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魔族に育てられた俺、 気づけば光と闇の境界に立っていた  作者: CYABUSAN(ちゃぶさん
第一章:父と子の物語(第1〜10話)

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第十一話 父の丘を離れて、遠くで出会った手

お読みいただきありがとうございます。


ここから物語は

“父子編”から“本編”へと進みます。


第11話は、

父の死を胸に抱えたハエルが

初めて“誰かに救われる”回です。


新しい出会いが、

ハエルの世界を少しずつ変えていきます。


それでは、どうぞ。

父さんを埋めた丘から、

どれくらい歩いただろう。


森を抜け、

小川を渡り、

見たことのない草原を越えて――

気づけば太陽は頭の上にあった。


「……はぁ……」


胸の奥がずっと重い。

父さんの声が、まだ耳に残っている。


(強くなれ……か)


言われた通りに街に向かって歩いているはずなのに、

足は鉛みたいに重かった。


昨日からほとんど食べてない。

眠ってもいない。

父さんのことばかり考えて、

体のことなんて忘れてた。


「……ちょっと……休も……」


大きな岩に手をついた瞬間、

視界がぐらりと揺れた。


「っ……」


膝が崩れ、

地面に倒れ込む。


草の匂いが近い。

空がゆらゆら揺れている。


(父さん……俺……)


意識が落ちかけた、そのとき――


「だ、大丈夫ですかっ!?」


女の子の声が聞こえた。


ふわっと、誰かに抱き起こされる感覚。


「ねえ、聞こえますか!? しっかり……!」


まぶたが重い。

でも、声は必死で、優しくて……

どこか温かかった。


「……だれ……?」


「よかった……! 生きてる……!」


声が震えている。

俺の肩を支える手も、小さくて温かい。


「ちょっと待っててください! 水……水持ってきます!」


足音が遠ざかり、すぐ戻ってくる。


「はい、これ……飲めますか?」


唇に触れた水筒の口が冷たくて、

喉に流れ込む水が甘く感じた。


「……ありがとう……」


「よかった……ほんとによかった……!」


女の子は胸を撫で下ろし、

俺の顔を覗き込んだ。


栗色の髪。

大きな瞳。

少し泥のついたスカート。

年は……俺と同じくらい?


「わ、私……リナって言います。

 あなたは……?」


「……ハエル……」


「ハエル……さん……」


名前を呼ばれただけで、

胸の奥がじんわり温かくなった。


リナは俺の手をそっと握る。


「立てますか? 無理なら……私、支えますから」


「……うん……」


立ち上がろうとした瞬間、

足がまたふらついた。


「わっ……!」


「きゃっ……! あ、あぶない……!」


リナが慌てて俺の腕を掴む。

その手は震えていたけど、

必死に支えようとしてくれているのが伝わった。


「無理しないで……!

 この先に小さな村があるんです。

 そこまで……手、つないでいきましょう」


「……手……?」


「だ、だめですか……?」


リナの頬が少し赤くなる。


俺はゆっくりと、彼女の手を握った。


「……つないで……ほしい……」


「っ……! は、はい……!」


リナの手は小さくて、温かかった。

その温もりが、

父さんを失って冷たくなっていた胸の奥に、

そっと灯をともすみたいだった。


二人で歩き出す。


草原の奥――

木陰の中で、何かが動いた。


気配は……薄い。

でも確かに“誰か”が見ている。


(……誰……?)


振り返ったときには、

その影はもう消えていた。


リナが心配そうに覗き込む。


「どうしました……?」


「……ううん。なんでもない」


今は、立ち止まってる場合じゃない。


父さんがくれた“生きろ”という言葉。

その意味を、俺はまだ知らない。


でも――


リナの手の温もりが、

その答えに少しだけ近づけてくれる気がした。


「……行こ、リナ」


「はい……!」


こうして俺は、

父さんのいない世界で、

初めて“誰かと歩く”一歩を踏み出した。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


ハエルにとって、

父の死を乗り越えて初めて出会う“他者”がリナです。


彼女の優しさは、

ハエルの心に灯をともす最初の光になります。


次回は、

リナの村での出来事と、

ハエルが初めて“自分の強さ”を使う場面が描かれます。


物語が大きく動き出しますので、

ぜひ続きも読んでいただけたら嬉しいです。

リナは、

ハエルにとって最初に出会う“人間の少女”です。

彼女の優しさが、

ハエルの心を少しずつ癒していきます。


そして最後に、

森の奥で“白い羽”が落ちました。

あれは……そう、あの子です。


次回は、

リナとの会話や、

ハエルの心の揺れを描いていきます。


続きもよろしくお願いします。

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