村に戻ったあとの話になります。




