第十三話 森のざわめきと、白い影
お読みいただきありがとうございます。
今回は、
森に広がる異変と、
リナの“本当の強さ”が見える回です。
静かに、白い影が近づいてきます。
それでは、どうぞ。
朝の光が差し込む。
リナの家の小さな窓から、
柔らかい風が入ってきた。
「……おはようございます、ハエルさん」
リナが湯気の立つお茶を持ってきた。
茶髪のボブが少し跳ねていて、
寝起きの小動物みたいだった。
「昨日は……本当にありがとうございました。
あの子、無事でした」
「よかった」
そう言った瞬間、
家の扉が勢いよく開いた。
「リナちゃん! 大変だ!」
村人が息を切らして飛び込んでくる。
「森の魔物が……増えてる!
しかも、妙に怯えてるような……!」
怯えてる?
魔物が?
(……何かに追われてる?)
胸のあたりが、
理由もなくざわついた。
「ハエルさん……行くんですか?」
リナが袖をつまんだ。
その手は小さくて、少し震えていた。
「危ないですよ……」
ふわふわで心配性な声。
でも、その瞳は逃げていなかった。
「……リナは村にいて」
そう言うと、
リナは首を横に振った。
「怖いです……すごく怖いです。
でも……ハエルさんをひとりにできません」
震えながらも、
前に出ようとする。
(……強い子だ)
「分かった。一緒に行こう」
リナは小さく頷いた。
森へ入ると、
空気が重く、湿っていた。
鳥の声がしない。
風の音もしない。
ただ――
「……魔物の気配が多い」
ハエルの言葉に、
リナが不安そうに寄り添う。
「ハエルさん……」
その時だった。
ガサッ!
茂みから魔物が飛び出した――
……が、こちらを見た瞬間、
怯えたように逃げていった。
「え……?」
リナが目を丸くする。
(やっぱり……何かに怯えてる)
魔物が“何かから逃げている”動きだった。
その瞬間――
胸の奥が、ひやりと冷たくなる。
(……誰かに、見られてる?)
思わず周囲を見渡す。
リナは首を傾げた。
「え……?
誰もいませんよ……?」
でも――
ハエルには見えた。
木の上。
ほんの一瞬だけ、
白い影が揺れた。
(……光?)
次の瞬間には消えていた。
リナは気づいていない。
「ハエルさん……?」
「……なんでもないよ」
胸のざわつきは、
まだ消えなかった。
森の奥へ進むと、
空気がさらに重くなる。
そして――
「……っ!」
視界の先に、
魔物の群れがいた。
十……いや、二十はいる。
リナが息を呑む。
「ハエルさん……!」
「大丈夫。俺が前に出る」
父さんの教えが、
自然と体に宿る。
魔物たちは、
こちらを見ているのに――
どこか怯えたように後ずさっていた。
(……やっぱり、何かがいる)
その“何か”は、
森の奥で静かにこちらを見ている気がした。
白い影。
光の気配。
(……あれは、誰だ?)
魔物の群れが一斉に吠えた。
戦いが始まる。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
森の異変は、
ただの魔物の増加ではありません。
“白い影”が、
静かにハエルを見つめています。
次回は、
魔物の群れとの戦いが始まります。
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